朝５時。
普段より一時間早く目が覚める。
いつもと違うシーツの匂い。

念のためスマホを見るけど特に連絡はない。

…今もまだ、兄なんだ。
不意に思い出して、不思議な気分になる。

もう眠れそうにないのもあって、体を起こした。
シャワーも浴びたいし、6時半にスペースに帰りたいから、6時にはここを出ないと。

一階に降りて、洗面所から居間の方向を覗く。
渡り廊下のソファから、赤い頭が見えた。
近づいて見ると、昨日眠りのあいさつをした状態のままでシャンクスが寝ていた。
毛布をかけて寝ているところを見ると、よくあることなのかもしれない。

目の前にしゃがみこんで寝顔を眺める。
だいぶ、おじさんになったな。
皺が増えたような気がする。
一緒に暮らしてた時は底抜けに明るいところばかり見ていたけど、
きっとそうじゃない夜もたくさんあったんだろう。

私にはそういう側面を見せずに、ただ守り育ててくれたことは、例え私たちが兄弟であってもなくても、消えることはない。

昨日、懐かしいベットの中でそう考えていた時、初めてシャンクスに感謝する気持ちが浮かんできた。
複雑な環境だったけど、確かに愛されていた。
持ってる力の全てで守ってくれていた。

これからはもう少し家に帰ってあげよう。

そこまで考えて、高校生の反抗期のまま成長していなかった自分が、ようやく半人前になった気がした。

「シャンクス、起きて」

ちゃんとお礼が言いたいから。
それで、少しスッキリして、現実に立ち向かいたいから。