「なァマナー」
「ん？」
「サボ何年か前、ここじゃないとこに住んでたことなかったか？」
「あ、俺もそれ憶えてるぞ！なんか秘密基地みたいなめっちゃ狭いとこだろ！」
「うーん、もしかしてここが火事で工事してた時かなあ」
「そうなのか？」
「私とビビは一時的にシェアハウスに住んでたけど、そこ女性専用だったし」
「なんか急に思い出してよ」
「あーあそこまた行きたいなー！屋根裏とかあったもんな！」
「いろんな意味で男のロマンだったよな」
「…へー」

以前、火事の修繕をしていた時、どうしてもサボの部屋が用意できなくて、その家を貸した。
私の父がセカンドハウスとして建てた家だ。
その構造と最低限の設備から、シャンクスは「愛人ハウス」と呼んで辞めない。

すごく狭い家だけど、その中にわざわざダブルベッドを置くセンス。
お得意先の施工会社の社長を思い出して、頭を振りかぶる。



今日はビビからのリクエストでカレーだった。
野菜を選んでいると、知った声に名前を呼ばれる。
「オゥ？どこのかわいこちゃんかと思ったらー、マナちゃんじゃないの？」
「あ！お久しぶりですー！」
「スーパー元気そうで何よりだぜ！」
「フランキーさんもお元気そうですね！」

セカンドハウスを作った張本人で、ものすごく繊細でセンスのいい、天才的な施工技術を持つ人だ。
ただ。

「いやー、コーラ買いに来たんだけどよー！財布に30円しか入ってなくてよ！！」

壊滅的に金銭管理ができない人でもある。

「…何本買いに来たんですか」
「おっもしかして払ってくれるのー！？」
「ツケで良ければ」
「スーパーありがとぅー！！今度カラダで返しに行くぜぇ！」
「あ、そういえばお願いしたい修繕あったんですよねー」

「そうだ、あのセカンドハウスってまだ手元にあんのかい？」
「…ええ、ありますよ」
「あんたのお父さんから珍しく直接指示されてよぉ」
「…なんて言われたんですか？」
「オレが不倫したときに、あったらいいと思うもの全部入れてくれって」
「…その指示であの家作ったんですか！？」
「おうよ！」
「さっすがフランキーさん、天才。っていうか、変態。」
「お！最高の誉め言葉じゃねェか！！！」

あったらいいと思うもの全部って言われて、あんな狭い空間に実現するなんて。
ヤバすぎる。感性がすごい。

「でもフランキーさんの体の大きさだったら、あの家自体狭すぎませんか？」
「それがいいってもんよ！」
「え？」
「惚れた女とずっと近くに居られるんだぜェ？」
「ああ、なるほど」

そもそもロフトとか上がれるんだろうか。