本編
先生と話していたカズが帰ってきた。
「ゾロは?」
「着替えに行った。オレももう行かねえと」
「そっか。頑張ってね、サガ」
「見てくんだろ?」
「どうだろ。めっちゃ電話来てるし」
「男待たせてんの?」
「うん」
「不憫だなー相手の男」
「…少しくらい待たせた方がいいのよ」
子供の頃、こいつはほとんど男だった。短い髪して男言葉を使って、スカートをはいたのなんて見たことがなかった。道場の同い年の中ではゾロと俺に続いて3番目の実力で、よく3人で特訓していた。
でも、カズは4年前、急に剣道を辞めた。
ゾロがものすごい剣幕でカズを問い詰めたけど、あいつは何を聞いても「自分の強さの限界がわかった」としか言わなかった。
それからのカズはまるで別の人間になったみたいだった。中学校の制服ですら、女子用のスラックスを履いてたくらいだったのに、高校生になった頃から髪を伸ばして化粧も覚えて、女言葉を使うようになった。
今年の春、大学に進んでからは髪を茶色く染めて、派手な化粧をして、体の凹凸の分かるピタッとした服を着るようになった。
「なあサガ!」
「ああ、ナオヤ」
「カズめっちゃいい女になってんじゃん!」
「そうかもな」
「あいつ男いんのかな!」
「いるぞ。今日もこれから会うんだと」
「うわ!マジかよ!!」
「残念だったな」
「…なのにいまだに迷子のゾロを迎えに行くのは、あいつなんだな」
「…まあ、あいつにしか、見つけられねぇからな」
カズはゾロの前でだけ、男言葉で話す。
それがどういうことなのか、まァ突っ込むのは野暮だよな。
*
「なあ、カズ!」
「…?えーっと」
「コウキだよコウキ!」
「ああ、道場の」
「そう!もう帰んの?」
「うん、用事あるから」
「なんだよ見てけよ!あいつらの試合だってあるんだぞ?」
「…見る必要ない」
「え?」
「あの二人が負けるわけないから」
「ゾロは?」
「着替えに行った。オレももう行かねえと」
「そっか。頑張ってね、サガ」
「見てくんだろ?」
「どうだろ。めっちゃ電話来てるし」
「男待たせてんの?」
「うん」
「不憫だなー相手の男」
「…少しくらい待たせた方がいいのよ」
子供の頃、こいつはほとんど男だった。短い髪して男言葉を使って、スカートをはいたのなんて見たことがなかった。道場の同い年の中ではゾロと俺に続いて3番目の実力で、よく3人で特訓していた。
でも、カズは4年前、急に剣道を辞めた。
ゾロがものすごい剣幕でカズを問い詰めたけど、あいつは何を聞いても「自分の強さの限界がわかった」としか言わなかった。
それからのカズはまるで別の人間になったみたいだった。中学校の制服ですら、女子用のスラックスを履いてたくらいだったのに、高校生になった頃から髪を伸ばして化粧も覚えて、女言葉を使うようになった。
今年の春、大学に進んでからは髪を茶色く染めて、派手な化粧をして、体の凹凸の分かるピタッとした服を着るようになった。
「なあサガ!」
「ああ、ナオヤ」
「カズめっちゃいい女になってんじゃん!」
「そうかもな」
「あいつ男いんのかな!」
「いるぞ。今日もこれから会うんだと」
「うわ!マジかよ!!」
「残念だったな」
「…なのにいまだに迷子のゾロを迎えに行くのは、あいつなんだな」
「…まあ、あいつにしか、見つけられねぇからな」
カズはゾロの前でだけ、男言葉で話す。
それがどういうことなのか、まァ突っ込むのは野暮だよな。
*
「なあ、カズ!」
「…?えーっと」
「コウキだよコウキ!」
「ああ、道場の」
「そう!もう帰んの?」
「うん、用事あるから」
「なんだよ見てけよ!あいつらの試合だってあるんだぞ?」
「…見る必要ない」
「え?」
「あの二人が負けるわけないから」