光を失ってから取り戻すまで
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「…やっちまったよい」
聞こえてますよ、お兄さん。
今、脳裏に弟への謝罪を浮かべているだろう、この男。
派手な技巧も力任せの勢いも一切使わず、ただスタンダードな手順をなぞるだけのそれに、こんなに追い詰められるなんて、始める前の私は全く想像していなかった。
「…マルコ」
「…レイラ、」
「体、どう?」
自身の体を見回して、ハッとしたようにこちらを見る彼はきっと気が付いただろう。
「あの本にある『その他の方法』が、私の場合はこれ。それと、」
焦った眼差しがこちらを向く。
「あなたに危機が振りかかるとき、私には前もってわかるようになるから」
もう1人で強がれないから覚悟してね、と言うと、兄だった人は口を閉ざして考え込んだ。
エースがケガする時には必ず私がいたことでも思い出しているんだろうか。
「ホント…便利な能力だよい」
ひとつ、食えない笑みを送っておいた。
*
「さ、これで全部かな」
「前から思ってたけどよい、オメェ女にしては荷物少なすぎやしねェか」
「そうね、最悪全部持って走れないといけないから」
黒いバックパックひとつ。いつもの私の装備だ。
「じゃあ2カ月間ありがとう」
「それはこっちのセリフだよい」
人生で一番快適な2カ月間だった、と昨日マルコは言っていた。
私にとっても、追われる可能性のない温かい土地で、猛獣とも戦わず誰かと一緒に暮らすのは初めてで楽しかった。
でもそろそろ戻らないと拠点の皆が騒いでしまう。
「行き先は?近いのかよい?」
「うーん、私もよく知らないんだけど、新世界にあるみたいだから大丈夫だと思う」
「そうかよい」
「あとお墓参りもしなくちゃ」
ようやくだ。
ようやく会いに行ける。
「…そうだったねい」
「お花は摘んでいく必要ないんだったよね?」
「あァ。…乗っていくか?」
「いい。一人で行く」
1人で向き合いたい。
「そうかい」
「うん、じゃあ」
眠たげな目がすこし潤んでいるように見えた。
茶化さないのはそれがあながち冗談でもないと知っているから。
「またね、マルコ」
聞こえてますよ、お兄さん。
今、脳裏に弟への謝罪を浮かべているだろう、この男。
派手な技巧も力任せの勢いも一切使わず、ただスタンダードな手順をなぞるだけのそれに、こんなに追い詰められるなんて、始める前の私は全く想像していなかった。
「…マルコ」
「…レイラ、」
「体、どう?」
自身の体を見回して、ハッとしたようにこちらを見る彼はきっと気が付いただろう。
「あの本にある『その他の方法』が、私の場合はこれ。それと、」
焦った眼差しがこちらを向く。
「あなたに危機が振りかかるとき、私には前もってわかるようになるから」
もう1人で強がれないから覚悟してね、と言うと、兄だった人は口を閉ざして考え込んだ。
エースがケガする時には必ず私がいたことでも思い出しているんだろうか。
「ホント…便利な能力だよい」
ひとつ、食えない笑みを送っておいた。
*
「さ、これで全部かな」
「前から思ってたけどよい、オメェ女にしては荷物少なすぎやしねェか」
「そうね、最悪全部持って走れないといけないから」
黒いバックパックひとつ。いつもの私の装備だ。
「じゃあ2カ月間ありがとう」
「それはこっちのセリフだよい」
人生で一番快適な2カ月間だった、と昨日マルコは言っていた。
私にとっても、追われる可能性のない温かい土地で、猛獣とも戦わず誰かと一緒に暮らすのは初めてで楽しかった。
でもそろそろ戻らないと拠点の皆が騒いでしまう。
「行き先は?近いのかよい?」
「うーん、私もよく知らないんだけど、新世界にあるみたいだから大丈夫だと思う」
「そうかよい」
「あとお墓参りもしなくちゃ」
ようやくだ。
ようやく会いに行ける。
「…そうだったねい」
「お花は摘んでいく必要ないんだったよね?」
「あァ。…乗っていくか?」
「いい。一人で行く」
1人で向き合いたい。
「そうかい」
「うん、じゃあ」
眠たげな目がすこし潤んでいるように見えた。
茶化さないのはそれがあながち冗談でもないと知っているから。
「またね、マルコ」