巨大な猛獣の背中の上で
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ローが船を後にして一ヶ月。
黄色い潜水艇は"ゾウ"に着いた。
新世界に入ってから気軽には他の島へ行けなくなったので、最近はあまり出掛けていない。
昔は一人分の夢容量しか持って無かったなぁと懐かしく思い出す。
今は日によって、ローの夢に立ち会ったり、マルコの夢に立ち会ったり、たまにシャンクスの夢に立ち会ったり。
上書きになるのかと思ったけどそんなことも無く、関係の深さで頻度が変わるようだ。
世界で指折りの過酷な環境での日々を、週の半分以上夢に見る。
周りが全員敵の中、針の穴を通すように計画を進める緊張感があって、毎度目覚めは最悪だ。
まあ、私にとっては夢でしかないものの、あの人にとってそれは現実だから心労は相当なものだろう。
それを表すように、ただでさえ短い睡眠時間がさらに短くなり、夢に立ち会える時間が1-2時間ということも多くなった。
そんな短時間ではダメージを拭うのも十分にできない。悪循環だった。
「レイラ、だいじょうぶ?顔色悪いよ?」
「大丈夫。ちょっと夢見が悪くて」
この潜水艇の航海士、シロクマのベポが気遣ってくれる。
「最近ずっと悪い夢を見るんでしょ?キャプテンに見てもら…」
あ、と大きな両手で口を塞ぐ彼に、思わず笑みがこぼれた。
「そうだね、帰って来たら見てもらおうかな」
「うん。…おれ、いまだにキャプテンいるつもりで喋っちゃうんだよね。それで、遠くにいること思い出して寂しくなるの」
「そっか…早く帰ってくるといいね」
にへら、と人好きする笑みを浮かべたベポに微笑み返して、食堂のテーブルに頬杖をつく。
この船の運営はトップ不在でも支障がないくらいシステマティックに回っている。医療を扱う船だからというのも関係するのかもしれないが。
そんな訳で、急に船に乗った半分客人の私は、船に居てもやることがなかった。
手元の分厚い本に目を落とす。
盲腸捻転、S状結腸捻転、bird-beak様変形、緩和的胃空腸吻合術、腹膜刺激徴候、係蹄を減圧、経鼻胃管吸引。
薬学以外の医学は正直嫌いだけれど、レベルの高い本が揃っているし折角だからとなんとなく読み進めている。
なにより、こういう難しい本を読んでいると、いつの間にか眠れていることが多いので重宝している。
ほら、また瞼が落ちて来た。
うとうとと船を漕いでから誰かに起こされるまでのほんの束の間は、私が自分のためだけに眠ることが出来る回復の時間。
そのせいか、この船での呼び名の一つに眠り姫というのが加わった。
みんな知らない。
私がこういう昼寝をするのは、実家の船とここだけだってことを。
黄色い潜水艇は"ゾウ"に着いた。
新世界に入ってから気軽には他の島へ行けなくなったので、最近はあまり出掛けていない。
昔は一人分の夢容量しか持って無かったなぁと懐かしく思い出す。
今は日によって、ローの夢に立ち会ったり、マルコの夢に立ち会ったり、たまにシャンクスの夢に立ち会ったり。
上書きになるのかと思ったけどそんなことも無く、関係の深さで頻度が変わるようだ。
世界で指折りの過酷な環境での日々を、週の半分以上夢に見る。
周りが全員敵の中、針の穴を通すように計画を進める緊張感があって、毎度目覚めは最悪だ。
まあ、私にとっては夢でしかないものの、あの人にとってそれは現実だから心労は相当なものだろう。
それを表すように、ただでさえ短い睡眠時間がさらに短くなり、夢に立ち会える時間が1-2時間ということも多くなった。
そんな短時間ではダメージを拭うのも十分にできない。悪循環だった。
「レイラ、だいじょうぶ?顔色悪いよ?」
「大丈夫。ちょっと夢見が悪くて」
この潜水艇の航海士、シロクマのベポが気遣ってくれる。
「最近ずっと悪い夢を見るんでしょ?キャプテンに見てもら…」
あ、と大きな両手で口を塞ぐ彼に、思わず笑みがこぼれた。
「そうだね、帰って来たら見てもらおうかな」
「うん。…おれ、いまだにキャプテンいるつもりで喋っちゃうんだよね。それで、遠くにいること思い出して寂しくなるの」
「そっか…早く帰ってくるといいね」
にへら、と人好きする笑みを浮かべたベポに微笑み返して、食堂のテーブルに頬杖をつく。
この船の運営はトップ不在でも支障がないくらいシステマティックに回っている。医療を扱う船だからというのも関係するのかもしれないが。
そんな訳で、急に船に乗った半分客人の私は、船に居てもやることがなかった。
手元の分厚い本に目を落とす。
盲腸捻転、S状結腸捻転、bird-beak様変形、緩和的胃空腸吻合術、腹膜刺激徴候、係蹄を減圧、経鼻胃管吸引。
薬学以外の医学は正直嫌いだけれど、レベルの高い本が揃っているし折角だからとなんとなく読み進めている。
なにより、こういう難しい本を読んでいると、いつの間にか眠れていることが多いので重宝している。
ほら、また瞼が落ちて来た。
うとうとと船を漕いでから誰かに起こされるまでのほんの束の間は、私が自分のためだけに眠ることが出来る回復の時間。
そのせいか、この船での呼び名の一つに眠り姫というのが加わった。
みんな知らない。
私がこういう昼寝をするのは、実家の船とここだけだってことを。
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