本編
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「これが、私達の持つ地図です」
グランドラインも、レッドラインもない地図を広げて女は言う。
「…嘘だろ…」
「そして、これはある方が書いてくれた、その方のいた場所の地図です」
女が広げたもう一枚の紙には、おれの知っている世界の地図が広がっていた。
クライガナ島とシッケアール王国跡地の地図もある。
「剣士さんがいらっしゃったのはこの場所でしょうか?」
「…ああ。…この地図を描いたのは一体、」
「ジュラキュール・ミホークという方をご存じありませんか」
「なッ、鷹の目!?」
「5年前、そのミホークという方がここに来て、この地図を描いて行かれました」
女がニコ、と笑みを浮かべる。
「ここはあなた方のいた世界とは違う世界です。
そして、彼が帰れたのと同じように、おそらくあなたも、
そちらの世界に帰ることは可能だと思います。」
「どういうことだ?」
「長い話になりますけど、お付き合いいただけますか?」
*
5年前の夏、私はあの社で金色の目をした鷹を拾いました。
その鷹は人間の言葉を喋り、ミホークと名乗りました。
神の使いだと考えた私は父を呼び、ミホークさんを家に連れて帰りました。
話をするうち、彼がこことは違う世界から来たことが分かりました。
父は宮司でしたから、神社に伝わる様々な歴史を紐解き、
遥か昔にも同じ現象があったことが分かりました。
その書物によると、30日間こちらで過ごし、
31日目の同じ時間帯にあの社の前にいると元の世界に戻れるそうです。
実際にミホークさんはその方法でお帰りになって…
今もその地図の世界で元気にされてるんですもんね?…良かったです。
あの頃は父もまだ元気だったので…あ、昨年他界しまして…。
父は若い頃から剣道を趣味にしていましたので、ミホークさんに稽古をつけて頂いては、
まるで敵わずに悔しがりながらも、楽しそうにしておりました。
…言葉遣い?ああ、わかりにくいですかね…そうですか、では、わかりました。
えっと…先ほど私、帰れるって言ったのだけど、それには条件がある、の。
ひとつめは、この山の頂上にある神社の結界に入らないこと。
ふたつめは、この世界で女の人と寝ないこと。
寝るって言っても、添い寝は大丈夫で…あ、そう、そういう意味…よ。
頂上の神社はまた別のどこかにつながってるらしくて、
そっちの方が引き込む力が強いから、っていうことみたい。
で、ふたつめは…言ってみれば女の情念っていうか…これも引き込む力が強すぎて、
別々の世界に離れることはできなくなるって。
それを守ってさっきのタイミングで社にいれば、たぶんあなたは元の世界に戻れる。
だから、それまでの30日間、私があなたのお手伝いをさせてもらうね。
…危険、かあ…まあ、野生動物の姿だからケガとか心配する気持ちも少しあるけど、
ミホークさんも紳士だったし…私が動けなくなったらあなたは檻行きだと思ったら、
そうそう悪いようにはしないと思うのよね。ね?
