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本編

「もーっ、ゾロお前また迷子かよ!!」
「うるせえ」
「ハハハ、さすがカズ。迷子のゾロを見つけられるのは君だけだね」
「先生!笑ってないで先生もなんか言ってよ!」
「そうだねえ、じゃあ…」



着信音が鳴る。
画面には「サガ」

「ゾロお前今どこだよ!」
「…電車の駅構内」
「何駅だ?」
「…あー、待て今探す」
「いやいい、そこを一歩も動くな!いいな!!」

通話が切れて数分後、また着信音が鳴った。
今度は画面に「カズ」

「ゾロ!駅構内にいるんだって?」
「あァ」
「今何が見える?看板とか路線案内とか」
「…なんか看板があるな、こっちか」
「待って!動くなって!」
「なんだよ」
「足元に何色の線が見える?」
「…オレンジと水色」
「なるほど、わかった。あと10分でそっち行くから一歩も動くなよ!いいな!!」

通話が切れた。
10分後、高い足音に振り向くと、茶色い長い髪を振り乱して走ってくる女が見えた。

「なんだよお前、みっともねえ」
「誰のせいだと思ってんだこの天然方向音痴!!」
「あァ˝!?」
「間に合わねえから、一回出るぞ!」
「あっ、オイ!」

色のついた爪が伸びてきて俺の手を掴んだ。走り出す速度は俺の全力よりずっと遅い。足元を見ると、かかとが箸みてェな太さの赤い靴。

「よくそんな靴で走れるな」
「誰かさんのせいで毎度毎度駆けずり回ってるからな」
「…」
「ま、おかげさまでいい運動だよ」

振り向いてニッと笑う顔に、ガキの頃の笑顔が重なる。サガと同じ長さの黒髪で、よく男に間違われていたこいつが。

「なあカズミ」
「その呼び方辞めろ。なんかカユイ」
「なんで毎回迎えに来んだよ」
「そういうのは自力で会場にたどり着けるようになってから言え」

改札を抜けて外に出ると、黒い軽自動車が止まっていた。助手席に押し込まれて、あいつ自身は運転席に座る。

「20分か。ギリ間に合うな。ゾロ、サガに連絡しとけよ」
「あ?」
「カズと会って今車で向かってるって。20分で着く」
「…おう」

サガとの通話は「お前カズになんか奢ってやれよ!」と切られた。ったくどいつもこいつも。右を見ると真剣な顔で運転をするカズが目に留まる。

「…安全運転だな」
「そりゃあ、将来有望な選手を乗せてんだから。雑な運転はできねぇって」
「なあ、カズ」
「ん?」
「お前、なんで剣道辞めたんだよ」
「…またそれ?何度も言ってんだろ」
「…」
「自分の強さに限界を感じた。ただそれだけだ」
「…」
「4年も前の話だろ」
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