雛菊のはなし
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「いよっ雛菊!」
お客さんの拍手が起こり、笑顔を返す。
「さぁて旦那様方、千年に一人の天才芸者・雛菊の歌と三味線はいかがっしたでしょう!!」
馴染みの太鼓持ちの声が響き、呼応してお客さんたちが囃し立てた。
「ナァ、雛菊さんよぉ、」
中でも一番酔っ払ったお客さんが進んでくる。
「あんたなんで芸者なんだい、あんたほどの器量よしなら遊女になればすぐ花魁だったろうに」
肩に手が回る。
「あんた、泊まりはしねぇのかい?」
ひゅっと喉が鳴った。
一気に周りの音が遠ざかる。
自分の呼吸が爆音に聞こえた。
「おーっと!こいつはいけねェ!雛菊の持病の癪が出ちまったようだ!!」
太鼓持ちの声だけが鼓膜を震わせて、私は少し自分を取り戻す。
「おれァこれから雛菊を担いで山2つ向こうの名医の所に届けなきゃならねェ!ちょうど部屋の支度も出来たようだし、ここいらでお暇させて貰いますぜ!本日はどうも!ありがとう~、ございました~!!」
太鼓持ちの声に合わせて深々とお辞儀をし、なんとか品を保ってお座敷を後にする。
「おいお前、大丈夫か!?」
ひゅうひゅうとなる喉を押さえながら廊下にへたり込む。
馴染みの太鼓持ちに担ぎ上げられた所で声が掛かった。
「雛菊ちゃん!?それにウソ八じゃねぇか!!」
「サン五郎!ちょうどいいとこに!悪いがこいつを、」
ウソ八が話しながら私を下ろして、また誰かの手に渡した。
誰だっけ、この人、誰にしたっていやだ、男の人に触られるの…!
ウソ八が走っていく。
次のお座敷まで時間がないのに、こんな、
「雛菊ちゃん、大丈夫」
頭上から声が掛かる。
「すぐ届けるからな」
引きつった呼吸を何度繰り返しただろう。その間に私の体は茶屋を抜けて花街の入口についた。
「おいクソマリモ!いるか!?」
「んだとこの、」
よく知った声が耳に届いて、私は初めて目を上げる。
「雛菊!?」
引ったくられるようにその人の腕に収まる。
「テメェ、こいつに何しやがった!?」
「するかアホ!!ウソ八に此処に運べって言われただけだ!」
頭の上でぎゃあぎゃあ言い合うその人の着流しをつかむ。
一瞬静かになって、さっきの人が何か言ったようだった。
私には自分の呼吸音に紛れて聞こえなかったけれど。
お客さんの拍手が起こり、笑顔を返す。
「さぁて旦那様方、千年に一人の天才芸者・雛菊の歌と三味線はいかがっしたでしょう!!」
馴染みの太鼓持ちの声が響き、呼応してお客さんたちが囃し立てた。
「ナァ、雛菊さんよぉ、」
中でも一番酔っ払ったお客さんが進んでくる。
「あんたなんで芸者なんだい、あんたほどの器量よしなら遊女になればすぐ花魁だったろうに」
肩に手が回る。
「あんた、泊まりはしねぇのかい?」
ひゅっと喉が鳴った。
一気に周りの音が遠ざかる。
自分の呼吸が爆音に聞こえた。
「おーっと!こいつはいけねェ!雛菊の持病の癪が出ちまったようだ!!」
太鼓持ちの声だけが鼓膜を震わせて、私は少し自分を取り戻す。
「おれァこれから雛菊を担いで山2つ向こうの名医の所に届けなきゃならねェ!ちょうど部屋の支度も出来たようだし、ここいらでお暇させて貰いますぜ!本日はどうも!ありがとう~、ございました~!!」
太鼓持ちの声に合わせて深々とお辞儀をし、なんとか品を保ってお座敷を後にする。
「おいお前、大丈夫か!?」
ひゅうひゅうとなる喉を押さえながら廊下にへたり込む。
馴染みの太鼓持ちに担ぎ上げられた所で声が掛かった。
「雛菊ちゃん!?それにウソ八じゃねぇか!!」
「サン五郎!ちょうどいいとこに!悪いがこいつを、」
ウソ八が話しながら私を下ろして、また誰かの手に渡した。
誰だっけ、この人、誰にしたっていやだ、男の人に触られるの…!
ウソ八が走っていく。
次のお座敷まで時間がないのに、こんな、
「雛菊ちゃん、大丈夫」
頭上から声が掛かる。
「すぐ届けるからな」
引きつった呼吸を何度繰り返しただろう。その間に私の体は茶屋を抜けて花街の入口についた。
「おいクソマリモ!いるか!?」
「んだとこの、」
よく知った声が耳に届いて、私は初めて目を上げる。
「雛菊!?」
引ったくられるようにその人の腕に収まる。
「テメェ、こいつに何しやがった!?」
「するかアホ!!ウソ八に此処に運べって言われただけだ!」
頭の上でぎゃあぎゃあ言い合うその人の着流しをつかむ。
一瞬静かになって、さっきの人が何か言ったようだった。
私には自分の呼吸音に紛れて聞こえなかったけれど。
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