白い船での話
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「ねえエース」
海賊の人たちがよく使う賑やかな酒場とは対照的な、男女ペアでの来店が義務付けられているようなバーでお酒を飲んでいる。あれから3日。明日エースたちは海へ出る。
「なんだ?」
会っていなかった期間のお互いの冒険について話をして、ようやく自然に話せるようになってきた。
「私後悔してることがあるの」
「…どんな?」
「初恋の人に、言い忘れたことがあって」
黒い瞳にオレンジの灯りが射している。
男の人に言うのはおかしいけど、きれい。
「あなたが誰の子供でも、私はあなたが好きだよって」
うまく伝わるだろうか。
オレンジの灯りの向こうで感情が吹き荒れるのが分かった。
もしこれで突っぱねられたら、今度こそこの人と話せる最後だ。
「…何も、知らねぇで」
「…そうだね、なにも知らない」
「生まれてこないほうがいいとかゴミだとか言われるんだぞ」
「うん」
「知られれば海軍に命狙われるんだぞ」
「…うん」
「一緒にいる奴もそうなる」
「うん」
「例えば結婚したっておれは子供を作りたくない」
「…そっか」
「そんなの一緒にいる意味ねェだろ」
「…エースはさ」
「例えばお互いに命を狙われて、一生子供を作らないとしても、それでも一緒に居たいって思った人はいる?」
「…」
「私はいるよ」
伝えたいことは全部伝えよう。
「私の秘密を教えてあげる」
*
周りに人が居るから、と私の宿に案内する。
誘っていると取られても構わない。いまさらだ。
「で?」
「私の母方の血は、数百年前に絶えたはずのちょっと特殊な一族の血なの。末裔がいると知られたら海軍や世界政府が追ってきて、捕まれば人体実験のモルモットにされる。そんなリスクを子供に負わせるくらいなら、自分の代でこの血は絶えたほうがいいと思ってる。だからエースが心配してたことは、私にとってはどうでもいい」
一息に言いきってエースを見た。
「それに今でもエースが好き」
言いたいこと、これで全部かな。
うん、ちゃんと言った。拒絶されても悔いはない。
しばらく迷うような沈黙のあと、エースは床に目を落としたまま呟いた。
「…好きってだけでテメェの身を危険に晒してもいいのかよ」
「うん、元々晒されてるもの」
エースの手が伸びてきて首筋を引き寄せられた。
唇が触れるギリギリのところで止まる。
「どうなっても知らねぇぞ」
「望むところよ」
飽きるほど重ねた唇が、ようやくまた重なった。
海賊の人たちがよく使う賑やかな酒場とは対照的な、男女ペアでの来店が義務付けられているようなバーでお酒を飲んでいる。あれから3日。明日エースたちは海へ出る。
「なんだ?」
会っていなかった期間のお互いの冒険について話をして、ようやく自然に話せるようになってきた。
「私後悔してることがあるの」
「…どんな?」
「初恋の人に、言い忘れたことがあって」
黒い瞳にオレンジの灯りが射している。
男の人に言うのはおかしいけど、きれい。
「あなたが誰の子供でも、私はあなたが好きだよって」
うまく伝わるだろうか。
オレンジの灯りの向こうで感情が吹き荒れるのが分かった。
もしこれで突っぱねられたら、今度こそこの人と話せる最後だ。
「…何も、知らねぇで」
「…そうだね、なにも知らない」
「生まれてこないほうがいいとかゴミだとか言われるんだぞ」
「うん」
「知られれば海軍に命狙われるんだぞ」
「…うん」
「一緒にいる奴もそうなる」
「うん」
「例えば結婚したっておれは子供を作りたくない」
「…そっか」
「そんなの一緒にいる意味ねェだろ」
「…エースはさ」
「例えばお互いに命を狙われて、一生子供を作らないとしても、それでも一緒に居たいって思った人はいる?」
「…」
「私はいるよ」
伝えたいことは全部伝えよう。
「私の秘密を教えてあげる」
*
周りに人が居るから、と私の宿に案内する。
誘っていると取られても構わない。いまさらだ。
「で?」
「私の母方の血は、数百年前に絶えたはずのちょっと特殊な一族の血なの。末裔がいると知られたら海軍や世界政府が追ってきて、捕まれば人体実験のモルモットにされる。そんなリスクを子供に負わせるくらいなら、自分の代でこの血は絶えたほうがいいと思ってる。だからエースが心配してたことは、私にとってはどうでもいい」
一息に言いきってエースを見た。
「それに今でもエースが好き」
言いたいこと、これで全部かな。
うん、ちゃんと言った。拒絶されても悔いはない。
しばらく迷うような沈黙のあと、エースは床に目を落としたまま呟いた。
「…好きってだけでテメェの身を危険に晒してもいいのかよ」
「うん、元々晒されてるもの」
エースの手が伸びてきて首筋を引き寄せられた。
唇が触れるギリギリのところで止まる。
「どうなっても知らねぇぞ」
「望むところよ」
飽きるほど重ねた唇が、ようやくまた重なった。