失われた最終兵器
「日本と韓国、ほぼ互角の試合運びとなっています!さぁ、先制点をあげるのは何方なのかー!!」
そんな実況の声に反応するかの様に不自然に背後へと下がるペク。
脳裏をふと過るのは試合直前にウンス監督に再確認の如く話しかけられた時の事。
「日本と韓国は互角」。よって使命を果たすためには「“調整”が必要になってくる」。
日本側がオリオンの使徒をスタメンとして出てきていなかったのは一目で気づいた。
つまり、自分の手で日本をここで敗退へと追いやる事。それがペクの使命。
そんなウンス監督の指示に丁寧に返答していたペクだが、中々進展しない試合状況にかぶりを振った。
そしてあろうことか自分達、メンバーの力のみで対処できると判断してしまう。
(“調整”などいらない。レッドバイソンの力、見せてやるぜ…!)
鼻にキツイほどシワを寄せ、日本代表達を睨む彼の瞳にはどのような手法で日本を蹴落とすか。それだけがただ映り込むのみだった。
「ペク!!責めるぞ!!」
笛の音と共に響いたキャプテン・ソクの自分を呼ぶ声にペクは、強気に返答しながら共に前線へと邁進していく。横からイ・ドンヒョクもついてくるのを五感で悟る。ソク、ペク、イ。この3人が前線に上がったなら。あの連携技だ。
「特攻 バッファロートレイン!!」
フィールドを強く踏め込めば火が点火したかの様に炎が生じ、彼等が通った芝は一面炎の海へと変わっていく。
火の威力は段々と力を増していき、やがて炎の闘牛列車が姿を成して現れた。
猪ではなく闘牛だが、まさに猪突猛進。一気に突破をかけようと日本陣地に踏み込んでいく。
そして、その闘牛の荒々しさ。間近で見れば気後れしそうな程迫力があった。
闘牛は対角線上にいた氷浦をまず蹴散らそうと押しかけてきた。氷浦は怯まずに間合いを詰めていく。闘牛のタックルを直撃で食らったら相当なダメージになってしまう。観客が、控えメンバーが緊迫して見守る中。_________氷浦はあっけない程軽やかに闘牛をかわしたのだ。
❀
「しまった、抜かれた…!」
突破を許してしまった氷浦。アメジストの綺麗な瞳を見開かせて当惑している中、背後に近づいてきた鬼道が唸る。そんな鬼道を他所に氷浦の反応は“どこか動揺しているよう”に見えた。
「あれっ?」と何故か抜かれた事よりも、猛攻を避けられた事の方が不思議でならない様なそんな仕草を取る。
立ち尽くす氷浦を抜き去ったペクは左右、とフェイントをかけながらゴールへと迫りつつある。円堂が防御の姿勢へと転化した。
「さーて、このペク様を止められるかな!?」
ゴール前でそう自信満々に吠えたペクは高くボールを蹴り上げた。
グッ、と腰を屈め、大地を強く蹴り上がれば、フィールド上にボッと炎が点火したかの様に燃え広がる。熱く、強く、目が眩みそうな光をも放ちながらペクは宙返りを見せた。
ペクのオーバーライド必殺技・レッドブレイクだ。
「あぁ、レッドブルね」
切羽詰まったベンチの空気を読まず、そう恍けてみれば「はぁ?」と無下な返しが来た。
赤い雄牛という意味を持つレッドブル。韓国チームにまさにピッタリではないか。
超余談だが缶のEOEには雄牛がデザインされてるらしい。
(いや、だってあの必殺技と名前似てない?なんかもうちょっと柔らかな反応出来ねぇの?)
