雛菊のはなし
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ここは角屋。
多数の芸者が席を置く老舗の置屋だ。
1件目のお座敷を終えた私は、2件目の声が掛かるのを待ちながら今日の相方であるおロビちゃんに向き直った。
「おロビちゃん、この間は私のお座敷に代わりに出てくれてありがとう」
「あら、いいのよそんなこと」
「ううん、迷惑かけたもの。ごめんなさい」
「困ったときはお互い様よ」
「ありがとう、いずれ必ず返すから」
「…それじゃあ、聞いても良いかしら。それで不問といきましょう」
「うん、どうぞ」
「あの日はどこに行ったの?」
「…大門横のゾロ十郎って首代 のところ」
「知っているわ。随分腕が立つとか」
「そうね…強い人よ」
「あなたが男性に触れられたら、その人のところに連れて行かないとってウソ八が言っていたけれど」
「ええ、長い付き合いになるから…」
三味線に目を落とす。
初代の三味線を手にしたときから、あの人は私と共にいた。
「私の扱いを一番熟知しているのがあの人なのよ」
おロビちゃんが何か言おうと口を開いたところで、”おかあさん”から声がかかる。
「雛菊、おロビ、お呼びだよ」
「はい」
「今行きます」
おロビちゃんは扇子を、私は三味線を片手にお座敷へ向かう。
「今日はウソ八はいないのね」
「他の芸者さんと組んでいるそうよ」
「気をつけて行かなくちゃ」
お座敷へ上がると、少し見聞のあるお客さんはざわめくのだ。
「あれ?お嬢ちゃんが舞うんじゃないのかい?」
「はい、私が歌わせて頂きます」
「ずいぶん年若く見えるが」
「ええ、良ければお聞きくださいな」
三味線を構えおロビちゃんと目を合わせる。
おロビは5年前にこの花街に来た、私より10歳年上の芸者だ。
私は10年前から芸者の道を志して芸を磨いてきた。
実質の芸歴が倍ほども違うので、共にお座敷に着く時は私が地方 という演奏役を担い、おロビちゃんが立方 という舞踊役となる。
地方の方が長い芸歴が必要だからだ。
故に一般的には年上の芸者が地方をすることが多く、それを知っているお客さんは先ほどのような質問をされる。
一曲終わって礼をする。
興奮気味の拍手が響いた。
「アンタたち、すごいな!!」
「気に言って頂けましたか?こちらの雛菊さんは千年に一人の逸材と呼ばれる地方で、おロビさんは当代一の美形立方として名が知れているんですよ」
「あぁ、大満足だ」
「…あなた様も花魁をご指名されたいのでしたら、これほどの芸者を呼べるほうが箔が着きますぜ」
「そうだな、アンタ達、どこの所属だい?」
「角屋でございます」
「そうか、覚えておくよ」
「ありがとうございます」
多数の芸者が席を置く老舗の置屋だ。
1件目のお座敷を終えた私は、2件目の声が掛かるのを待ちながら今日の相方であるおロビちゃんに向き直った。
「おロビちゃん、この間は私のお座敷に代わりに出てくれてありがとう」
「あら、いいのよそんなこと」
「ううん、迷惑かけたもの。ごめんなさい」
「困ったときはお互い様よ」
「ありがとう、いずれ必ず返すから」
「…それじゃあ、聞いても良いかしら。それで不問といきましょう」
「うん、どうぞ」
「あの日はどこに行ったの?」
「…大門横のゾロ十郎って
「知っているわ。随分腕が立つとか」
「そうね…強い人よ」
「あなたが男性に触れられたら、その人のところに連れて行かないとってウソ八が言っていたけれど」
「ええ、長い付き合いになるから…」
三味線に目を落とす。
初代の三味線を手にしたときから、あの人は私と共にいた。
「私の扱いを一番熟知しているのがあの人なのよ」
おロビちゃんが何か言おうと口を開いたところで、”おかあさん”から声がかかる。
「雛菊、おロビ、お呼びだよ」
「はい」
「今行きます」
おロビちゃんは扇子を、私は三味線を片手にお座敷へ向かう。
「今日はウソ八はいないのね」
「他の芸者さんと組んでいるそうよ」
「気をつけて行かなくちゃ」
お座敷へ上がると、少し見聞のあるお客さんはざわめくのだ。
「あれ?お嬢ちゃんが舞うんじゃないのかい?」
「はい、私が歌わせて頂きます」
「ずいぶん年若く見えるが」
「ええ、良ければお聞きくださいな」
三味線を構えおロビちゃんと目を合わせる。
おロビは5年前にこの花街に来た、私より10歳年上の芸者だ。
私は10年前から芸者の道を志して芸を磨いてきた。
実質の芸歴が倍ほども違うので、共にお座敷に着く時は私が
地方の方が長い芸歴が必要だからだ。
故に一般的には年上の芸者が地方をすることが多く、それを知っているお客さんは先ほどのような質問をされる。
一曲終わって礼をする。
興奮気味の拍手が響いた。
「アンタたち、すごいな!!」
「気に言って頂けましたか?こちらの雛菊さんは千年に一人の逸材と呼ばれる地方で、おロビさんは当代一の美形立方として名が知れているんですよ」
「あぁ、大満足だ」
「…あなた様も花魁をご指名されたいのでしたら、これほどの芸者を呼べるほうが箔が着きますぜ」
「そうだな、アンタ達、どこの所属だい?」
「角屋でございます」
「そうか、覚えておくよ」
「ありがとうございます」