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番外編

「じゃーなー!」
「いいなぁ女子とメシ!」
「うるせぇ」
「また月曜なー」

今日の大会は午後の大学生の部を見ていくこともできるので、現地解散になった。
私達マネージャーは午前中で帰る。
部員の大半も帰るけど、ロロノアくんとサガくんは午後も残るらしい。

みんなについて歩きながら体育館を振り返る。
あの二人がサガくんを待っているのが見えた。

ロロノアくんが手を伸ばしてカズさんの髪に触った。
カズさんが嫌そうな顔をする。
その顔を見たロロノアくんがニヤリと笑い、両手で髪をぐしゃぐしゃにかき回した。
黒い髪が手の動きに合わせてしなやかに動く。

ードキン、と心臓が大きく鳴った。

カズさんを見下ろすロロノアくんの目が、見たことないくらい優しかったから。
でも優しいだけじゃない。あれはー

「恋、」
「ん?なんか言った?」
「あっごめん何でもない。行こっか」
「…あぁ。噂通りだったねー秘密兵器」

噂通りじゃないよ。
噂以上だったじゃん。

最後にもう一度だけ振り返る。
カズさんが手櫛で髪を直しながらロロノアくんに文句を言っている。
ロロノアくんはさっきのニヤリとした顔に戻って何か言い返していた。

…うそつき。
どこが野郎友達よ。

さっきからずっと胸が痛くて、その理由を私は知らない。知りたくない。自分の恋心も、初めての失恋も、なにもかも、知りたくない。
好きになった男の子が誰を好きで、どんな顔でその子を見つめるのかなんて、ぜったい知りたくなんかなかった。
それに、自分が実は嫌な性格だってことも、何もかも。全部いやだ。いやだいやだって子供みたいに地団駄踏んで泣き喚きたい。

だけど。

「あたし、恋してみようと思う」
「え、どしたの急に」

あんな風に見つめられてみたい。
恋をして、されてみたい。
いつかロロノアくんのことなんて忘れるくらい、幸せになってみせる。

「まず髪型変えようかな」
「良いんじゃない」

羨ましいんじゃない、触発されただけ、と自分に言い聞かせて、無理矢理にでも顔を前に向けた。
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