帰ってくる船を港で待ち伏せる。

「あ！アイスバーグさん！！」
「ンマー、レイラさん！久しぶりだな」
「どうしたんですかそのケガ！！」
「イヤ、大したことない」

市長暗殺未遂の新聞を見て思った。カク達が仕事を終えたのだと。
胸の奥に鈍い痛みが蘇る。

「来てたんだな」
「義弟（おとうと）がこの街にいるはずなので」
「そうか、今街はめちゃくちゃだが、ゆっくりしていくといい」
「ありがとうございます。
　…アイスバーグさん、この街に麦わらのルフィがいませんか？」
「…なに？」

＊

「…あんた、ひと悶着終わった後に大体来るよな」
「ああ、確かにそうかも」
「なんつーか、誰かが寝てて身動き取れない時とかよ」
「そういえばアラバスタの時も！」
「今回は船を待って身動きが取れねえな」
「…偶然か？」
「タイミングは昔から良いのよね」

違う。
回復を待っているときを選んでるだけだ。
その時に、一番私が必要だと知っているから。

頭の芯が誰かの気配を捕える。
これは、大変な人が来た。

「ごめん、ちょっと今から隣町に行ってくる」

バックパックを掴んで足早に海賊ハウスを後にした。
まずい、まずい。
ガープのおじちゃんが来る。

＊

船が製作中で、アイスバーグさんもそこにいると聞いたので、案内してもらった。

「アイスバーグさーん！」
「ンマー、来てたのか」
「はい、見学に」

遠くでガシャンと何かが落ちる音がした。
アイスバーグさんの視線を辿るとそこには。

「…！！」

水色の髪の、大きな男の人。
一瞬、頭の中に何かがフラッシュバックした。
ルフィの記憶の中で見た、ウソップをぼこぼこにした人たちの親玉。
でも、ロビンを世界政府から助けてくれた人。
味方なのか、敵なのか。

「ンマー、フランキー、どうしたんだ？」

ああ、兄弟子がアイスバーグさんで、この二人、そういうことか。

「…お前…」

驚きに見開いた目と視線がかみ合う。

「どっかで…会ったこと、ねェか」

ピシ、と固まった私を違う意味に捉えたアイスバーグさんが、ゆったりと割って入った。

「ンマー、ひと回りも若いお嬢さんにナンパとは呆れたもんだな」
「いや、そうじゃなくてよ、」
「ウォーターセブンには、」

彼が全てを紡ぐ前に言葉を断ち切った。

「仕事で時々来ていたので、お見かけ頂いていたのかもしれませんね」

にっこり。営業スマイルを顔に乗せて、釈然としない表情の彼に右手を差し出した。

「初めまして、レイラと言います」