ナミがニヤニヤしながらこちらを見る。

「ちょっとーマナったらモテキじゃないのー？」

盛り上がる空気と裏腹に少し冷える心。

「どうしたの？」

それを察したのかビビが心配そうにのぞき込んでくる。

「うーん、恋かあ、と思って」
「何かあった？」
「うん、しばらく恋ってしてないからなあ」
「まあ、マナの今の生活だったらねぇ」
「最後に恋人がいたのはいつ？」
「…大学生の時。しかも実習忙しすぎて自然消滅」
「えっそれからずっと彼氏いないの？」
「彼氏と呼べる関係性にはなってない」
「なるほどね」
「そもそも前の職場は暮らすだけで精いっぱいの忙しさだったし」
「じゃあ今はいいタイミングじゃない？」

そうなのだろうか。
思えば、18歳で父を亡くしてから、ずっと走り続けていたように思う。
できるだけ早く、自分の力で生活出来るように。
大学に入ってからは、授業でもバイトでも、培養士になることだけに力を注いで、いざ就職してからは一件でも多く培養を成功させることだけを考えて毎日を乗り越えてきた。

確かに、ようやく自分の生活に気を配れる余裕ができたのかもしれない。

「…恋愛って余裕から生まれるんだねぇ」
「そうかもしれないわね」
「前なら誰かとご飯に行く時間も惜しかったもん、人としてどうかと思うけど」
「そういう状況なら、恋愛に発展する前に終わりそうね」

「ねえ、マナは正直誰がいいって思ってるの？」
「え？」
「３人いて好きに選べるとしたら誰を選ぶ？」

…考えたことなかった。

誰を、選ぶ。何を、基準に。

「…それって、相手を選ぶっていうより、だれといるときの自分を選ぶかって話になるのかも」

「興味深い話ね」

ロビンが目配せをする。

「恋愛は結局相手ではなく、相手に写った自分を見ているということかしらね」
「わあ、ロビン、深いわね」
「でもなんとなくわかる気がするわ」

「うん、私は守られたいのか、支えたいのか、対等に立ちたいのか、を選ぶような感じよね」
「うーん、あたしはどれも取りたいけど」
「ナミったら欲張りね」