本編
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「あらー!ミオちゃんじゃない!」
剣士さんが来てちょうど10日、おつとめがお休みなので夕方の散歩をしていた。
声をかけられて振り返ると、山を挟んで逆側のふもとに住んでいるタカコおばさんだった。
お母さんが生きていた頃、よくお家に遊びに行っていた。
私が大きくなってからも、道で見かけては気にかけてくれている。
「あらっ、ワンちゃんと一緒なの?」
「あ、はい。ちょっと」
「えー、まさか神の使いじゃないでしょうねえ?あたしイヤよー?ミオちゃんが失踪してみんなで探すのなんて」
「大丈夫ですよ、1ヶ月の期限付きでしっかり預かってますし」
「そう?でもね、あの神隠し伝説も案外ホントらしいから」
「ああ、あれ」
「特にミオちゃん可愛いしお人好しだし真面目だから袖引かれやすいと思うのよねえ」
「もうータカコおばさん子ども扱いしすぎですー」
誤魔化しにくくなってきたところで、剣士さんが鼻先をクイっと振って先を歩き始めたのでタカコおばさんと別れた。
なんとなく、危なかった、気がする。
家に帰って玄関のドアを閉めた途端、剣士さんの声が響いた。
「おい」
「はい」
「さっきの神隠しってなんだ?」
「…えっと…」
「お前が袖引かれやすいってのは?」
居間に進みながら言葉を選ぶ。
「帰るための条件で、女の人と寝ないことって言ったでしょ」
「ああ」
「…実は、女の人と寝ても向こうの世界に帰る方法はあるの」
「なに?」
「女の人が望めば、一緒に向こうの世界に行くことは可能らしいのね。
ただ、望まなければ社に弾かれて二人ともこの世界に残るらしいわ」
「…」
「そうやって失踪した女の人をこの地区では、神隠しとか袖を引かれると言うの。
遭いやすい人として、真面目で信じやすい、というか騙されやすい若い女が注意しろって言い伝えがあるのよ」
「…なるほどな」
「私は仕事柄、真面目で信心深いと思われてるから、そう言われるんだと思うわ」
台所まで来てエプロンを付けた。
横目で見ると剣士さんは床に寝そべって寝る体勢のようだ。
手を洗いながら考える。
誰かに何か言われる。それを話す。出来事を消化する。
料理を作る。二人で食べる。一人より味に敏感になる。
毎日が少しだけ色鮮やかになる。
1人だと知らなかった日々の色を、私は知って行った。
剣士さんが来てちょうど10日、おつとめがお休みなので夕方の散歩をしていた。
声をかけられて振り返ると、山を挟んで逆側のふもとに住んでいるタカコおばさんだった。
お母さんが生きていた頃、よくお家に遊びに行っていた。
私が大きくなってからも、道で見かけては気にかけてくれている。
「あらっ、ワンちゃんと一緒なの?」
「あ、はい。ちょっと」
「えー、まさか神の使いじゃないでしょうねえ?あたしイヤよー?ミオちゃんが失踪してみんなで探すのなんて」
「大丈夫ですよ、1ヶ月の期限付きでしっかり預かってますし」
「そう?でもね、あの神隠し伝説も案外ホントらしいから」
「ああ、あれ」
「特にミオちゃん可愛いしお人好しだし真面目だから袖引かれやすいと思うのよねえ」
「もうータカコおばさん子ども扱いしすぎですー」
誤魔化しにくくなってきたところで、剣士さんが鼻先をクイっと振って先を歩き始めたのでタカコおばさんと別れた。
なんとなく、危なかった、気がする。
家に帰って玄関のドアを閉めた途端、剣士さんの声が響いた。
「おい」
「はい」
「さっきの神隠しってなんだ?」
「…えっと…」
「お前が袖引かれやすいってのは?」
居間に進みながら言葉を選ぶ。
「帰るための条件で、女の人と寝ないことって言ったでしょ」
「ああ」
「…実は、女の人と寝ても向こうの世界に帰る方法はあるの」
「なに?」
「女の人が望めば、一緒に向こうの世界に行くことは可能らしいのね。
ただ、望まなければ社に弾かれて二人ともこの世界に残るらしいわ」
「…」
「そうやって失踪した女の人をこの地区では、神隠しとか袖を引かれると言うの。
遭いやすい人として、真面目で信じやすい、というか騙されやすい若い女が注意しろって言い伝えがあるのよ」
「…なるほどな」
「私は仕事柄、真面目で信心深いと思われてるから、そう言われるんだと思うわ」
台所まで来てエプロンを付けた。
横目で見ると剣士さんは床に寝そべって寝る体勢のようだ。
手を洗いながら考える。
誰かに何か言われる。それを話す。出来事を消化する。
料理を作る。二人で食べる。一人より味に敏感になる。
毎日が少しだけ色鮮やかになる。
1人だと知らなかった日々の色を、私は知って行った。