悪辣なペシミストになるしかなかった。
愚かな俺はそれで少しでも他人との接触を減らせると思った。
俺は、徹底的に悪人に「成る」しかなかった。
それで傷つかない人が増えるから。感情移入されずに済むから。……いや、どれも違う気がする。自分を露悪させることで誰かから信頼を寄せられるのを拒んでた。
骨身に染み込ませていたそのクセは抜けず、今でも咄嗟に出るのは皮肉と罵倒。攻撃は最大の防御なんとやら、俺は讒謗罵詈で己の身を護っていた。脆く今にも錆付きそうな盾で必死に。
人は優劣をつけたがる。自分において価値を定めたがる。他人に見出される事によって初めて自分がちゃんと生きてる事に気付かされる。……きっと、したり顔で言ってる俺だってそう。
だから如才無い人の方が生きやすい世の中では、俺みたいな落第者は爪弾きされる。1度堕落してしまったらもう戻れないと思ってた。

いつまでもドン底から抜けだせない日々と泥のように蓄積する現実から消えたいという希死念慮。いつからずっと囚われていただろうね。呼吸さえ憚られるほど、痛みに気づかないほど俺はずっとなにも感じないように生きてきた。……そんな顔で見なくていいよ、今は窮屈じゃないから。

あんたたちと出会って俺は変わらざるを得なかった。
それは眩しすぎる光に順応する為の必要行為だった。それで漸く俺は自分の傷に気付いた。膿んだような傷口に。
……なんで救急箱持ってきてんの、怪我してないって。比喩だよ比喩。

今では痂皮であるあんた達によってほぼ治ってる。だから俺はお前らに感謝してるよ。ずっと、ずっと、悪態付きながら一緒に居続けてきたあんたらに。……俺だって問題行為起こしてイナジャパすぐ離脱する筈だったんだから。こんな長い付き合いになるとは思わなかった。地の俺を見た上であんたらが俺を受け入れてくれたら、ちゃんと俺のことを話そうと思って。だから、……話せて良かったとは言わないけど後ろめたさはあったから。そうだよ、俺は『成れなかった悪人』だ。だから、中途半端なわけ。勧善懲悪の世界ならまずぶった斬られただろうね。それくらい自分がなんなのか解らなかった。

…………なに、笑ってんの、人が仮にも真面目な話してんのに。
そのままでいればいいんじゃない、なんて1番投げやりな解答寄越さないでよ。ほんとやめてくんない？

俺だって今の自分が1番なんだかんだ好きなんだから。