普段、いかに自分が素っ気なさすぎる態度を取っているくせに何故か不貞腐れる大河。
更には「あれ、15歳以下飲料禁止なんですよ、大河君」とバカ真面目な坂野上が一言。
曇りなき純粋な瞳で見られ、柄にもなく押し黙ってしまう大河。
「なぁ、あれを15歳以下が飲んだ時ってどーすればいいの」
「飲んだことあるんですか、大河君!?う、うそどうしたらいいんだろう……」
「へぇ~、バッカじゃねぇの!!!俺はまだ飲んだ事ねぇぜ、そんな事も知らなかったんだぁ!」
「なんで嬉々としてんだよ、バカストライカー」
君たち、サッカーどこいった。
❀
ペクの渾身のレッドブレイクは円堂と対峙する前に燃え尽きる事となる。
ボールの軌道上に俊敏に割り込んだ蒼き疾風。言わずもがな、風丸が躍り出た。
「させるかぁ!!」
忍者を連想させる様な幾つもの分身を生み出し、フィールドを勢い良く蹴り上げる。
力強い脚力をバネに激しく自身を回転させ、大空をバックに竜巻を派生させた。
蒼い突風がフィールド上で勢いよく巻き上げる。その竜巻は読めない軌道を描きながらペクを飲み込んだ。
「スピニングフェンス!!」
竜巻が霽れた時にはサッカーボールは風丸の左足に吸い付くかのように。
日本はボール奪還に再び成功する。明日人の瞳がキラリ、と興奮で光り輝いた。
「風丸さんの新技!!」
まるで自分事のように喜ぶ明日人。風丸はそんな明日人に緩やかな笑みを浮かべ、ボールを円堂へと渡す。
ここから一気に日本の攻めが展開する。風丸の功績によって彼等の士気が一気に跳ね上がった。
一方、シュートを止められた張本人は茫然自失、と言った素振り。
「なに…?俺のシュートを、止めただと……!?」と一言漏らすのみだった。
彼にとっては異例の事態であったようだ。どれほど自身の技を自負していたのか。
ソクやイも呆気にとられたような顔を張り付かせながら瞬きするのみ。
なるほど、韓国側はこの試合展開を上手く読み込めてないらしい。
「みんな!まだまだ始まったばかりだ!!落ち着いていくぞ!!」
持ち前の強靭な精神力と天性のリーダーシップを用い、円堂が背中越しでメンバーを鼓舞する。
円堂の掛け声も相まって完全に日本の布陣は燃えていた。円堂の掛け声に皆、「「おう!!」」と力強く応え、持ち場に走って戻って行く。ガッツポーズまで作っている者もいて、なんとなく雰囲気は良好。
韓国の猛攻に焦りはしたものの、なんとか回避できた。
これからどんな快進撃が繰り広げられるか期待と緊張が高まる。
そんな実況の声に反応するかの様に不自然に背後へと下がるペク。
脳裏をふと過るのは試合直前にウンス監督に再確認の如く話しかけられた時の事。
「日本と韓国は互角」。よって使命を果たすためには「“調整”が必要になってくる」。
日本側がオリオンの使徒をスタメンとして出てきていなかったのは一目で気づいた。
つまり、自分の手で日本をここで敗退へと追いやる事。それがペクの使命。
そんなウンス監督の指示に丁寧に返答していたペクだが、中々進展しない試合状況にかぶりを振った。
そしてあろうことか自分達、メンバーの力のみで対処できると判断してしまう。
(“調整”などいらない。レッドバイソンの力、見せてやるぜ…!)
鼻にキツイほどシワを寄せ、日本代表達を睨む彼の瞳にはどのような手法で日本を蹴落とすか。それだけがただ映り込むのみだった。
「ペク!!責めるぞ!!」
笛の音と共に響いたキャプテン・ソクの自分を呼ぶ声にペクは、強気に返答しながら共に前線へと邁進していく。横からイ・ドンヒョクもついてくるのを五感で悟る。ソク、ペク、イ。この3人が前線に上がったなら。あの連携技だ。
「特攻 バッファロートレイン!!」
フィールドを強く踏め込めば火が点火したかの様に炎が生じ、彼等が通った芝は一面炎の海へと変わっていく。
火の威力は段々と力を増していき、やがて炎の闘牛列車が姿を成して現れた。
猪ではなく闘牛だが、まさに猪突猛進。一気に突破をかけようと日本陣地に踏み込んでいく。
そして、その闘牛の荒々しさ。間近で見れば気後れしそうな程迫力があった。
