光を失ってから取り戻すまで
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「レイラ、起きたか」
「…おはよう」
「今日はいい天気になりそうだぞ」
「…そう」
あらゆるものを興味深く映し込んでいた瞳が、今は虚無を映すだけになっている。
放っておくと海に落ちていたりするから、こいつが船に乗ってから俺もクルーも気が抜けなくなった。
「ねえシャンクス」
「なんだ?」
「今日、手合わせしたい」
「まだダメだ」
「いつになったらいいの?」
何も映らないはずの目を、それでも少し伏せてレイラは微かに笑った。
「…そうだなあ」
天井に目を移す。見ているようで、こいつよりも“見て”いないのかもしれない。
「ちゃんと飯が食えるようになったらだな」
「…動いたらお腹も空くよ」
「とにかく、まだダメだ」
「…」
こんな会話ができるようになっただけ、回復と考えていいだろう。
はじめのころは、何もなかった。
言葉を発することも、表情が変わることも、泣くことも、なにもなく、ただ、目を開けて、虚空に視線を漂わせて、また、目を閉じて。かけられる声にも、差し出される食べ物にも、何の反応もない。
そんな日々がひと月は続いただろうか。
それでも、ひとつひとつ、こいつは取り戻した。
まずは、涙を。
次に、言葉を。
そして、
光を失っていることを告げられた。
*
「お頭!レイラがしゃべった!!」
クルーの声に部屋に駆け付けると、ベッドに体を起こすレイラの姿があった。膝から崩れ落ちそうになる俺に、レイラが目を向ける。
「レイラ、わかるか」
「シャン…クス?」
ふと、ぞっとするほど大人びた笑みが漏れた。
「…レイラ?」
こちらに目を向けたレイラが、何かおかしい。
視線が、合わない。
まさか。
「お前まさか、目が」
「…見えない、みたい」
*
「ほんとに行くのか」
「止めても無駄だからね」
「諦めろよお頭、レイラが言うこと聞いたことなんかあったか?」
「…せめて約束してくれ」
「ん?」
「月に一回、必ず顔を出すこと」
「…わかった、じゃあ、」
何も見えない私を、守ってくれた人。
「新月の夜に」
もし来られなかったら、代わりに何かを送るね、
そう言って、実家と呼ぶ船を降りる。
顔を出さなければいけない場所が、たくさんある。
だけどまずは、光を取り戻すところから。
「…おはよう」
「今日はいい天気になりそうだぞ」
「…そう」
あらゆるものを興味深く映し込んでいた瞳が、今は虚無を映すだけになっている。
放っておくと海に落ちていたりするから、こいつが船に乗ってから俺もクルーも気が抜けなくなった。
「ねえシャンクス」
「なんだ?」
「今日、手合わせしたい」
「まだダメだ」
「いつになったらいいの?」
何も映らないはずの目を、それでも少し伏せてレイラは微かに笑った。
「…そうだなあ」
天井に目を移す。見ているようで、こいつよりも“見て”いないのかもしれない。
「ちゃんと飯が食えるようになったらだな」
「…動いたらお腹も空くよ」
「とにかく、まだダメだ」
「…」
こんな会話ができるようになっただけ、回復と考えていいだろう。
はじめのころは、何もなかった。
言葉を発することも、表情が変わることも、泣くことも、なにもなく、ただ、目を開けて、虚空に視線を漂わせて、また、目を閉じて。かけられる声にも、差し出される食べ物にも、何の反応もない。
そんな日々がひと月は続いただろうか。
それでも、ひとつひとつ、こいつは取り戻した。
まずは、涙を。
次に、言葉を。
そして、
光を失っていることを告げられた。
*
「お頭!レイラがしゃべった!!」
クルーの声に部屋に駆け付けると、ベッドに体を起こすレイラの姿があった。膝から崩れ落ちそうになる俺に、レイラが目を向ける。
「レイラ、わかるか」
「シャン…クス?」
ふと、ぞっとするほど大人びた笑みが漏れた。
「…レイラ?」
こちらに目を向けたレイラが、何かおかしい。
視線が、合わない。
まさか。
「お前まさか、目が」
「…見えない、みたい」
*
「ほんとに行くのか」
「止めても無駄だからね」
「諦めろよお頭、レイラが言うこと聞いたことなんかあったか?」
「…せめて約束してくれ」
「ん?」
「月に一回、必ず顔を出すこと」
「…わかった、じゃあ、」
何も見えない私を、守ってくれた人。
「新月の夜に」
もし来られなかったら、代わりに何かを送るね、
そう言って、実家と呼ぶ船を降りる。
顔を出さなければいけない場所が、たくさんある。
だけどまずは、光を取り戻すところから。
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