それが、はじまり。
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注文が終わり店員がメニューを下げると、再びエマが口を開いた。
「ねえ、雪花ちゃんは、何中 ?」
なにちゅう、とはなんだろう。趣味だろうか。ゲーム中毒、とか。特に中毒になっている趣味はないが。
雪花が首を傾 げると、エマは違う質問をしてきた。
「どこの学校?」
名前を教えた上に、学校まで教えるのは嫌だったが、教えたくないです、と言えば場が悪くなるだろう。
「……えっと、上鷺 女子……だけど」
しぶしぶ学校名を告げると、エマの顔が輝いた。
「うっそ。サギジョ? あそこ、制服めっちゃ可愛いよね〜。いいな~」
「うん。まあ」
あいまいに答えたが、雪花も実は制服で選んだクチだった。中学校の制服が無地のブレザーとスカートだったので、可愛い制服への憧れは強かった。
「あ、じゃあ、頭いいんだ〜」
「そんなことないよ。普通だから!」
これは本当だ。学校名が知られているので偏差値が高いと思われがちなのだが、下でもなければ上でもない。そして雪花の成績自体もほぼ真ん中あたりだった。普通にも程がある。
「あ、お金持ちかぁ! 私立だもんね」
雪花は内心で、ひぃっと声を上げる。
「違う違う」
雪花はエマに向かって両手をぶんぶんと振った。
やめて。マジで違う。父親は平凡なサラリーマンで、母親は週三でパートタイマーのごく一般的な家だ。私立だからと言って、どこもかしこもがお金のかかる学校なわけではない。こんな人たちに金持ちだと思われたら、タカられてしまう!
雪花は焦 ったが、エマの返事は『そうなの?』と軽かった。
「だったらウチも行けるかな〜、サギジョ」
「うんうん。行ける行ける」
エマの成績は知らないし、家庭環境も知らない。雪花はかなり適当に相槌 を打った。
「そっかぁ。いいなぁ、サギジョ。でも女子校だからな~。つまんないかな〜」
エマはそう言ってチラリと龍宮寺堅を見る。
龍宮寺堅は隣の佐野万次郎と話をしていてエマの視線に気付いていなかったが、雪花はそれでピンときた。
エマは、龍宮寺堅が好きなのか。
どうして、とか、どこが、とか疑問は尽きないが、好きになったらソリコミだろうが辮髪 だろうがタトゥーだろうが関係ないに違いない。
(なんだ。エマちゃん、恋する女の子なんだ)
エマにちょっと親近感が湧 いた。
あれ、でも、ちょっとおかしい。
「ねえ、エマちゃん。上鷺 女子はさ、中高はあるけど大学はないよ?」
「うん。知ってる〜。中高はエスカレーターだから、雪花ちゃん、受験いらないんだよね〜。羨 まし〜」
エマの言っていることが変だ。エスカレーターだから受験がいらない?
