「本日の特製メニュー、ほうれん草としらすのクリームパスタです。ご賞味あれ」
「いただきます！」

チョッパーの見立てでは鎖骨と腕の骨折が4週間、足が7週間の固定が必要らしいけど、夢見の力を自分に向けて使っているので半分以下で済みそうだった。
毎日のご飯に小魚や乳製品が多く登場するようになって、たまに私には別メニューが振舞われるようになった。
全体的に高カルシウムな食事。

あの日、「ケガが早く治るようにって思って」とウキウキ顔で私を引っ張るナミに着いて行ったら、甲板でブルックが生け贄にされかけていてびっくりした。
必死に止めてブルックを解放して、お礼にと何曲かリクエストしたのは記憶に新しい。
移動したいなあと思った途端、どう察知したのかフランキーやサンジが寄ってきて、お姫様抱っこで目的地へ連れて行ってくるようになった。

右手は何とか使えるから、ゆっくりだけど食事は自力でできる。
初めは「レイラちゅわーーん！オレがあーんして食べさせてあげるからねー！！」「アホか。ガキじゃあるまいし」「あ“ァン！？なんだとこのクソマリモ」「やんのかぐるぐる眉毛！」「うーるっさいっ！！」状態だったのだけど。
できること、できないことをみんなが分かって、スムーズに毎日が運ぶようになった。
縦横無尽にテーブルを行き来していたルフィの手が、私の皿の上を攫おうとして止まる。

「おいルフィ！」
「わかってるって！レイラの飯は食わねぇ！」

…こんな、奇跡みたいなセリフも聞けるようになった。
私の皿以外の料理を口に押し込みながら、ルフィはこっちを見て何か言った。

「べばびばばぶっどぼぼびびんばぼば！」
「ルフィ飲み込んでから喋って」

ごくんっと盛大な音がする。

「ケガしたらずっとここに居んだよな、レイラ！」

言葉とともに向けられた笑顔があまりにも眩しくて、一瞬言葉に詰まった。

「…そう…だね」

かろうじて言葉を絞り出すと、また料理に意識を持って行かれている弟を見やる。
そんな殺し文句が吐けるようになったなんて。
この子の人気も納得だ。