私が22歳だったころ
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「そうかい、あんたあのカラワヤ族の」
「末裔、ですかね」
「…憶えてるよ、学びに行ったもんだ。滅亡の年まで」
「…ずっと不思議だったんです。祖母から教えられた薬草は、私の生まれた島にはなくて、旅をしていてたどり着いた夏島にその薬草が生えていた」
「…ほお」
「祖母は冬島でも取れる薬草で薬を作っていましたが、やはり限界があったようです」
「そうかい」
「…あ、そうだ」
バックパックを漁り、ノートを取り出す。
「これ、祖母の遺したノートなんですけど、カラワヤの知恵を冬島の薬草で再現する術が書いてあります。もし、必要ならお見せします」
「…いいのかい、形見だろう」
「私が見るより、ドクトリーヌが見たほうが、助かる人が多そうなので」
「嬉しい手土産だね」
*
物陰から黒いローブが飛び出してきた。
ばさりとフードが外れて、金色の長い髪が冬島の弱い日光に照らされる。
「エース!」
「レイラ、お前!」
「怒んない怒んない」
「…何でここにいんだよ」
「この間、新聞で見たから。ここに来たって」
ティーチのドラム王国襲撃を知ったのは1週間前のことだった。
最短ルートでこの国に上陸したが、奴らはとうの昔に出国した後だった。
「…もしお前ひとりで遭遇したら…!」
「ちゃんと出国したの見届けてから上陸したもの」
レイラと一緒に行動すれば、あいつに会うことも簡単なのかもしれない。
でもそれはこいつの身を危険に晒すってことだ。
それだけは、できない。
「お前は、ケジメつけさせてェとか思わねえのかよ」
「…オヤジ様が放っておけって言ってるからそれに従うわ」
「お前の意思はねえのか」
「正直に言うと、どっちでもいいの」
レイラの黒い瞳が据わる。獲物を見るときの目だ。
「死ねとか呪われろとか祈って、あとは忘れることにしたわ」
「…俺は、そうは思えねェ」
「きっと、エースはそうだよね」
目元の緊張をほどいてレイラがこっちを見た。
「ねえ、次の島まで乗せてって?」
こいつの航海は俺よりずっと体力を使う。
できれば乗せてってやりてェが、危険に晒したくもねェ。
目を逸らして海の方に目をやる。
「ダメだ。内乱中の国だぞ」
「…わかった。じゃあ仕方ないわね」
「さっさとモビーに帰れ」
「それ言える立場?」
「…」
「じゃあ、もう一つお願い」
「なんだよ」
「キスして」
子供のような笑みを浮かべる唇に、熱烈なのをお見舞いしてやった。
「末裔、ですかね」
「…憶えてるよ、学びに行ったもんだ。滅亡の年まで」
「…ずっと不思議だったんです。祖母から教えられた薬草は、私の生まれた島にはなくて、旅をしていてたどり着いた夏島にその薬草が生えていた」
「…ほお」
「祖母は冬島でも取れる薬草で薬を作っていましたが、やはり限界があったようです」
「そうかい」
「…あ、そうだ」
バックパックを漁り、ノートを取り出す。
「これ、祖母の遺したノートなんですけど、カラワヤの知恵を冬島の薬草で再現する術が書いてあります。もし、必要ならお見せします」
「…いいのかい、形見だろう」
「私が見るより、ドクトリーヌが見たほうが、助かる人が多そうなので」
「嬉しい手土産だね」
*
物陰から黒いローブが飛び出してきた。
ばさりとフードが外れて、金色の長い髪が冬島の弱い日光に照らされる。
「エース!」
「レイラ、お前!」
「怒んない怒んない」
「…何でここにいんだよ」
「この間、新聞で見たから。ここに来たって」
ティーチのドラム王国襲撃を知ったのは1週間前のことだった。
最短ルートでこの国に上陸したが、奴らはとうの昔に出国した後だった。
「…もしお前ひとりで遭遇したら…!」
「ちゃんと出国したの見届けてから上陸したもの」
レイラと一緒に行動すれば、あいつに会うことも簡単なのかもしれない。
でもそれはこいつの身を危険に晒すってことだ。
それだけは、できない。
「お前は、ケジメつけさせてェとか思わねえのかよ」
「…オヤジ様が放っておけって言ってるからそれに従うわ」
「お前の意思はねえのか」
「正直に言うと、どっちでもいいの」
レイラの黒い瞳が据わる。獲物を見るときの目だ。
「死ねとか呪われろとか祈って、あとは忘れることにしたわ」
「…俺は、そうは思えねェ」
「きっと、エースはそうだよね」
目元の緊張をほどいてレイラがこっちを見た。
「ねえ、次の島まで乗せてって?」
こいつの航海は俺よりずっと体力を使う。
できれば乗せてってやりてェが、危険に晒したくもねェ。
目を逸らして海の方に目をやる。
「ダメだ。内乱中の国だぞ」
「…わかった。じゃあ仕方ないわね」
「さっさとモビーに帰れ」
「それ言える立場?」
「…」
「じゃあ、もう一つお願い」
「なんだよ」
「キスして」
子供のような笑みを浮かべる唇に、熱烈なのをお見舞いしてやった。