光を失ってから取り戻すまで
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「っ、いったー」
全身をさすって痛みがあるところや熱を持っているところを探す。
目が見えなくて一番苦労するのは自分の見た目の把握かも知れない。
コアラちゃんの突きは重かった。
魚人空手は確か相手の体内の水を震わせて衝撃を増強するものだったはず。
上手く受け流せても痛みが残るのはそのせいかな。
廊下を近づいてくるサボの気配に服を整える。
「レイラ」
「はーい」
「入ってもいいか?」
「どうぞ」
ほんの少し気まずそうな空気を纏ってサボが入ってくる。
「コアラが迷惑かけたな」
「迷惑だなんて、楽しかったよ」
「アザ出来たろ」
「うん、たぶん、自分では見えないけど」
「あァ、そうだったな。オレ時々お前が見えてないの忘れそうになるわ」
「私も時々忘れそうになる」
*
俺に椅子をすすめて、レイラはベッドに座る。
「あいつ普段はあんな技、俺らにだってめったに使わない。
お前が思ったより実力者で焦ったんだと思う」
「ふふ、光栄ね」
「でも、初めて手合わせする相手に使う技じゃない。悪かった」
「なんでサボが謝るの?」
「あの場にいたし、止められるとすれば俺ぐらいだったから」
「そっか」
でも、止められなかった。
止めてはいけない気がして。
「コアラちゃん、強いね」
「あァ」
「…女の子が、あれくらい強くなるのに、どんな気持ちがあったのかを、手合わせしながら考えてた」
「…え?」
「ほら、男の子って子供のころから、強くなるんだー!って言ってるじゃない。
強さは目的っていうか」
「…うん」
「でも、私が出会ってきた強い女の子たちは、誰かや何かを守るため、何かを成し遂げるための手段として、力を身に着けたって感じだったのよね」
「なるほど」
「だから、コアラちゃんがあれくらい強くなるのに、何を考えて来たのか知りたくて、私もついあんな戦い方しちゃった」
…そうか、こいつらは。
手合わせをしながら、会話していたのかもしれない。
だから、止めることができなかった。
*
医務室で軍医さんに説教を受けながら、あたしはまだボーっとしてた。
思ったより、ずっと強かった。
人身売買組織に捕まっていたのがわざとなんじゃないかっていうくらい。
「でもコアラがここまでケガするなんて珍しいじゃないか。相手は参謀総長殿か?」
「…サボ君じゃないけど」
「そうか?まあ誰であれ、実践的な手合わせが出来て良かったじゃないか」
手合わせの最中、見えないはずのレイラちゃんの目と、何度も目が合った気がした。
温かく、包み込まれるような空気。
攻撃を繰り出しながら、なぜだか泣きそうになった。
私の中の弱さも、醜い気持ちも、今まであった嫌なことも、
全部知ってくれているような気がした。
「あれじゃあ、嫌いになれないじゃない」
「…なんだ?」
「なんでもない!」