結末篇
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同期が死んだ。
それも、過労死で。
最近子供が生まれたばかりの奴だった。
同期には圧倒的に現場に出ている奴が多い。
特練員は俺だけだ。
あいつは、あいつの人生は、なんだったのか。
俺自身の生き方は、あいつに胸を張れるのか。
一度考え出すと、なにもかもを問わずにはいられず、思考が止まらなくなった。
断ち切るように酒を買い、部屋で一人で飲もうと思っていたが、
スペースの前を横切るときに、マナがいるのが見えた。
目が合って、
マナが、ハッとした表情をした後に、痛みをこらえる表情に変わった。
それで、一人で飲むのを辞めた。
こいつには何か伝わったのかもしれない。
勘の鋭いところがマナにはある。
無言で酒を飲み進めるうち、普段よりも早くマナが酔い始める。
揺れていた頭が不意に止まったと思うと、緩やかな動きで俺の肩に寄り添ってきた。
人の、体温。
その温度が、止まれなかった思考回路を一瞬で遮断したのがわかった。
「…こうしてて、いい?」
この温度を心底求めていたことに、与えられてから気づく。
礼を言われて、本来ならこっちが言うべきだろうと、かろうじて頭の片隅で考える。
片隅しか残っていないほど、圧倒的な安心感に支配された。
そのままの姿勢で酒を飲んでいると、マナが寝息を立て始めた。
「…おい」
「…んー…」
「…ちょっと待ってろ」
マナをソファに横にして、残っていた酒を呷り、グラスを洗う。
自分の荷物と酒を部屋に戻し、その隣のマナの部屋のカギと扉を開けておく。
いつも、マナが潰れた時にするのと同じ行動が、今日はじれったく感じる。
急いた気持ちでスペースに戻りマナを抱えて、マナの部屋の玄関に入り、扉を閉める。
玄関の横にはいつからか椅子が置かれるようになった。
ここにあると、マナの靴を脱がすのにも、俺自身が靴を脱ぐのにも好都合だ。
もしかしたら本人が酔いの中で気づいて置いたのかもしれない。
横向きに抱えたまま椅子に座り、膝の上にマナを乗せる。
靴を脱がせていると、マナが身じろぎした。
「…ゾロ…」
すり、と額を胸板に擦り付けられる。
決壊、だった。
*
ぼんやりした意識の中で、温かさに擦り寄る。
次の瞬間、外から強く力がかかって、一気に意識が覚醒した。
開いた目に映る、ゾロの服、腕、自分の部屋。
抱きしめられる力はどんどん強くなって、苦しいくらいだった。
部屋なら誰かに見られたりしないし大丈夫だよね、と思ったり、
腕の力の強さが、縋り付くようにも思えて心が痛んだり、しているうちに、
力が少し緩んでゾロの指が私の頬をなぞった。
目を上げると、痛々しいくらいの何かを湛えた瞳とぶつかる。
「嫌なら」
ゆっくりと距離を詰めながら。
「拒めよ」
拒めないよ、これ。
そう思いながら、目を閉じる。
その瞬間、唇は、私のものではなくなった。
それも、過労死で。
最近子供が生まれたばかりの奴だった。
同期には圧倒的に現場に出ている奴が多い。
特練員は俺だけだ。
あいつは、あいつの人生は、なんだったのか。
俺自身の生き方は、あいつに胸を張れるのか。
一度考え出すと、なにもかもを問わずにはいられず、思考が止まらなくなった。
断ち切るように酒を買い、部屋で一人で飲もうと思っていたが、
スペースの前を横切るときに、マナがいるのが見えた。
目が合って、
マナが、ハッとした表情をした後に、痛みをこらえる表情に変わった。
それで、一人で飲むのを辞めた。
こいつには何か伝わったのかもしれない。
勘の鋭いところがマナにはある。
無言で酒を飲み進めるうち、普段よりも早くマナが酔い始める。
揺れていた頭が不意に止まったと思うと、緩やかな動きで俺の肩に寄り添ってきた。
人の、体温。
その温度が、止まれなかった思考回路を一瞬で遮断したのがわかった。
「…こうしてて、いい?」
この温度を心底求めていたことに、与えられてから気づく。
礼を言われて、本来ならこっちが言うべきだろうと、かろうじて頭の片隅で考える。
片隅しか残っていないほど、圧倒的な安心感に支配された。
そのままの姿勢で酒を飲んでいると、マナが寝息を立て始めた。
「…おい」
「…んー…」
「…ちょっと待ってろ」
マナをソファに横にして、残っていた酒を呷り、グラスを洗う。
自分の荷物と酒を部屋に戻し、その隣のマナの部屋のカギと扉を開けておく。
いつも、マナが潰れた時にするのと同じ行動が、今日はじれったく感じる。
急いた気持ちでスペースに戻りマナを抱えて、マナの部屋の玄関に入り、扉を閉める。
玄関の横にはいつからか椅子が置かれるようになった。
ここにあると、マナの靴を脱がすのにも、俺自身が靴を脱ぐのにも好都合だ。
もしかしたら本人が酔いの中で気づいて置いたのかもしれない。
横向きに抱えたまま椅子に座り、膝の上にマナを乗せる。
靴を脱がせていると、マナが身じろぎした。
「…ゾロ…」
すり、と額を胸板に擦り付けられる。
決壊、だった。
*
ぼんやりした意識の中で、温かさに擦り寄る。
次の瞬間、外から強く力がかかって、一気に意識が覚醒した。
開いた目に映る、ゾロの服、腕、自分の部屋。
抱きしめられる力はどんどん強くなって、苦しいくらいだった。
部屋なら誰かに見られたりしないし大丈夫だよね、と思ったり、
腕の力の強さが、縋り付くようにも思えて心が痛んだり、しているうちに、
力が少し緩んでゾロの指が私の頬をなぞった。
目を上げると、痛々しいくらいの何かを湛えた瞳とぶつかる。
「嫌なら」
ゆっくりと距離を詰めながら。
「拒めよ」
拒めないよ、これ。
そう思いながら、目を閉じる。
その瞬間、唇は、私のものではなくなった。