巨大な猛獣の背中の上で
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あなたは強い。」
不意に発された言葉に目を上げる。
「だから、私の助けが必要な場面はそう多くはないと思うけど」
「…」
「もし、私で手伝えることがあるときは、飛んでくるからね」
いつだったか、レイラはそう言った。
*
バルディゴを後にし、カマバッカに拠点を移した。
幹部招集も含めて山積みの作業に忙殺されていたある夜のこと。
トン、と音がした。
窓の外に濃厚な人の気配。
…いつからそこに。
「サボ、わたし。開けて」
のろのろと近づき、窓を開ける。
月明かりに照らされたレイラが立っていた。
白い服装が多いから、金髪と相まって天使に見える、とよく言われていた。
月の光に照らされた、人間じゃない何か。
「お邪魔していい?」
「あァ」
するりと窓枠から体を滑り込ませる。
レイラと一緒に夜の風が滑り込んで、部屋の空気を揺らした。
「なんか用か?」
「急に顔が見たいなーって思って」
「それだけで本拠地のこんな深部まで忍び込まれちゃたまんねェな」
「ふふ。…いつもこんな遅くまで仕事してるの?」
「いや、最近忙しいだけだ」
「大変だねえ、上に立つ人は」
「…世間話しに来たのか?」
「…うん、まあ、そんなとこ。あと、」
両手が広がる。
「サボを抱きしめに来た」
「…は?」
夜風と同じやわらかさで、レイラの両手が俺の胴体にまとわりつく。
服越しに体温を感じて一気に焦る。
疲れた脳が癒しを求めていたことを今知った。
でもこれはどうなんだ。
「おい、ちょっと、」
「ほとんど寝てないでしょ、ご飯もあんまり食べてないし。
そういう時は正常な判断ができないものよ。
だから、抱きしめられるのを受け入れたのは、正常な判断ができなかったせい。」
至近距離から見上げられて、ね?と首を傾げられる。
こいつにはわかってる。
俺の頭に自分の立場や肩書、エースの顔がよぎったりしたことが。
その上で、抱きしめられるのを心地良いと感じたことも。
だから先に逃げ道を提示した。
「…敵わねぇな」
「…ふふ」
レイラが伏し目がちに笑う。
そうか、こいつはこうやってずっと、エースの心を守ってたんだな。
うらやましいと思った。
そうやって守られていた兄弟も、あいつを守れていたこいつにも。
わりぃエース、ちょっとお前の女借りる。
心の中で謝って、柔らかい体に両手を回した。
もう一人、思い出した相手がいた。
頭に浮かべた瞬間に、レイラが弾かれたように顔を上げる。
「…うそ」
「どうした?」
それきり何も言わなくなったレイラは百面相をした後、一人で何度か頷いた。
「そっかーサボ、そっかー」
「なんだよ」
「ちょっと複雑な気がしないでもないけど」
「だからなんだよ」
「大人になったね、…お互いに」
「…お?おう」
夜風がひんやりと部屋を吹き抜けていく。
不意に発された言葉に目を上げる。
「だから、私の助けが必要な場面はそう多くはないと思うけど」
「…」
「もし、私で手伝えることがあるときは、飛んでくるからね」
いつだったか、レイラはそう言った。
*
バルディゴを後にし、カマバッカに拠点を移した。
幹部招集も含めて山積みの作業に忙殺されていたある夜のこと。
トン、と音がした。
窓の外に濃厚な人の気配。
…いつからそこに。
「サボ、わたし。開けて」
のろのろと近づき、窓を開ける。
月明かりに照らされたレイラが立っていた。
白い服装が多いから、金髪と相まって天使に見える、とよく言われていた。
月の光に照らされた、人間じゃない何か。
「お邪魔していい?」
「あァ」
するりと窓枠から体を滑り込ませる。
レイラと一緒に夜の風が滑り込んで、部屋の空気を揺らした。
「なんか用か?」
「急に顔が見たいなーって思って」
「それだけで本拠地のこんな深部まで忍び込まれちゃたまんねェな」
「ふふ。…いつもこんな遅くまで仕事してるの?」
「いや、最近忙しいだけだ」
「大変だねえ、上に立つ人は」
「…世間話しに来たのか?」
「…うん、まあ、そんなとこ。あと、」
両手が広がる。
「サボを抱きしめに来た」
「…は?」
夜風と同じやわらかさで、レイラの両手が俺の胴体にまとわりつく。
服越しに体温を感じて一気に焦る。
疲れた脳が癒しを求めていたことを今知った。
でもこれはどうなんだ。
「おい、ちょっと、」
「ほとんど寝てないでしょ、ご飯もあんまり食べてないし。
そういう時は正常な判断ができないものよ。
だから、抱きしめられるのを受け入れたのは、正常な判断ができなかったせい。」
至近距離から見上げられて、ね?と首を傾げられる。
こいつにはわかってる。
俺の頭に自分の立場や肩書、エースの顔がよぎったりしたことが。
その上で、抱きしめられるのを心地良いと感じたことも。
だから先に逃げ道を提示した。
「…敵わねぇな」
「…ふふ」
レイラが伏し目がちに笑う。
そうか、こいつはこうやってずっと、エースの心を守ってたんだな。
うらやましいと思った。
そうやって守られていた兄弟も、あいつを守れていたこいつにも。
わりぃエース、ちょっとお前の女借りる。
心の中で謝って、柔らかい体に両手を回した。
もう一人、思い出した相手がいた。
頭に浮かべた瞬間に、レイラが弾かれたように顔を上げる。
「…うそ」
「どうした?」
それきり何も言わなくなったレイラは百面相をした後、一人で何度か頷いた。
「そっかーサボ、そっかー」
「なんだよ」
「ちょっと複雑な気がしないでもないけど」
「だからなんだよ」
「大人になったね、…お互いに」
「…お?おう」
夜風がひんやりと部屋を吹き抜けていく。