Significance of parting
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なんだか眠れなくて、ベッドで何度も寝返りを打つ。
いつもは下のお店からお客さんの笑い声やボイラーの音が聞こえてくるのに、今日はほとんど聞こえないからかな。
体を起こすとパイプベッドが音を立てた。
鏡に映った自分の格好に、ちょっとだけ満足する。
先週服を買ってもらってから、自分が着ていた服が子供っぽく思えて、昨日お店が開く前に服を買いに連れて行ってもらった。
今度は自分のお小遣いで買える店に。
いちいち「これどうかな?」とサンジくんに聞いて、反応が良かった服をカゴに入れてから、パジャマも買おうと思い付いてこれを買った。
首元が広く開いたTシャツにショートパンツ。
おばあちゃんが見たとしたら「だらしない」って叱られると思う。
そーっと一階に降りる。
裏口のドアを開けようとしたら人の声がした。
「もう、シャキッとしなさいよサンジくん」
女の人の声。
「…ワリィなナミさん。もう今日は店閉めちまおうかな」
「あら、貸し切り?いいわね。飲み比べと行くわよ!」
「ハハ、お手柔らかに頼むよ」
明るい、聞いたことのある声。
会ったことある。オレンジ色の髪の美人な人だ。
足音を立てないように部屋に引き返す。
わたし、なんで打ちのめされてるんだろう。
傲慢な自分に気づいたからかもしれない。
サンジくんにはサンジくんの時間があって、本当なら会いたい人とか行きたい場所とかあるはずなのに、私のことを優先してくれるって思いこんでた。
そっとドアを閉めてベッドに潜りこむ。
明日はお店がお休みで、無意識にどこかへ連れて行ってもらえると思っていたけど、本当はそんなの当たり前でもなんでもないんだ。
甘えてた。完全に。
それから、ほんのちょっと気付いてた。
私たぶん嫉妬してる。
あのオレンジ髪の人、キレイで大人で、サンジくんと2人きりでお酒が飲めて、いいな。
でも、だけど。
私は恋で泣くような女の子じゃないはずだ。
だからこの涙は、自分の甘えが恥ずかしくて惨めで泣いてるんだ。
きっと、ちがう。
恋じゃないはずだ。
*
〈今日のお昼ごはんは外で食べます。ゆっくり休んでください。ユリカ〉
「…マジか」
無意識にスマホを手に取っていたらしい。
コール音が鳴り始めた所で、自分が電話をかけていることをようやく理解する。
「…はい、もしもし」
「ユリカちゃん?おれ」
「サンジくん?」
ユリカちゃんはこの間のデート以来、おれを名前で呼ぶようになっている。
「…」
「…あれ?」
「あァ、ごめんごめん」
「どうしたの?体の調子悪い?」
「…調子は…そうだな、どうだろう」
おれのこの煮え切らなさは、この会話を長引かせるためのモンだって急に気が付く。
「…なァ、ユリカちゃん」
「うん」
「今日、デートしないか」
「…え?」
「いや、ちょっと郊外のほうにさ、新しくレストランが出来たんだけど、女性向けらしくておれ一人では行きにくくてよ」
「あ、そうなんだ」
少し沈黙があって、電話の向こうから何か言いかける気配がする。
「どうかした?」
「…いいの?私で」
「もちろんさ。ユリカちゃんと行きたいんだ」
「…そっか」
電話越しの声に喜びが込められていて、おれにも同じような何かが生まれた。
「じゃあ、今から迎えに行くからな」
「うん。…待ってる」
電話を切って財布と鍵をポケットに突っ込む。
さァ、レディを待たせるわけには行かねェな。
いつもは下のお店からお客さんの笑い声やボイラーの音が聞こえてくるのに、今日はほとんど聞こえないからかな。
体を起こすとパイプベッドが音を立てた。
鏡に映った自分の格好に、ちょっとだけ満足する。
先週服を買ってもらってから、自分が着ていた服が子供っぽく思えて、昨日お店が開く前に服を買いに連れて行ってもらった。
今度は自分のお小遣いで買える店に。
いちいち「これどうかな?」とサンジくんに聞いて、反応が良かった服をカゴに入れてから、パジャマも買おうと思い付いてこれを買った。
首元が広く開いたTシャツにショートパンツ。
おばあちゃんが見たとしたら「だらしない」って叱られると思う。
そーっと一階に降りる。
裏口のドアを開けようとしたら人の声がした。
「もう、シャキッとしなさいよサンジくん」
女の人の声。
「…ワリィなナミさん。もう今日は店閉めちまおうかな」
「あら、貸し切り?いいわね。飲み比べと行くわよ!」
「ハハ、お手柔らかに頼むよ」
明るい、聞いたことのある声。
会ったことある。オレンジ色の髪の美人な人だ。
足音を立てないように部屋に引き返す。
わたし、なんで打ちのめされてるんだろう。
傲慢な自分に気づいたからかもしれない。
サンジくんにはサンジくんの時間があって、本当なら会いたい人とか行きたい場所とかあるはずなのに、私のことを優先してくれるって思いこんでた。
そっとドアを閉めてベッドに潜りこむ。
明日はお店がお休みで、無意識にどこかへ連れて行ってもらえると思っていたけど、本当はそんなの当たり前でもなんでもないんだ。
甘えてた。完全に。
それから、ほんのちょっと気付いてた。
私たぶん嫉妬してる。
あのオレンジ髪の人、キレイで大人で、サンジくんと2人きりでお酒が飲めて、いいな。
でも、だけど。
私は恋で泣くような女の子じゃないはずだ。
だからこの涙は、自分の甘えが恥ずかしくて惨めで泣いてるんだ。
きっと、ちがう。
恋じゃないはずだ。
*
〈今日のお昼ごはんは外で食べます。ゆっくり休んでください。ユリカ〉
「…マジか」
無意識にスマホを手に取っていたらしい。
コール音が鳴り始めた所で、自分が電話をかけていることをようやく理解する。
「…はい、もしもし」
「ユリカちゃん?おれ」
「サンジくん?」
ユリカちゃんはこの間のデート以来、おれを名前で呼ぶようになっている。
「…」
「…あれ?」
「あァ、ごめんごめん」
「どうしたの?体の調子悪い?」
「…調子は…そうだな、どうだろう」
おれのこの煮え切らなさは、この会話を長引かせるためのモンだって急に気が付く。
「…なァ、ユリカちゃん」
「うん」
「今日、デートしないか」
「…え?」
「いや、ちょっと郊外のほうにさ、新しくレストランが出来たんだけど、女性向けらしくておれ一人では行きにくくてよ」
「あ、そうなんだ」
少し沈黙があって、電話の向こうから何か言いかける気配がする。
「どうかした?」
「…いいの?私で」
「もちろんさ。ユリカちゃんと行きたいんだ」
「…そっか」
電話越しの声に喜びが込められていて、おれにも同じような何かが生まれた。
「じゃあ、今から迎えに行くからな」
「うん。…待ってる」
電話を切って財布と鍵をポケットに突っ込む。
さァ、レディを待たせるわけには行かねェな。