光を失ってから取り戻すまで
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「一カ月くらいいてもいい?」
「あァ、オレはいいけどよい、そっちはいいのか?」
「うん、二か月分前納してある」
奇妙な生活だった。
朝起きるとレイラが起きていて、朝食が出来ている。
レイラは村を散歩したり、森で薬草採りや狩りをしながら気ままに過ごしていた。
夜にはまた、レイラが作った夕食や、オレが作った飯が食卓に並ぶ。
時々二人で並んで台所に立った。
エースともこんなに穏やかに暮らしたことないとレイラは笑った。
時折村のはずれで手合わせする。
以前より動きの先をよまれるようになり、覇気使いとの接近戦スキルが上がった。
ある雨の日。
本を読みたいというレイラに書庫を案内していた時だった。
レイラがふと無表情になり一冊の本に手を伸ばす。
『世界の医術』
「…どうかしたか?」
「…マルコ、この本読んだことある?」
「そりゃもちろん」
「…」
見たこともないような思いつめた表情でページをめくる。
「カラワヤ族って、読んだ?」
「あァ、確か、夢を使って人を癒すだかなんだか…それがどうか、」
レイラの顔を見て察知する。
これは、
「おめぇ、まさか」
「カラワヤ族は、滅亡してない」
*
「あの時、何で言わなかったんだよい」
「…あんまり大人数に言うことじゃないと思った」
「だけどよい…もし、」
「マルコ、」
強い目力が俺を射抜いた。
「私にもできることとできないことがある」
見透かす目だった。
「マルコのできることと私のできることは似てる。
誰かの回復を早めたり、苦痛を取ることはできる。
でもそれはあくまで、休んだり時間をかければ治るものを、速めるだけの力。
時間とともに進んでいくものを止めたり、取り去ることはできない。」
オレが何を考えたか、こいつにはわかっている。
「…いのちを、あげることも、出来なくはないけど」
頬に長いまつ毛の影が落ちた。
「器が大きすぎると、私の分を全部上げても足りないの」
もう一度目が合う。
「それは、マルコもわかってたでしょう?」
残酷だ。
オレにとっても、こいつにとっても。
見聞色が強いこと。人を癒せること。本来なら喜ばしいこと。
だが、「もしも」の元に語るには、あまりに酷な話だった。
「もしも」、全てあの人にあげていたら、
あの人は今も、
「でも」
途端に柔らかい声が響いた。
「もし、できたのなら、そうしたかったって、思うよ」
不意打ちだった。
自分にさえ隠してきた本音を言い当てられた衝撃で、涙が一気に流れた。
気が付くとレイラの腕に抱きしめられていて、
オレは年甲斐もなく、女の腕に縋って泣いた。
「あァ、オレはいいけどよい、そっちはいいのか?」
「うん、二か月分前納してある」
奇妙な生活だった。
朝起きるとレイラが起きていて、朝食が出来ている。
レイラは村を散歩したり、森で薬草採りや狩りをしながら気ままに過ごしていた。
夜にはまた、レイラが作った夕食や、オレが作った飯が食卓に並ぶ。
時々二人で並んで台所に立った。
エースともこんなに穏やかに暮らしたことないとレイラは笑った。
時折村のはずれで手合わせする。
以前より動きの先をよまれるようになり、覇気使いとの接近戦スキルが上がった。
ある雨の日。
本を読みたいというレイラに書庫を案内していた時だった。
レイラがふと無表情になり一冊の本に手を伸ばす。
『世界の医術』
「…どうかしたか?」
「…マルコ、この本読んだことある?」
「そりゃもちろん」
「…」
見たこともないような思いつめた表情でページをめくる。
「カラワヤ族って、読んだ?」
「あァ、確か、夢を使って人を癒すだかなんだか…それがどうか、」
レイラの顔を見て察知する。
これは、
「おめぇ、まさか」
「カラワヤ族は、滅亡してない」
*
「あの時、何で言わなかったんだよい」
「…あんまり大人数に言うことじゃないと思った」
「だけどよい…もし、」
「マルコ、」
強い目力が俺を射抜いた。
「私にもできることとできないことがある」
見透かす目だった。
「マルコのできることと私のできることは似てる。
誰かの回復を早めたり、苦痛を取ることはできる。
でもそれはあくまで、休んだり時間をかければ治るものを、速めるだけの力。
時間とともに進んでいくものを止めたり、取り去ることはできない。」
オレが何を考えたか、こいつにはわかっている。
「…いのちを、あげることも、出来なくはないけど」
頬に長いまつ毛の影が落ちた。
「器が大きすぎると、私の分を全部上げても足りないの」
もう一度目が合う。
「それは、マルコもわかってたでしょう?」
残酷だ。
オレにとっても、こいつにとっても。
見聞色が強いこと。人を癒せること。本来なら喜ばしいこと。
だが、「もしも」の元に語るには、あまりに酷な話だった。
「もしも」、全てあの人にあげていたら、
あの人は今も、
「でも」
途端に柔らかい声が響いた。
「もし、できたのなら、そうしたかったって、思うよ」
不意打ちだった。
自分にさえ隠してきた本音を言い当てられた衝撃で、涙が一気に流れた。
気が付くとレイラの腕に抱きしめられていて、
オレは年甲斐もなく、女の腕に縋って泣いた。