闘牛は対角線上にいた氷浦をまず蹴散らそうと押しかけてきた。氷浦は怯まずに間合いを詰めていく。闘牛のタックルを直撃で食らったら相当なダメージになってしまう。観客が、控えメンバーが緊迫して見守る中。_________氷浦はあっけない程軽やかに闘牛をかわしたのだ。
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「しまった、抜かれた…!」
突破を許してしまった氷浦。アメジストの綺麗な瞳を見開かせて当惑している中、背後に近づいてきた鬼道が唸る。そんな鬼道を他所に氷浦の反応は“どこか動揺しているよう”に見えた。
「あれっ?」と何故か抜かれた事よりも、猛攻を避けられた事の方が不思議でならない様なそんな仕草を取る。
立ち尽くす氷浦を抜き去ったペクは左右、とフェイントをかけながらゴールへと迫りつつある。円堂が防御の姿勢へと転化した。
「さーて、このペク様を止められるかな!?」
ゴール前でそう自信満々に吠えたペクは高くボールを蹴り上げた。
グッ、と腰を屈め、大地を強く蹴り上がれば、フィールド上にボッと炎が点火したかの様に燃え広がる。熱く、強く、目が眩みそうな光をも放ちながらペクは宙返りを見せた。
ペクのオーバーライド必殺技・レッドブレイクだ。
「あぁ、レッドブルね」
切羽詰まったベンチの空気を読まず、そう恍けてみれば「はぁ?」と無下な返しが来た。
赤い雄牛という意味を持つレッドブル。韓国チームにまさにピッタリではないか。
超余談だが缶のEOEには雄牛がデザインされてるらしい。
(いや、だってあの必殺技と名前似てない?なんかもうちょっと柔らかな反応出来ねぇの?)
普段、いかに自分が素っ気なさすぎる態度を取っているくせに何故か不貞腐れる大河。
更には「あれ、15歳以下飲料禁止なんですよ、大河君」とバカ真面目な坂野上が一言。
曇りなき純粋な瞳で見られ、柄にもなく押し黙ってしまう大河。
「なぁ、あれを15歳以下が飲んだ時ってどーすればいいの」
「飲んだことあるんですか、大河君!?う、うそどうしたらいいんだろう……」
「へぇ~、バッカじゃねぇの!!!俺はまだ飲んだ事ねぇぜ、そんな事も知らなかったんだぁ!」
「なんで嬉々としてんだよ、バカストライカー」
君たち、サッカーどこいった。
❀
ペクの渾身のレッドブレイクは円堂と対峙する前に燃え尽きる事となる。
ボールの軌道上に俊敏に割り込んだ蒼き疾風。言わずもがな、風丸が躍り出た。
「させるかぁ!!」
忍者を連想させる様な幾つもの分身を生み出し、フィールドを勢い良く蹴り上げる。
力強い脚力をバネに激しく自身を回転させ、大空をバックに竜巻を派生させた。
蒼い突風がフィールド上で勢いよく巻き上げる。その竜巻は読めない軌道を描きながらペクを飲み込んだ。
「スピニングフェンス!!」
竜巻が霽れた時にはサッカーボールは風丸の左足に吸い付くかのように。
日本はボール奪還に再び成功する。明日人の瞳がキラリ、と興奮で光り輝いた。
「風丸さんの新技!!」
まるで自分事のように喜ぶ明日人。風丸はそんな明日人に緩やかな笑みを浮かべ、ボールを円堂へと渡す。
ここから一気に日本の攻めが展開する。風丸の功績によって彼等の士気が一気に跳ね上がった。
一方、シュートを止められた張本人は茫然自失、と言った素振り。
「なに…?俺のシュートを、止めただと……!?」と一言漏らすのみだった。
彼にとっては異例の事態であったようだ。どれほど自身の技を自負していたのか。
ソクやイも呆気にとられたような顔を張り付かせながら瞬きするのみ。
なるほど、韓国側はこの試合展開を上手く読み込めてないらしい。
「みんな!まだまだ始まったばかりだ!!落ち着いていくぞ!!」
持ち前の強靭な精神力と天性のリーダーシップを用い、円堂が背中越しでメンバーを鼓舞する。
円堂の掛け声も相まって完全に日本の布陣は燃えていた。円堂の掛け声に皆、「「おう!!」」と力強く応え、持ち場に走って戻って行く。ガッツポーズまで作っている者もいて、なんとなく雰囲気は良好。
韓国の猛攻に焦りはしたものの、なんとか回避できた。
これからどんな快進撃が繰り広げられるか期待と緊張が高まる。