「……え?」
「ん……?」
お互いの視線が合う。
「……もしかして、だけど。……まさか、エマちゃん、……中学生……?」
「……うん。ウチは中学だけど、雪花ちゃん……、もしかして、高校生、……なの」
雪花とエマは、ええっ、と同時に声を上げた。
「嘘……。エマちゃん、大人っぽい」
「ええっと。雪花ちゃんは、童顔……だね」
他の人からも童顔と言われたことはあるが、まさか中学生に間違えられるとは。悲しい。
「あの……。もしかして。その、りゅ、龍宮寺君と佐野君は」
「ウチら、みんな中学生だよ〜」
雪花は思わず龍宮寺堅を見た。嘘だ。中学生でこのガタイ? 身長なんて何センチあるのだろう。
「ん? 何だ?」
あまりにまじまじと見てしまったので、龍宮寺堅がこちらに気付いた。
「ううん。何でも。身長、高いなぁ~って思って!」
「おう。小学生のころからタッパはあったからな」
親からの遺伝パターンだろうか。中学生ということは、まだ伸びる可能性があるのか。恐ろしい。
ふっとその隣に目をやりそうになったが踏 み留 まる。龍宮寺堅を身長が高いと言ったあとで佐野万次郎を見たら、『君、背が低いね』と言っているようなものではないか。
そう。別に目前の男の背が低いわけではない。龍宮寺堅が高すぎるのだ。
〈続く〉
「ねえ、雪花ちゃんは、
なにちゅう、とはなんだろう。趣味だろうか。ゲーム中毒、とか。特に中毒になっている趣味はないが。
雪花が首を
「どこの学校?」
名前を教えた上に、学校まで教えるのは嫌だったが、教えたくないです、と言えば場が悪くなるだろう。
「……えっと、
しぶしぶ学校名を告げると、エマの顔が輝いた。
「うっそ。サギジョ? あそこ、制服めっちゃ可愛いよね〜。いいな~」
「うん。まあ」
あいまいに答えたが、雪花も実は制服で選んだクチだった。中学校の制服が無地のブレザーとスカートだったので、可愛い制服への憧れは強かった。
「あ、じゃあ、頭いいんだ〜」
「そんなことないよ。普通だから!」
これは本当だ。学校名が知られているので偏差値が高いと思われがちなのだが、下でもなければ上でもない。そして雪花の成績自体もほぼ真ん中あたりだった。普通にも程がある。
「あ、お金持ちかぁ! 私立だもんね」
雪花は内心で、ひぃっと声を上げる。
「違う違う」
雪花はエマに向かって両手をぶんぶんと振った。
やめて。マジで違う。父親は平凡なサラリーマンで、母親は週三でパートタイマーのごく一般的な家だ。私立だからと言って、どこもかしこもがお金のかかる学校なわけではない。こんな人たちに金持ちだと思われたら、タカられてしまう!
雪花は
「だったらウチも行けるかな〜、サギジョ」
「うんうん。行ける行ける」
エマの成績は知らないし、家庭環境も知らない。雪花はかなり適当に
「そっかぁ。いいなぁ、サギジョ。でも女子校だからな~。つまんないかな〜」
エマはそう言ってチラリと龍宮寺堅を見る。
龍宮寺堅は隣の佐野万次郎と話をしていてエマの視線に気付いていなかったが、雪花はそれでピンときた。
エマは、龍宮寺堅が好きなのか。
どうして、とか、どこが、とか疑問は尽きないが、好きになったらソリコミだろうが
(なんだ。エマちゃん、恋する女の子なんだ)
エマにちょっと親近感が
あれ、でも、ちょっとおかしい。
「ねえ、エマちゃん。
「うん。知ってる〜。中高はエスカレーターだから、雪花ちゃん、受験いらないんだよね〜。
エマの言っていることが変だ。エスカレーターだから受験がいらない?
「……え?」
「ん……?」
お互いの視線が合う。
「……もしかして、だけど。……まさか、エマちゃん、……中学生……?」
「……うん。ウチは中学だけど、雪花ちゃん……、もしかして、高校生、……なの」
雪花とエマは、ええっ、と同時に声を上げた。
「嘘……。エマちゃん、大人っぽい」
「ええっと。雪花ちゃんは、童顔……だね」
他の人からも童顔と言われたことはあるが、まさか中学生に間違えられるとは。悲しい。
「あの……。もしかして。その、りゅ、龍宮寺君と佐野君は」
「ウチら、みんな中学生だよ〜」
雪花は思わず龍宮寺堅を見た。嘘だ。中学生でこのガタイ? 身長なんて何センチあるのだろう。
「ん? 何だ?」
あまりにまじまじと見てしまったので、龍宮寺堅がこちらに気付いた。
「ううん。何でも。身長、高いなぁ~って思って!」
「おう。小学生のころからタッパはあったからな」
親からの遺伝パターンだろうか。中学生ということは、まだ伸びる可能性があるのか。恐ろしい。
ふっとその隣に目をやりそうになったが
そう。別に目前の男の背が低いわけではない。龍宮寺堅が高すぎるのだ。
〈続く〉
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