それに、あなたずっとその姿ってわけでもないと思うわ。
あ、ちょうどいい感じで日没ね。
*
「日没?なんだそれ」
言った途端に身体中にザワザワと鳥肌のような気味悪い感覚が駆け巡る。
いや、今おれ犬なんだが。
不意にブルックが頭の中に出てきて「ヨホホー!アニマルジョーク!!」と笑ったので、
ここにはいないアイツを殴り飛ばしたくなった。
そんなことを考えている間に、オレの身体から生えていた灰色の毛は引っ込んで、
剣ダコのある見慣れた手が目の前に現れた。
「はいどうぞ」
「なッ、」
「瞳の緑は髪の色だったのね」
女が差し出した鏡には、目を見開くおれの顔が映っていた。
「これは…」
「あなたたちはこの世界では、昼は動物の姿を取るけれど、日没とともに人間の姿に戻る」
「…なんだと…」
「だからさっき言ったじゃない、女の人と寝ないこと、って」
犬のままだったらそもそもできないもんね。
唖然としているおれを尻目に、女は夕食の支度を始めた。
グランドラインも、レッドラインもない地図を広げて女は言う。
「…嘘だろ…」
「そして、これはある方が書いてくれた、その方のいた場所の地図です」
女が広げたもう一枚の紙には、おれの知っている世界の地図が広がっていた。
クライガナ島とシッケアール王国跡地の地図もある。
「剣士さんがいらっしゃったのはこの場所でしょうか?」
「…ああ。…この地図を描いたのは一体、」
「ジュラキュール・ミホークという方をご存じありませんか」
「なッ、鷹の目!?」
「5年前、そのミホークという方がここに来て、この地図を描いて行かれました」
女がニコ、と笑みを浮かべる。
「ここはあなた方のいた世界とは違う世界です。
そして、彼が帰れたのと同じように、おそらくあなたも、
そちらの世界に帰ることは可能だと思います。」
「どういうことだ?」
「長い話になりますけど、お付き合いいただけますか?」
*
5年前の夏、私はあの社で金色の目をした鷹を拾いました。
その鷹は人間の言葉を喋り、ミホークと名乗りました。
神の使いだと考えた私は父を呼び、ミホークさんを家に連れて帰りました。
話をするうち、彼がこことは違う世界から来たことが分かりました。
父は宮司でしたから、神社に伝わる様々な歴史を紐解き、
遥か昔にも同じ現象があったことが分かりました。
その書物によると、30日間こちらで過ごし、
31日目の同じ時間帯にあの社の前にいると元の世界に戻れるそうです。
実際にミホークさんはその方法でお帰りになって…
今もその地図の世界で元気にされてるんですもんね?…良かったです。
あの頃は父もまだ元気だったので…あ、昨年他界しまして…。
父は若い頃から剣道を趣味にしていましたので、ミホークさんに稽古をつけて頂いては、
まるで敵わずに悔しがりながらも、楽しそうにしておりました。
…言葉遣い?ああ、わかりにくいですかね…そうですか、では、わかりました。
えっと…先ほど私、帰れるって言ったのだけど、それには条件がある、の。
ひとつめは、この山の頂上にある神社の結界に入らないこと。
ふたつめは、この世界で女の人と寝ないこと。
寝るって言っても、添い寝は大丈夫で…あ、そう、そういう意味…よ。
頂上の神社はまた別のどこかにつながってるらしくて、
そっちの方が引き込む力が強いから、っていうことみたい。
で、ふたつめは…言ってみれば女の情念っていうか…これも引き込む力が強すぎて、
別々の世界に離れることはできなくなるって。
それを守ってさっきのタイミングで社にいれば、たぶんあなたは元の世界に戻れる。
だから、それまでの30日間、私があなたのお手伝いをさせてもらうね。
…危険、かあ…まあ、野生動物の姿だからケガとか心配する気持ちも少しあるけど、
ミホークさんも紳士だったし…私が動けなくなったらあなたは檻行きだと思ったら、
そうそう悪いようにはしないと思うのよね。ね?
それに、あなたずっとその姿ってわけでもないと思うわ。
あ、ちょうどいい感じで日没ね。
*
「日没?なんだそれ」
言った途端に身体中にザワザワと鳥肌のような気味悪い感覚が駆け巡る。
いや、今おれ犬なんだが。
不意にブルックが頭の中に出てきて「ヨホホー!アニマルジョーク!!」と笑ったので、
ここにはいないアイツを殴り飛ばしたくなった。
そんなことを考えている間に、オレの身体から生えていた灰色の毛は引っ込んで、
剣ダコのある見慣れた手が目の前に現れた。
「はいどうぞ」
「なッ、」
「瞳の緑は髪の色だったのね」
女が差し出した鏡には、目を見開くおれの顔が映っていた。
「これは…」
「あなたたちはこの世界では、昼は動物の姿を取るけれど、日没とともに人間の姿に戻る」
「…なんだと…」
「だからさっき言ったじゃない、女の人と寝ないこと、って」
犬のままだったらそもそもできないもんね。
唖然としているおれを尻目に、女は夕食の支度を始めた。