白い船での話
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「なァ、あの美人誰だ!?」
「いや俺もチラッとしか見たことねェんだよ!」
「俺ァ決めたぞ、今晩の宴の時でナンパするぜ!」
遠くからザワザワと人の声がする。
妹という可能性は考慮しないんだろうか。
「レイラ?」
「…イゾウ」
「シケた面だねェ」
口は悪い人だけど、心配して声をかけてくれたみたいだ。
「…なんか、噂されてるなあと思って」
「お前さんくらいの覇気があると、この人数はきついだろう」
「…うーん、普段は大丈夫なんだけど」
一カ月の体調の変化で、どうしても覇気をコントロールできない日がある。それが今日。
イゾウがちらと外を見る。夕暮れ時だ。
「もうすぐ見張り番だが、一緒に来るか?」
「いいの?」
「あァ、あったかくして来いよ」
「わかった!」
モビーに乗っているときはナース部屋の端を借りる。
ナースの入れ替わりが激しいこの船では、常にベットが空いている。
毛布を持ち出して、見張り台へと急いだ。
イゾウはもう見張り台の上だ。
縄ばしごを何段か登ったところで、周りの視線に気づく。
お尻と脚に集中する視線。
ちょっと気後れして、剃と月歩…剃刀だっけ、瞬時に見張り台まで上がって身を隠した。
うお、とイゾウの声が漏れる。
「驚かせてごめん、登るの面倒で」
「いやァ別にいいさ」
毛布にくるまって沈みゆく夕日を眺める。
「今日宴あるのかなあ」
「あァ、あるらしいな」
「…そっか」
「噂されてたのはその関係かい?」
「…うん、まあ、そうね」
「野郎ばっかりだし、ナースに手ェ出すと後が怖いからな、勘弁してやってくれ」
「…勘弁って言うか、怒ってはないのだけど」
「ま、いい気分はしねェよな」
「そうだね」
切れ長の色っぽい双眸が流し目に変わる。
「…慕う相手が、居るんだって?」
「…ふふ」
慕う、という言葉の響きが自分たちと重ならなくて、少し笑いが零れた。
恋する、慕う、惹かれる、惚れる、心を寄せる、焦がれる。どれも少しずつ違う。
一番近いのは、想う。
今日は何をしてるかな、溺れていないかな、おなかいっぱい食べられてるかな。
燃えるような気持ちはあの村に置いてきた。
今はただ、あの人が同じ世界に生きていることが、嬉しくて涙が出そうになる。
もしかしたら、これは、いとおしいという感情なのかもしれないと、たまに思う。
「どんな経験も芸の肥やしね」
「ハッ、言うねェ」
イゾウは水墨画のように煙管をふかした。
「でも、ちげえねェな」
「いや俺もチラッとしか見たことねェんだよ!」
「俺ァ決めたぞ、今晩の宴の時でナンパするぜ!」
遠くからザワザワと人の声がする。
妹という可能性は考慮しないんだろうか。
「レイラ?」
「…イゾウ」
「シケた面だねェ」
口は悪い人だけど、心配して声をかけてくれたみたいだ。
「…なんか、噂されてるなあと思って」
「お前さんくらいの覇気があると、この人数はきついだろう」
「…うーん、普段は大丈夫なんだけど」
一カ月の体調の変化で、どうしても覇気をコントロールできない日がある。それが今日。
イゾウがちらと外を見る。夕暮れ時だ。
「もうすぐ見張り番だが、一緒に来るか?」
「いいの?」
「あァ、あったかくして来いよ」
「わかった!」
モビーに乗っているときはナース部屋の端を借りる。
ナースの入れ替わりが激しいこの船では、常にベットが空いている。
毛布を持ち出して、見張り台へと急いだ。
イゾウはもう見張り台の上だ。
縄ばしごを何段か登ったところで、周りの視線に気づく。
お尻と脚に集中する視線。
ちょっと気後れして、剃と月歩…剃刀だっけ、瞬時に見張り台まで上がって身を隠した。
うお、とイゾウの声が漏れる。
「驚かせてごめん、登るの面倒で」
「いやァ別にいいさ」
毛布にくるまって沈みゆく夕日を眺める。
「今日宴あるのかなあ」
「あァ、あるらしいな」
「…そっか」
「噂されてたのはその関係かい?」
「…うん、まあ、そうね」
「野郎ばっかりだし、ナースに手ェ出すと後が怖いからな、勘弁してやってくれ」
「…勘弁って言うか、怒ってはないのだけど」
「ま、いい気分はしねェよな」
「そうだね」
切れ長の色っぽい双眸が流し目に変わる。
「…慕う相手が、居るんだって?」
「…ふふ」
慕う、という言葉の響きが自分たちと重ならなくて、少し笑いが零れた。
恋する、慕う、惹かれる、惚れる、心を寄せる、焦がれる。どれも少しずつ違う。
一番近いのは、想う。
今日は何をしてるかな、溺れていないかな、おなかいっぱい食べられてるかな。
燃えるような気持ちはあの村に置いてきた。
今はただ、あの人が同じ世界に生きていることが、嬉しくて涙が出そうになる。
もしかしたら、これは、いとおしいという感情なのかもしれないと、たまに思う。
「どんな経験も芸の肥やしね」
「ハッ、言うねェ」
イゾウは水墨画のように煙管をふかした。
「でも、ちげえねェな」