金曜の夜、夕食も終わってスペースでお酒を飲んでいた。
1人減り2人減り、気付くとローと二人だけになる。

「…明日の夜空いてるか」
「今のところ何もないけど」

ローの医療用ピッチが鳴り出す。オンコールだ。
「そのまま空けとけ」とだけ言ってバタバタとスペースを後にする後姿を見送る。
お医者さんの奥さんは大変だろうな、作った料理を食べてもらえないことも多々あるだろう。

片付けついでにスペースの掃除をして、寝ようとしたところで誰かが帰ってくる音がした。
足音からしてゾロだと予想して振り返る。
確かにゾロだった。
でも、予想外の光景が目に飛び込んできて、心臓がぎゅっと締まる。
背中に女の人。

「…おかえり」
「おう」
「…どうしたのその人」
「同期だ。上司に潰されて拉致されそうになってたから回収した。」
「…そうなんだ」
「家の場所、スマホで探したんだけど壊れててよ」

それはMapの故障じゃないよ、あなたの方向感覚だよ。
…あれ、でも警察官って外泊とか厳しんじゃなかったっけ。
そう考えながらも、変に呼吸は浅くなる。

「外泊大丈夫なの？」
「あァ、まあ、たぶん」

女の人をゆっくりソファに降ろす。
…このひと、大会の時に見かけた気がする。
ゾロと何か言い合ってなかったかな。

なんだか胸の奥が、すごく痛い。

「スペース使っていいか？」
「え？」
「俺の部屋に連れ込むのは色々と問題になる」
「…それはそうだね。でも…」

いくら住人しか来ないとは言え、スペースに女性一人寝かせておくのは、安全とは言えない。
きっとゾロはこの人についてここで夜を過ごすつもりだろう。
想像して、首の後ろが逆立つ感じがした。
明日の朝、スペースにこの二人が眠っているところ、見たくない。

「…ちょっと待ってて」