拠点の船を変えたあと
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あの日、目覚めると右手が無傷になっていて、腹の出血も落ち着いていた。
俺は急ピッチで左手の修復に取り掛かった。
夢の中のあいつは何だったのかとか、右手が治ったのはなぜかとか、もやがかかったような頭の隅でいくつか疑問をぶら下げながら、1週間でなんとか左手のハリボテ構築に行きついた。
気絶するように眠りにつくと、またあいつが頭の横に立っていた。
「オウ、天使チャンじゃねェの」
「…」
「1週間経ったら右手は元に戻るんだろ」
「そしたら、どうなる?」
「…そりゃあ、直しにくくなるわな」
「体を?」
「そうだ。ま、でも約束だからな。元に戻していいぜ」
*
この人にとってはこのまま引き受け続けたほうがいいのだろう。
だけど、この人は夢で出会った見ず知らずの人。
現実世界でさすがに不信感を持たれているし、これ以上は無理だ。
せめて次来るまでに生き延びられるように、最低限の力は分けておこう。
痛みも損傷も栄養も体力も記憶も、どれも「等価」になりうる。
それが避けるべきものだとか、増すべきものだとかいう人間側の都合とは無関係に、「等価」は存在する。
だから、相手から損傷を受け取って体力を返すような、自分にダメージの大きい「等価」も成立するし、逆に記憶を受け取って痛みを返すような、こちらに“得”な交換も可能になる。
またその人の顔を見た。
「1週間、がんばって生きて」
「あ?」
額に口付ける。流れ込む映像。
船を作る日々。兄弟子。恩人。秘書。ペット。
何かの襲撃。目を背けたくなるような後悔。自分の手を、呪う。
体の大きな恩人が笑うのが見える。自由に楽しく過ぎた日々。
目的のため、昼夜を問わずものづくりに明け暮れた日々。キツイ、しんどい、楽しい。
完成品の高揚。物を作る喜び。形になった時の達成感。
もっと見ていたかったけど自分側の体力が限界だった。
ゆっくり唇を離す。
その人の顔は苦悶に歪んでいた。
「…痛い?」
「…いや、先週に比べりゃマシよ」
額に触れる。痛み信号が緩和されるように回路を調整する。
「痛いの痛いの、とんでいけ」
*
バカにしてんのか。
と言おうとして、実際に痛みが和らぐのに気づいた。
なんだこれ。何者だ、コイツ。
「なァ、聞いていいか」
「なに?」
「オメェ…本当は何者だ?」
一瞬目を見開いたそいつは、ニヤリと悪女のような笑みを浮かべた。
「しにがみよ」
俺は急ピッチで左手の修復に取り掛かった。
夢の中のあいつは何だったのかとか、右手が治ったのはなぜかとか、もやがかかったような頭の隅でいくつか疑問をぶら下げながら、1週間でなんとか左手のハリボテ構築に行きついた。
気絶するように眠りにつくと、またあいつが頭の横に立っていた。
「オウ、天使チャンじゃねェの」
「…」
「1週間経ったら右手は元に戻るんだろ」
「そしたら、どうなる?」
「…そりゃあ、直しにくくなるわな」
「体を?」
「そうだ。ま、でも約束だからな。元に戻していいぜ」
*
この人にとってはこのまま引き受け続けたほうがいいのだろう。
だけど、この人は夢で出会った見ず知らずの人。
現実世界でさすがに不信感を持たれているし、これ以上は無理だ。
せめて次来るまでに生き延びられるように、最低限の力は分けておこう。
痛みも損傷も栄養も体力も記憶も、どれも「等価」になりうる。
それが避けるべきものだとか、増すべきものだとかいう人間側の都合とは無関係に、「等価」は存在する。
だから、相手から損傷を受け取って体力を返すような、自分にダメージの大きい「等価」も成立するし、逆に記憶を受け取って痛みを返すような、こちらに“得”な交換も可能になる。
またその人の顔を見た。
「1週間、がんばって生きて」
「あ?」
額に口付ける。流れ込む映像。
船を作る日々。兄弟子。恩人。秘書。ペット。
何かの襲撃。目を背けたくなるような後悔。自分の手を、呪う。
体の大きな恩人が笑うのが見える。自由に楽しく過ぎた日々。
目的のため、昼夜を問わずものづくりに明け暮れた日々。キツイ、しんどい、楽しい。
完成品の高揚。物を作る喜び。形になった時の達成感。
もっと見ていたかったけど自分側の体力が限界だった。
ゆっくり唇を離す。
その人の顔は苦悶に歪んでいた。
「…痛い?」
「…いや、先週に比べりゃマシよ」
額に触れる。痛み信号が緩和されるように回路を調整する。
「痛いの痛いの、とんでいけ」
*
バカにしてんのか。
と言おうとして、実際に痛みが和らぐのに気づいた。
なんだこれ。何者だ、コイツ。
「なァ、聞いていいか」
「なに?」
「オメェ…本当は何者だ?」
一瞬目を見開いたそいつは、ニヤリと悪女のような笑みを浮かべた。
「しにがみよ」