過去編
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こいつが料理するのを見ることはあまりない。
オレが帰宅したときにはもう料理はできてるし、朝も起きた時点で盛り付けまで済んでる。
改めて間近で見ると、ずいぶん手際がいいと思い知る。
初めから工程が決まっていて、流れるように手だけ動かしているような。
そうやって立ち働いているのを見ながら飲むのも悪くねェ。
「今度はなに刻んでんだ」
「明日の朝のスープ」
キャベツと玉ねぎのみじん切りを山のように重ねながら、こいつがひっそりと鼻歌を歌うのに気づいた。
本人は無心に包丁を動かしているから、無意識のものか。
素を垣間見たようで気分がよくなる。
「なァ」
「ん?」
「いつも一人で料理してんのか」
「うん、そうだけど、なんで?」
「いや別に」
マナが手元からちらりと目を上げて一瞬微笑んだ。
「変なゾロ」
その瞬間、自分でも不可解な衝動が腹の底から突き上げてきて、
歯をくいしばって耐えた後、酒を飲み下した。
マナに目をやるとさっきまでと同じように手元に集中している。
このところ、こういうことが多い。
マナがスペースで寝ちまった時が始まりだったかもしれない。
あれ以来、時々こみ上げる何かをやり過ごして、それを抑えこむようにこいつの頭に手を置いている。
やり過ごしているものの激しさに比べれば、頭に手を置く程度のことは許されるだろ。
マナが片手で首筋をもみ始めた。
「肩でも凝ってんのか?」
「うん、今日家事代行だったんだけど、そっちでもかなり包丁使ったから」
「…揉んでやろうか」
「…や、大丈夫」
「遠慮はいらねえぞ」
「だって絶対痛いもん」
頭と地続きとはいえ、首に直に触ることになる。
自分から提案しておいてなんだが、自制の自信はない。
干された杯に気づいたマナが、静かに酒をつぎ足していく。
「家事代行って毎週やってんのか?」
「そうだね、曜日が変わったりクライアントが変わったりするけど」
「そんなにコンスタントに入るもんなのか」
「うん、意外とね。二つの現場を掛け持ちしたりもするし」
「掛け持ちってなんだ」
「例えば、午前中に掃除の家事代行して、移動して午後からベビーシッターするとか」
「そんなのもあんだな」
「でも、掛け持ちの上に5歳の男の子の相手とかだと正直疲れるかな」
「鍛え足りねえんじゃねえのか」
「それは…ゾロに比べれば、みんなそうでしょう」
湧き上がる優越感を口の端に乗せながら、注がれた酒に手を伸ばす。
オレが帰宅したときにはもう料理はできてるし、朝も起きた時点で盛り付けまで済んでる。
改めて間近で見ると、ずいぶん手際がいいと思い知る。
初めから工程が決まっていて、流れるように手だけ動かしているような。
そうやって立ち働いているのを見ながら飲むのも悪くねェ。
「今度はなに刻んでんだ」
「明日の朝のスープ」
キャベツと玉ねぎのみじん切りを山のように重ねながら、こいつがひっそりと鼻歌を歌うのに気づいた。
本人は無心に包丁を動かしているから、無意識のものか。
素を垣間見たようで気分がよくなる。
「なァ」
「ん?」
「いつも一人で料理してんのか」
「うん、そうだけど、なんで?」
「いや別に」
マナが手元からちらりと目を上げて一瞬微笑んだ。
「変なゾロ」
その瞬間、自分でも不可解な衝動が腹の底から突き上げてきて、
歯をくいしばって耐えた後、酒を飲み下した。
マナに目をやるとさっきまでと同じように手元に集中している。
このところ、こういうことが多い。
マナがスペースで寝ちまった時が始まりだったかもしれない。
あれ以来、時々こみ上げる何かをやり過ごして、それを抑えこむようにこいつの頭に手を置いている。
やり過ごしているものの激しさに比べれば、頭に手を置く程度のことは許されるだろ。
マナが片手で首筋をもみ始めた。
「肩でも凝ってんのか?」
「うん、今日家事代行だったんだけど、そっちでもかなり包丁使ったから」
「…揉んでやろうか」
「…や、大丈夫」
「遠慮はいらねえぞ」
「だって絶対痛いもん」
頭と地続きとはいえ、首に直に触ることになる。
自分から提案しておいてなんだが、自制の自信はない。
干された杯に気づいたマナが、静かに酒をつぎ足していく。
「家事代行って毎週やってんのか?」
「そうだね、曜日が変わったりクライアントが変わったりするけど」
「そんなにコンスタントに入るもんなのか」
「うん、意外とね。二つの現場を掛け持ちしたりもするし」
「掛け持ちってなんだ」
「例えば、午前中に掃除の家事代行して、移動して午後からベビーシッターするとか」
「そんなのもあんだな」
「でも、掛け持ちの上に5歳の男の子の相手とかだと正直疲れるかな」
「鍛え足りねえんじゃねえのか」
「それは…ゾロに比べれば、みんなそうでしょう」
湧き上がる優越感を口の端に乗せながら、注がれた酒に手を伸ばす。