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番外編

一般席を見渡して白いパーカーを探す。
いた。

「ミノリごめん、私ちょっと抜けていいかな」
「いいよーなにー?友達ー?」
「…うん、ありがとう」

カズさんはひとりで座っていた。
ロロノアくんが昼ごはんを奢ることになったらしく、大会を見てくことにしたようだ。

「あの、カズさん」
「あ、えっとヒナタさん?」
「はい。…ここ、いいですか」
「どうぞ」

隣の席に座るとふわりとシャンプーの香りがした。
男子たちがすぐ好きになっちゃいそうな子だ。

「…ゾロとカズは、このあと?」
「あ、はい。二人とも強いから、勝ち進むと思います」
「ふふ、なら安心」

なにが安心?

「あの、サガくんから、カズさんも昔剣道やっていて強かったって聞きました」
「…」
「今は剣道してないんですか」
「うん、帰宅部っていうか」
「なんで剣道辞めたんですか」
「…ヒナタさんが聞きたいのってその話じゃないよね?」

急に大きな目がこっちを向いた。

「何が聞きたくて、何が話したくて来たか教えてよ」

悔しい。この子と話してると無性にそう思う。でも何が悔しいか分からない。

「ロロノアくんと話すときの言葉や態度と、サガくんや私と話すときが全然違いますよね。なんでですか」

こっちを見ていた瞳が選手たちに向けられる。

「…つまり、私がぶりっ子だって言いたいのかな」
「そうじゃなくて」
「ヒナタさん、ゾロのこと好き?」
「っ、いや、そういうんじゃなくて、」
「今そうなのかなーって思った。なんでゾロにだけ態度違うんですか、特別扱いなんですかって聞きたいのかなって」
「、違います!」
「そっかーなんだつまんないの」
「っもう私戻る時間なので!」

蹴るようにして席を立った。
結局自分でも何が聞きたかったか分からない。悔しい。恥ずかしい。なんだかすごく自分が惨めだ。

「ヒナタさん、」

低めの柔らかい声が私を呼んだ。
思わず立ち止まる。でも、振り返るのは負けた気がして嫌だった。
あたしいつの間にこんな性格になったんだろう。人のあら探しをして、見つからなかったからって不機嫌に席を立つような自分がいるって知らなかった。

「私とゾロは、男子の言う”野郎友達”ってやつよ」

声に返事はしないで、目の前の階段を1段飛ばしで登った。
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