Significance of parting
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寝れねェ。
いつもならとっくに寝てる時間だが、
今日に限って眠れないのは隣の部屋から音がするからだ。
いや、隣の部屋の音に耳を傾けてしまうから、というべきか。
バサバサと何かを振る音。
ファスナーを閉める音。
窓を開ける音。
何かを床に置く音。
今日、ユリカちゃんは帰る。
結局ユリカちゃんの父親は迎えに来なくて、オーナーの車に乗っていくことになったらしい。
帰った後の、彼女の生活。
誰か、いるんだろうか。
彼女の日々を見守る人は。
どんな部屋で過ごすんだろう。
なにを思って暮らすんだろうか。
おれがそれを案じる立場に無いことを分かってはいたが、どうにも気に掛かって落ち着かなかった。
結局一睡もできないままいつもの起床時間より早く体を起こす。
店に降りていくと、いつものようにユリカちゃんが勉強している後ろ姿が見えた。
「おはよう」
「おはよう」
目が合う。
今日に限って逸らしたい衝動と闘った。
「おじさん、1時過ぎに来るって」
「そうか」
目を上げると時計は11時を指していた。
「そっか。昼食はオーナーと食べるんだろ?」
「ううん」
ユリカちゃんが真っすぐおれを見上げた。
「サンジくんのご飯食べたいからって断った」
*
「面目ねェな…こんな普通の飯しか作れなくて」
おじさんからは”昼はおれが食べに連れてくから”と連絡が行っていたらしい。
そのことを繰り返し謝って残念がっているこの人に、これがいいのと言うこともなく、わたしは黙々とご飯を口に運んだ。
トマトソースのパスタ。アボカドのサラダ。いま出てきたこれはパンナコッタ。
私にとっては全然、特別なご飯なのに。
「デザートをどうぞ、プリンセス」
「ありがと」
どうしておいしいものはあっという間なんだろう。
楽しいことも。
しあわせな時間も。
これからの毎日はどれだけ長いんだろう。
「…ごちそうさまでした」
「…うん」
カウンターに食器を返す。
ほんとうは、返したくない。
いつもならとっくに寝てる時間だが、
今日に限って眠れないのは隣の部屋から音がするからだ。
いや、隣の部屋の音に耳を傾けてしまうから、というべきか。
バサバサと何かを振る音。
ファスナーを閉める音。
窓を開ける音。
何かを床に置く音。
今日、ユリカちゃんは帰る。
結局ユリカちゃんの父親は迎えに来なくて、オーナーの車に乗っていくことになったらしい。
帰った後の、彼女の生活。
誰か、いるんだろうか。
彼女の日々を見守る人は。
どんな部屋で過ごすんだろう。
なにを思って暮らすんだろうか。
おれがそれを案じる立場に無いことを分かってはいたが、どうにも気に掛かって落ち着かなかった。
結局一睡もできないままいつもの起床時間より早く体を起こす。
店に降りていくと、いつものようにユリカちゃんが勉強している後ろ姿が見えた。
「おはよう」
「おはよう」
目が合う。
今日に限って逸らしたい衝動と闘った。
「おじさん、1時過ぎに来るって」
「そうか」
目を上げると時計は11時を指していた。
「そっか。昼食はオーナーと食べるんだろ?」
「ううん」
ユリカちゃんが真っすぐおれを見上げた。
「サンジくんのご飯食べたいからって断った」
*
「面目ねェな…こんな普通の飯しか作れなくて」
おじさんからは”昼はおれが食べに連れてくから”と連絡が行っていたらしい。
そのことを繰り返し謝って残念がっているこの人に、これがいいのと言うこともなく、わたしは黙々とご飯を口に運んだ。
トマトソースのパスタ。アボカドのサラダ。いま出てきたこれはパンナコッタ。
私にとっては全然、特別なご飯なのに。
「デザートをどうぞ、プリンセス」
「ありがと」
どうしておいしいものはあっという間なんだろう。
楽しいことも。
しあわせな時間も。
これからの毎日はどれだけ長いんだろう。
「…ごちそうさまでした」
「…うん」
カウンターに食器を返す。
ほんとうは、返したくない。