あかいふねでのおはなし
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熊一頭で生活費半年分。
今まではそう思ってきたけど、これからは。
「…うたげが3回分?」
「あァそうだ、しかし熊ってのはずいぶん高く売れるんだな」
「半年の生活が3回分…」
「あ、でもそれはお前が稼いだ金だからな、お前で大事に持っとけよ」
「…うん」
大人がたくさんいるからなのかな。
お金がたくさんかかるみたいだ。
陸と違って海の上で、取れる食べ物は魚くらいだし、
お金がかかるの当たり前かもしれない。
ここ、海賊船は。
*
レイラをあの村から連れ出した。
あの村には、医者が居なかった。
代わりにレイラの祖母が、薬草で病を治していたと聞いた。
あの村には、人食い熊が出た。
それを倒せたのは、レイラのおじにあたる男ただ一人だったと村人は言った。
その全てが、レイラの仕事になった。
高熱を出した人が居れば、その家に行って手をかざす。
熊が人里に降りてきたと聞けば、猟銃を持って一人で山に入る。
村人たちは揃って、それをレイラの「仕事」であり「運命」だと言った。
大の大人が、この小さな背中に、村に起こるすべての不満や災いの解決を求めている。
それに気づいた瞬間、反吐が出るかと思った。
こいつは、本当は自由に生きていいはずだ。
それで、レイラを強引に攫って船に乗せた。
船に乗せてみると、見聞色の覇気の使い手だということが分かった。
銃の腕前もなかなかで、気配を消す術にたけている。
唯一接近戦での攻撃は苦手だが、総合的に見ても十分即戦力と言えた。
おまけに、一通りの家事ができ、レイラが船に乗ってから船の生活が大幅に向上した。
重ねて、島に着くたびに獣撃ちとして報酬を得てくる。
「お前自身がどう思ってるかはわかんねぇが、
俺達はお前が船に乗ってくれて本当にうれしいし助かってる」
「うん、役に立ててうれしいよ」
その顔を見た時に気づいた。
こいつは、役に立つことで自分の居場所を作ろうとしている。
役に立てなければ、居場所がないとでもいうような。
「でもなァ、レイラ」
不思議そうな顔。
「レイラがなーんにもできないお姫様だったとしても、俺はお前がいてくれて嬉しいぞ」
途端に大きな瞳に染み出す涙。
図星だったか。
「だから、あんまり頑張りすぎんな。な?」
こくこくと頷く頭をゆっくりと撫でる。
それ以来、レイラを「うちの姫」と呼ぶようになった。
今まではそう思ってきたけど、これからは。
「…うたげが3回分?」
「あァそうだ、しかし熊ってのはずいぶん高く売れるんだな」
「半年の生活が3回分…」
「あ、でもそれはお前が稼いだ金だからな、お前で大事に持っとけよ」
「…うん」
大人がたくさんいるからなのかな。
お金がたくさんかかるみたいだ。
陸と違って海の上で、取れる食べ物は魚くらいだし、
お金がかかるの当たり前かもしれない。
ここ、海賊船は。
*
レイラをあの村から連れ出した。
あの村には、医者が居なかった。
代わりにレイラの祖母が、薬草で病を治していたと聞いた。
あの村には、人食い熊が出た。
それを倒せたのは、レイラのおじにあたる男ただ一人だったと村人は言った。
その全てが、レイラの仕事になった。
高熱を出した人が居れば、その家に行って手をかざす。
熊が人里に降りてきたと聞けば、猟銃を持って一人で山に入る。
村人たちは揃って、それをレイラの「仕事」であり「運命」だと言った。
大の大人が、この小さな背中に、村に起こるすべての不満や災いの解決を求めている。
それに気づいた瞬間、反吐が出るかと思った。
こいつは、本当は自由に生きていいはずだ。
それで、レイラを強引に攫って船に乗せた。
船に乗せてみると、見聞色の覇気の使い手だということが分かった。
銃の腕前もなかなかで、気配を消す術にたけている。
唯一接近戦での攻撃は苦手だが、総合的に見ても十分即戦力と言えた。
おまけに、一通りの家事ができ、レイラが船に乗ってから船の生活が大幅に向上した。
重ねて、島に着くたびに獣撃ちとして報酬を得てくる。
「お前自身がどう思ってるかはわかんねぇが、
俺達はお前が船に乗ってくれて本当にうれしいし助かってる」
「うん、役に立ててうれしいよ」
その顔を見た時に気づいた。
こいつは、役に立つことで自分の居場所を作ろうとしている。
役に立てなければ、居場所がないとでもいうような。
「でもなァ、レイラ」
不思議そうな顔。
「レイラがなーんにもできないお姫様だったとしても、俺はお前がいてくれて嬉しいぞ」
途端に大きな瞳に染み出す涙。
図星だったか。
「だから、あんまり頑張りすぎんな。な?」
こくこくと頷く頭をゆっくりと撫でる。
それ以来、レイラを「うちの姫」と呼ぶようになった。