光を失ってから取り戻すまで
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貸してもらっている部屋はいつもきっちり片付けるようにしている。
明日、ここを出ることになっても良いように。
実家の船を降りてからずっと続けている、もはや習慣を通り越して習性だった。
殺風景に映るだろう部屋に、唯一置いている荷物を手に取る。
四角い黒のバックパック。
背中側のポケットに手を差し入れて、布の感触を引っ張り出す。
振り返ってそのままサボに手渡した。
「開けても?」
「どうぞ」
息を呑む音がする。
「…これ、」
に、と笑顔を浮かべた。
サボの目に映るものを想像する。
たくさんの、写真。
ご飯を食べながら眠り込むいつもの姿。
2番隊の隊員ともみくちゃになりながら満面の笑みの集合写真。
モビーの甲板で戦闘に興じる背中。
マルコに監視されながら書類を片付ける時のしかめっ面。
夜の海に目をやる、意外なほど大人びた横顔。
エースが、重ねてきた時間だ。
サボの息が詰まるのが聞こえる。
たぶん、泣いてる。
「…いい写真でしょ」
「…ああ、」
今はどの紙がどの時間か分からないけど、これは私のお守り。
もし見えるようになったら、それがいつでどんなことがあったか、すぐに思い出せる。
本当は、知っていた。
エースの身に何が起きるのか。
知っていて、見送った。
でも、私は弱い。
知っていたから、時間を切り取る方法を探した。
たくさんたくさんお金を稼いで、あの機械を手に入れた。
プレゼントと言いながら、本当は未来の自分を慰めるために。
「…一枚くれねぇか」
「いいよ、どれにする?」
少しサボは沈黙して、私の手に一枚写真を置いた。
「…どの写真?」
「エースが戦ってるとこ」
記憶の中には戦闘中の写真は5枚ある。
「陸?船?」
「陸で戦ってるやつ」
…あぁ。きっとあれだ。
「横顔と入れ墨が見える写真?」
「…あァ」
エースの冒険の中に、サボがいた証。
「うん、いいよ」
「ありがとう。恩に着る」
「…いい写真でしょ」
「あァ。誰が撮ったんだ?」
「わたし」
「え!?お前こんなの撮れんの!?」
*
「行くのか」
「うん、顔を出さなきゃいけない所が、たくさんあるから」
「まだ居ればいいのにー」
「ありがと、コアラちゃん」
「またどこかで会えるかしら?」
「2年経ったらサニーに顔出すよ」
「じゃあ、みんな元気で!またね!」
手を挙げて歩いていく足取りはしっかりしていて、とても目が見えない人間とは思えない。
束ねた金色の髪、サングラス、黒いTシャツ、カーキのカーゴパンツ。
腰には猟銃とサバイバルナイフ。
左腕にある肘当ては、エースの形見。
俺達革命軍よりいっそ軍隊らしい格好で、華奢な背中は去っていく。
明日、ここを出ることになっても良いように。
実家の船を降りてからずっと続けている、もはや習慣を通り越して習性だった。
殺風景に映るだろう部屋に、唯一置いている荷物を手に取る。
四角い黒のバックパック。
背中側のポケットに手を差し入れて、布の感触を引っ張り出す。
振り返ってそのままサボに手渡した。
「開けても?」
「どうぞ」
息を呑む音がする。
「…これ、」
に、と笑顔を浮かべた。
サボの目に映るものを想像する。
たくさんの、写真。
ご飯を食べながら眠り込むいつもの姿。
2番隊の隊員ともみくちゃになりながら満面の笑みの集合写真。
モビーの甲板で戦闘に興じる背中。
マルコに監視されながら書類を片付ける時のしかめっ面。
夜の海に目をやる、意外なほど大人びた横顔。
エースが、重ねてきた時間だ。
サボの息が詰まるのが聞こえる。
たぶん、泣いてる。
「…いい写真でしょ」
「…ああ、」
今はどの紙がどの時間か分からないけど、これは私のお守り。
もし見えるようになったら、それがいつでどんなことがあったか、すぐに思い出せる。
本当は、知っていた。
エースの身に何が起きるのか。
知っていて、見送った。
でも、私は弱い。
知っていたから、時間を切り取る方法を探した。
たくさんたくさんお金を稼いで、あの機械を手に入れた。
プレゼントと言いながら、本当は未来の自分を慰めるために。
「…一枚くれねぇか」
「いいよ、どれにする?」
少しサボは沈黙して、私の手に一枚写真を置いた。
「…どの写真?」
「エースが戦ってるとこ」
記憶の中には戦闘中の写真は5枚ある。
「陸?船?」
「陸で戦ってるやつ」
…あぁ。きっとあれだ。
「横顔と入れ墨が見える写真?」
「…あァ」
エースの冒険の中に、サボがいた証。
「うん、いいよ」
「ありがとう。恩に着る」
「…いい写真でしょ」
「あァ。誰が撮ったんだ?」
「わたし」
「え!?お前こんなの撮れんの!?」
*
「行くのか」
「うん、顔を出さなきゃいけない所が、たくさんあるから」
「まだ居ればいいのにー」
「ありがと、コアラちゃん」
「またどこかで会えるかしら?」
「2年経ったらサニーに顔出すよ」
「じゃあ、みんな元気で!またね!」
手を挙げて歩いていく足取りはしっかりしていて、とても目が見えない人間とは思えない。
束ねた金色の髪、サングラス、黒いTシャツ、カーキのカーゴパンツ。
腰には猟銃とサバイバルナイフ。
左腕にある肘当ては、エースの形見。
俺達革命軍よりいっそ軍隊らしい格好で、華奢な背中は去っていく。