Significance of parting
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「ほんとに買わなかったんだな」
「うん、いいの。見てるだけで楽しかったから」
図書館で知らない人に連れて行かれそうになった日、あの人が車を運転しながら言った。
「ここに居る間は、おれが全力でユリカちゃんを守る」
それを聞いて思い出した。
私がここに居られるのはあと半月だってこと。
今日で残り1週間。
結局何も買わずに、おやつにパンケーキをごちそうしてもらって、帰り道を歩いていた。
あの人の後ろを歩くと、意外となで肩なこととか、キレイな金色の髪とか、なのにちゃんと男の人らしいこととか、色んなことが目に入ってきてたまらなくなる。
「本当はこの道、夜は危ねぇから教えるつもりなかったんだけどなァ」
あの人が肩越しに振り返る。
「おれと一緒の時しか通らないでくれよ?」
そんなのあとちょっとしかないじゃない。
声に出すと震えそうだったから、うなづくだけにした。
最初に教えられた駅からお店への道は、駅からまっすぐ進んで大きな道を遠回りするコースだった。
今日、駅を出てすぐ右に曲がる道を教えられた。
線路沿いをしばらく歩くと店に着くらしい。
「…サンジくん、」
あの人が振り返る。今度は体ごと。
後ろから、電車が近づく気配。
「…好きだよ」
わざと電車が通る時を狙った。
あの人の口の端がふわっと上がりゆっくり頷く。
その最高に優しいほほえみが、絶望にも、希望にも見えた。
*
「おやすみなさい」
「おやすみユリカちゃん」
控えめな足音が階段を上がっていって、扉の閉まる音が聞こえた。
タバコに火をつけて窓の外に向かって吐き出す。
帰り道、ユリカちゃんがなんて言ったのかは聞こえなかった。
でも彼女の顔を見て理解した。
そしておそらくそれが、あの年頃の女の子特有の勘違いだと言うことも。
うなづいたおれを黙って追い越して歩き始めたユリカちゃんの背中をぼんやり見ながら考えた。
この子の気持ちが勘違いだとして、おれのこれはなんなんだろうか。
〈お前は 一族の“恥”だ!!!〉
あァなるほどな、と思った。
おれは、頼られてアテにされることに、飢えていたのかも知れねェ。
恋より更に最低だ。
これ以上近くにいると、自分の承認欲求を満たすために彼女の気持ちを利用しちまう。
…ちょうど潮時なんだろうな、これが。
「うん、いいの。見てるだけで楽しかったから」
図書館で知らない人に連れて行かれそうになった日、あの人が車を運転しながら言った。
「ここに居る間は、おれが全力でユリカちゃんを守る」
それを聞いて思い出した。
私がここに居られるのはあと半月だってこと。
今日で残り1週間。
結局何も買わずに、おやつにパンケーキをごちそうしてもらって、帰り道を歩いていた。
あの人の後ろを歩くと、意外となで肩なこととか、キレイな金色の髪とか、なのにちゃんと男の人らしいこととか、色んなことが目に入ってきてたまらなくなる。
「本当はこの道、夜は危ねぇから教えるつもりなかったんだけどなァ」
あの人が肩越しに振り返る。
「おれと一緒の時しか通らないでくれよ?」
そんなのあとちょっとしかないじゃない。
声に出すと震えそうだったから、うなづくだけにした。
最初に教えられた駅からお店への道は、駅からまっすぐ進んで大きな道を遠回りするコースだった。
今日、駅を出てすぐ右に曲がる道を教えられた。
線路沿いをしばらく歩くと店に着くらしい。
「…サンジくん、」
あの人が振り返る。今度は体ごと。
後ろから、電車が近づく気配。
「…好きだよ」
わざと電車が通る時を狙った。
あの人の口の端がふわっと上がりゆっくり頷く。
その最高に優しいほほえみが、絶望にも、希望にも見えた。
*
「おやすみなさい」
「おやすみユリカちゃん」
控えめな足音が階段を上がっていって、扉の閉まる音が聞こえた。
タバコに火をつけて窓の外に向かって吐き出す。
帰り道、ユリカちゃんがなんて言ったのかは聞こえなかった。
でも彼女の顔を見て理解した。
そしておそらくそれが、あの年頃の女の子特有の勘違いだと言うことも。
うなづいたおれを黙って追い越して歩き始めたユリカちゃんの背中をぼんやり見ながら考えた。
この子の気持ちが勘違いだとして、おれのこれはなんなんだろうか。
〈お前は 一族の“恥”だ!!!〉
あァなるほどな、と思った。
おれは、頼られてアテにされることに、飢えていたのかも知れねェ。
恋より更に最低だ。
これ以上近くにいると、自分の承認欲求を満たすために彼女の気持ちを利用しちまう。
…ちょうど潮時なんだろうな、これが。