ひとりで海に出てから
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後ろから手を引かれて振り向いた瞬間にはもう、長い腕の中にいた。
見た目より胸板が厚いんだなあ、なんて悠長に考えた。
「…レイラ」
普段の明るい声とは違う、少しだけ切羽詰まった声が頭上からかかる。
目を上げると声の色そのもののような瞳と視線が絡んだ。
ゆっくり近づいてくる顔。
触れた唇から膨大な量の情報が流れ込んできた。
全身が硬直する。
…私は今まで彼の何を見ていたんだろう。
体術なんて大したことじゃない、
彼という人間はもっと果てしなく深くて、…冷たくて暗い。
初めて人を殺した日。
葛藤。
いつしか迷いがなくなった。
冷静になったことを、喜んでいいのだろうか。
権力が、正義が、自分のやることが正しいのだ。
CP―9。
この人は世界政府の諜報機関の、殺し屋だ。
一度唇が離れる。
目が合った。
私は今どんな顔をしているのだろう。
確かめる前にまた唇が塞がれた。
何かを探してこの街に潜りこんだ。
アイスバーグさんを監視する日々。
その傍らで、船づくりがどんどん楽しくなる。
物を作る喜びを知る。
穏やかに生活する幸せを知る。
たまにぞっとするほど寂しくなる。
そして、私。
ああ、この人の目に映る私は、
なんて儚くて、なんてキラキラしてるんだろう。
葛藤。
そして、決壊。
それが、今。
でも。
流れ込んでくる情報を遮断した。
“権力に近づいてはいけないよ”
この人は、私を狩る立場にある。
もしそうなったら、きっとこの人は完璧に任務を遂行するだろう。
心のどこかできっと深く深く悲しみながら。
そんな哀しみを、与えるわけには行かない。
*
唇を離すと同時にレイラに強く押しのけられた。
俯いた顔からは表情はうかがえない。
「…レイラ」
「ごめん、カク」
聞いたことがないほど、無機質な声。
「…もう、一緒に居られない」
「な、」
「ごめんなさい」
「おい、レイラ、」
手を振り切って走り去る背中を、追わなかった。
本気を出せば追いついたじゃろうが、足が凍り付いたように動かなかった。
翌朝。
出社前にルッチと出くわした。
「カク」
「なんじゃ」
「うつつを抜かしているなよ」
途端に体から莫大なエネルギーが吹き出すような感覚に襲われる。
嵐脚を繰り出そうとして踏みとどまった。
「…ハッ、」
「…」
「見事にうつつを抜かしておるわい」
片方の口の端を上げて、“同僚”は去っていった。
見た目より胸板が厚いんだなあ、なんて悠長に考えた。
「…レイラ」
普段の明るい声とは違う、少しだけ切羽詰まった声が頭上からかかる。
目を上げると声の色そのもののような瞳と視線が絡んだ。
ゆっくり近づいてくる顔。
触れた唇から膨大な量の情報が流れ込んできた。
全身が硬直する。
…私は今まで彼の何を見ていたんだろう。
体術なんて大したことじゃない、
彼という人間はもっと果てしなく深くて、…冷たくて暗い。
初めて人を殺した日。
葛藤。
いつしか迷いがなくなった。
冷静になったことを、喜んでいいのだろうか。
権力が、正義が、自分のやることが正しいのだ。
CP―9。
この人は世界政府の諜報機関の、殺し屋だ。
一度唇が離れる。
目が合った。
私は今どんな顔をしているのだろう。
確かめる前にまた唇が塞がれた。
何かを探してこの街に潜りこんだ。
アイスバーグさんを監視する日々。
その傍らで、船づくりがどんどん楽しくなる。
物を作る喜びを知る。
穏やかに生活する幸せを知る。
たまにぞっとするほど寂しくなる。
そして、私。
ああ、この人の目に映る私は、
なんて儚くて、なんてキラキラしてるんだろう。
葛藤。
そして、決壊。
それが、今。
でも。
流れ込んでくる情報を遮断した。
“権力に近づいてはいけないよ”
この人は、私を狩る立場にある。
もしそうなったら、きっとこの人は完璧に任務を遂行するだろう。
心のどこかできっと深く深く悲しみながら。
そんな哀しみを、与えるわけには行かない。
*
唇を離すと同時にレイラに強く押しのけられた。
俯いた顔からは表情はうかがえない。
「…レイラ」
「ごめん、カク」
聞いたことがないほど、無機質な声。
「…もう、一緒に居られない」
「な、」
「ごめんなさい」
「おい、レイラ、」
手を振り切って走り去る背中を、追わなかった。
本気を出せば追いついたじゃろうが、足が凍り付いたように動かなかった。
翌朝。
出社前にルッチと出くわした。
「カク」
「なんじゃ」
「うつつを抜かしているなよ」
途端に体から莫大なエネルギーが吹き出すような感覚に襲われる。
嵐脚を繰り出そうとして踏みとどまった。
「…ハッ、」
「…」
「見事にうつつを抜かしておるわい」
片方の口の端を上げて、“同僚”は去っていった。