顔面に平手打ちを決めて、少しのけぞった懐に飛び込む。
スキンシップが多くて、仲の良すぎる兄弟だと言われていたことをふと思い出す。

ずるい。
あれだけ悩んで、あれだけ泣いたのに。
愛情でした、って言われたら、あの悩みと涙はどこに行けばいいんだ。

悔しいから、更に鳩尾に一発お見舞いしておいた。
頭上から、ぐえ、と呻き声。

シャンクスの手が、私の頭をなでる。
一気に子供のころにタイムスリップしたような感覚に陥る。
子供のころならすぐにこみ上げていた涙が、今は抑えられるっていうだけで。

26歳の妹が43歳の兄に縋って泣く図を想像して、一気に恥ずかしさがこみ上げた。
お互い家庭を持っててもおかしくない年だ。
シャンクスの胸を押して離れようとしたら、首元と腰が押さえつけられている。

「ちょっと、シャンクス、」
「いいじゃねえか、8年間兄妹らしいことして来なかったんだからよ」
「…これ兄妹らしいって言わないと思うよ」
「子供のころはよくあっただろ」

確かにその通りで、泣きたいときや恐かったときは
忙しい父の代わりに、いつもシャンクスが抱きしめてくれていた。

私は、この人に、守られて育まれてここまで来た。
例えお互いを兄弟だと思っていなくても、その事実が変わることはないんだと、急に鮮やかに思い知った。