過去編
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忘れ物を取りに戻ると、マンションの入口から全速力で走り出てくるマナを見かけた。
声をかけようとする前に自転車に飛び乗ってどこかへ走り去っていったことに首をかしげながら玄関を入ると、
マナの部屋から、ほかの住人が出てきた。
なぜ、お前がこの部屋から?
「おい、」
「…」
「無視してんじゃねえよ」
「なんだ」
「なんでお前がこの部屋から出てくる?」
「…招かれない限りはこの部屋には入れないだろ」
「…ほぉ、じゃあその招いた張本人がたった今全速力で去ってったのは、なんでなんだろうな」
強い何かを押し殺す顔だ。
「関係ねえだろ」
「…ああそうだな、お前があいつとどうなろうと知ったことじゃねえけど」
肩を掴みぐっと壁に押しやる。
「泣かせたらどうなるか、わかってんだろうな」
込めた怒気にはかろうじて耐えられるようだ。
まァ、それぐらいがマナの相手として最低ラインだが。
手を放すついでに軽く小突くと、立ち去りながらそいつは言った。
「自分が泣かせてないとでも思ってんのか」
「あァ?」
「…」
それ以上言葉を重ねずにそいつは自室に戻っていった。
オレが、泣かせてる?
いや、そりゃあ、ガキの頃は構いすぎて泣かせたこともあったが、むしろ最近は泣かせるほどの関わりを持ててない。
…一番最後に泣かせたのは。
養父が、死んだ時だ。
ハタチの時に養父に言われて戸籍に入った。
マナのことは、あいつが生まれた時から知っていたから、家族になれるとわかって嬉しかった。
ただ。
あいつが大きくなるにつれて。
妹として見ることに耐えられなくなる瞬間が増えていった。
だから、戸籍を抜けようと思った。
このままだといつか、決定的に傷つけることになる。
少なくとも、戸籍を抜ければ、マナがオレを遠ざけたくなった時にやりやすい。
そう考えるほど、自分で自分の制御が効かなくなっていた。
でも、それを聞いたマナは、今まで見たことがないほど泣いた。
父親が死んだときもそこまで泣かなかったんじゃないか、というくらいに。
そして、ある瞬間から、全く泣かなくなった。
泣けなくなる呪いでも自分にかけたかのように。
声をかけようとする前に自転車に飛び乗ってどこかへ走り去っていったことに首をかしげながら玄関を入ると、
マナの部屋から、ほかの住人が出てきた。
なぜ、お前がこの部屋から?
「おい、」
「…」
「無視してんじゃねえよ」
「なんだ」
「なんでお前がこの部屋から出てくる?」
「…招かれない限りはこの部屋には入れないだろ」
「…ほぉ、じゃあその招いた張本人がたった今全速力で去ってったのは、なんでなんだろうな」
強い何かを押し殺す顔だ。
「関係ねえだろ」
「…ああそうだな、お前があいつとどうなろうと知ったことじゃねえけど」
肩を掴みぐっと壁に押しやる。
「泣かせたらどうなるか、わかってんだろうな」
込めた怒気にはかろうじて耐えられるようだ。
まァ、それぐらいがマナの相手として最低ラインだが。
手を放すついでに軽く小突くと、立ち去りながらそいつは言った。
「自分が泣かせてないとでも思ってんのか」
「あァ?」
「…」
それ以上言葉を重ねずにそいつは自室に戻っていった。
オレが、泣かせてる?
いや、そりゃあ、ガキの頃は構いすぎて泣かせたこともあったが、むしろ最近は泣かせるほどの関わりを持ててない。
…一番最後に泣かせたのは。
養父が、死んだ時だ。
ハタチの時に養父に言われて戸籍に入った。
マナのことは、あいつが生まれた時から知っていたから、家族になれるとわかって嬉しかった。
ただ。
あいつが大きくなるにつれて。
妹として見ることに耐えられなくなる瞬間が増えていった。
だから、戸籍を抜けようと思った。
このままだといつか、決定的に傷つけることになる。
少なくとも、戸籍を抜ければ、マナがオレを遠ざけたくなった時にやりやすい。
そう考えるほど、自分で自分の制御が効かなくなっていた。
でも、それを聞いたマナは、今まで見たことがないほど泣いた。
父親が死んだときもそこまで泣かなかったんじゃないか、というくらいに。
そして、ある瞬間から、全く泣かなくなった。
泣けなくなる呪いでも自分にかけたかのように。