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本編

ゾロにとってもそうだったろうけど、あたしにとってもくいなは憧れで目標だった。

くいなの一件を乗り越えるために、ゾロは今までよりもっともっと強くなろうとした。
あたしも同じようにしたかった、のに。

「っカズ!?」

幕を下ろしたみたいに目の前が暗くなって、顔に土の感触、自分の呼吸がやたら大きく聞こえた。肩をゆする手はきっとゾロ。ゆすられると気持ち悪くなるのにそれを言えない。

「おい、カズ!!」

ゾロの呼吸もやたらと早く聞こえる。

「っクソ、」

ものすごい力で引っ張り上げられて宙に浮いた。お腹が圧迫されてるから、肩に担がれてるのかもしれない。

「やめろよ、…お前まで、」

なにがだよ、と思いながら、意識を失った。



寝て起きたら病院のベッドで、母さんに「あなた女の子なのよ!?」と泣きながら怒られた。
医者は「男の子と同じメニューをこなすのは体力的に難しいと思います」、サガは「オレでもゾロと同じはキツイって」と言った。ゾロは何も言わなかった。

くいなが死んでから4年。あたしたちは14歳になった。あの時一番身長が高かったあたしは、いつの間にか二人に追い抜かれていた。

次の日からはサガと同じメニューでトレーニングすることに決めた。けれど。

「おい、カズ!」

力が抜けて地面に倒れこむ。頬に土の感触が冷たい。体が寒い。またやっちまった。

「だいじょぶだ」
「大丈夫じゃねえだろ!」
「いしき、あるから」
「そういう問題じゃねえ」
「ゾロ、かおつめてぇ。ひざかして」

黙って胡坐をかいたゾロが、あたしの頭を持ち上げて膝に乗せる。熱いなこいつ、と思った。膝が固い、とも思った。

またか、と絶望に似た気分で思った。…なんでこいつこんなに体温高くて固い膝持ってんだ。
なんであたしは同じじゃないんだ。
なんで。どうして。

「母さんには言うなよ」
「…」
「怒られっから」
「…黙って寝とけ」
「おう」

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