ひとりで海に出てから
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シャチが運び込まれた手術室の前を、塞ぐように立つ。
やってきたローの顔は鳥肌が立つほど青白い。
「どけ」
返事はせずにローのうなじを捕えて唇を合わせた。目を閉じる。この人が居なくなったら、何が起きなくなるんだろう。
ふわ、とルフィの顔が脳裏に浮かぶ。血まみれのルフィ、それを運ぶベポ、管に繋がれるルフィの隣にロー。
そうか。ルフィが救われるのね。
それならそのダメージ、引き受けないと。
大きく目を見開く気配がした。まずは、今はぶら下がってるだけの右腕がちゃんと動くこと。これ以上出血しないこと。
損傷個所の近くに手を置いた。
私の「これ」は光ったりはしない。ただ、高速で治癒させた時には、早送りのように肉が盛り上がって再生する。ローの後ろにいたペンギンが、その様子に気づいて息を呑むのが分かった。
頭の中を大きく歪められるような感覚に支配される。私から流れ出してゆく、体力や精神力、ほんのすこしの「いのち」。ローから流れ込んでくる、痛み、疲労、ダメージ。それと、記憶。
…相手が海軍で海楼石の武器を持ってたんだね。そりゃあ能力者は苦戦するよね。で、動けないこの人をシャチが庇ったと。
2時間分の痛みとダメージの半分を引き受ける。この人は強いから、このくらいならギリギリ後遺症は残らないだろう。私自身が本調子じゃないせいで、これ以上やると離れた途端にこっちが崩れ落ちてしまう。唇を離して後ろによろけそうになるところを、踏みとどまって壁にもたれた。
「お前、いま、何を、」
「話してる時間はないでしょう?早く行って」
ローは眉を寄せて一瞬視線を落とした後、傷ついたはずの右手で私の左手を掴んだ。いつも通りの力強さに安堵する。
「お前も来い」
「、え」
そのまま手術室に連れ込まれた。足の踏ん張りがきかず、入口で派手に転ぶ。
「え、ちょっと、こんな雑菌まみれの物体、手術室に入れていいの!?」
「うるせえ、黙ってろ」
床に転んだ状態から、ゆっくり身を起こす。
その途端、右腕から全身へ一気に痛みが駆け巡った。全身が脈打つような激痛。息ができない。
息を詰めて、浅く吐いて、を繰り返して、何とか痛みをやり過ごす。手術室の温度管理のせいだろうか、ものすごく、寒い。
近くにあった毛布を手繰り寄せて巻き付ける。
部屋の中央のベッドでは輸血を受けるシャチの腹部をローたちが手術し始めた。ローの首元の血管にも管が繋がれて輸血がされている。きっとだいじょうぶだ、あの二人は。
音を立てないように気を付けながら床に崩れ落ちて、自分の体に意識を巡らせる。右手はきっとしばらく使えないだろう。あたまがくらくらする、無意識に血の気もあげてしまったのかもしれない。
手術が終わって、一人になったら、ここを出よう。どっちに転んでも面倒だ。癒したことに感謝されても、能力に興味を持たれても。
目を開けているのが限界で、毛布に埋もれるように眠りに堕ちた。
やってきたローの顔は鳥肌が立つほど青白い。
「どけ」
返事はせずにローのうなじを捕えて唇を合わせた。目を閉じる。この人が居なくなったら、何が起きなくなるんだろう。
ふわ、とルフィの顔が脳裏に浮かぶ。血まみれのルフィ、それを運ぶベポ、管に繋がれるルフィの隣にロー。
そうか。ルフィが救われるのね。
それならそのダメージ、引き受けないと。
大きく目を見開く気配がした。まずは、今はぶら下がってるだけの右腕がちゃんと動くこと。これ以上出血しないこと。
損傷個所の近くに手を置いた。
私の「これ」は光ったりはしない。ただ、高速で治癒させた時には、早送りのように肉が盛り上がって再生する。ローの後ろにいたペンギンが、その様子に気づいて息を呑むのが分かった。
頭の中を大きく歪められるような感覚に支配される。私から流れ出してゆく、体力や精神力、ほんのすこしの「いのち」。ローから流れ込んでくる、痛み、疲労、ダメージ。それと、記憶。
…相手が海軍で海楼石の武器を持ってたんだね。そりゃあ能力者は苦戦するよね。で、動けないこの人をシャチが庇ったと。
2時間分の痛みとダメージの半分を引き受ける。この人は強いから、このくらいならギリギリ後遺症は残らないだろう。私自身が本調子じゃないせいで、これ以上やると離れた途端にこっちが崩れ落ちてしまう。唇を離して後ろによろけそうになるところを、踏みとどまって壁にもたれた。
「お前、いま、何を、」
「話してる時間はないでしょう?早く行って」
ローは眉を寄せて一瞬視線を落とした後、傷ついたはずの右手で私の左手を掴んだ。いつも通りの力強さに安堵する。
「お前も来い」
「、え」
そのまま手術室に連れ込まれた。足の踏ん張りがきかず、入口で派手に転ぶ。
「え、ちょっと、こんな雑菌まみれの物体、手術室に入れていいの!?」
「うるせえ、黙ってろ」
床に転んだ状態から、ゆっくり身を起こす。
その途端、右腕から全身へ一気に痛みが駆け巡った。全身が脈打つような激痛。息ができない。
息を詰めて、浅く吐いて、を繰り返して、何とか痛みをやり過ごす。手術室の温度管理のせいだろうか、ものすごく、寒い。
近くにあった毛布を手繰り寄せて巻き付ける。
部屋の中央のベッドでは輸血を受けるシャチの腹部をローたちが手術し始めた。ローの首元の血管にも管が繋がれて輸血がされている。きっとだいじょうぶだ、あの二人は。
音を立てないように気を付けながら床に崩れ落ちて、自分の体に意識を巡らせる。右手はきっとしばらく使えないだろう。あたまがくらくらする、無意識に血の気もあげてしまったのかもしれない。
手術が終わって、一人になったら、ここを出よう。どっちに転んでも面倒だ。癒したことに感謝されても、能力に興味を持たれても。
目を開けているのが限界で、毛布に埋もれるように眠りに堕ちた。