それが、はじまり。
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「誰かいいコ、いるかなー」
公園通りの坂を堅と上りながら、エマはあたりをきょろきょろと見回す。さっさと見つけて万次郎のもとへ戻らなくてはいけない。
けれどあまり妥協もできなかった。
エマには作戦がある。
この間の花垣武道の誘惑作戦は失敗したが、今度はけっこうイケるかも、と思っている。
そう、万次郎に彼女作戦だ。
つい最近、万次郎が気に入って友達にした花垣武道にはヒナタという彼女がいる。ここで万次郎にも彼女ができたとなれば、堅だってきっと『オレも……』と彼女を作る方向になるのではないか。
そうなれば、彼女候補は堅の一番近くにいる女子。つまりエマ本人だ。
そのためにも、万次郎の相手は、自分と同じタイプであってはならない。エマの友達や知り合いと言えば、自分と似たりよったりのギャルばかり。万次郎に用意したコを堅が好きになってしまったら、元も子もないのだから。
「ところでよ、エマってマイキーの好みのタイプとか知ってんのか? 女の話とか、オレ聞いたことねーんだけど」
堅がエマに声をかける。
「ううん。知らないよ」
堅の問いに軽く答えながらも、エマは雑踏から目を逸 らさない。
そう。本気で何も知らない。テレビに映る芸能人も、漫画雑誌に載っているグラビアモデルにも、マイキーが何か反応をしたのを見たことがない。
「なんだそれ。そんないい加減でいいのかよ」
「大丈夫だって」
何が大丈夫なのかはエマにも分からないが、とりあえずそこそこ可愛いければいいだろう。
そんなやり取りをしているうちに、エマは一人の女の子に目を留 めた。
「あ、あのコいいかも! ウチ行ってくるね。ドラケンもあとから来て!」
そう言ってエマは駆 け出した。
* * *
「ねぇー、そこのコー、ウチらとご飯しないー?」
呼び止めたのは、黒髪のロングヘアーにフリルが少し入った白いワンピースという服装の、いわゆる清楚 系と言われる少女だった。
「……私……、ですか?」
怪訝 そうにエマを見る少女に、少しドキリとする。
少女は、遠目で見たよりもキレイな女の子だった。アイドルやってます、とでも言われたら、たぶん信じてしまうだろう。女の自分でも可愛いと思う。
(大丈夫。絶対ドラケンのタイプじゃない)
そう言い聞かせて、説得にかかる。なんとしてもこのコを連れて行こう。早く戻らなければ交差点に置き去りにしてきたマイキーがヤバい。他のコを探し直す時間はないのだ。
「エマぁ、ナシついたのかー?」
あとから来て、とエマが言ったとおり、堅は少し間を置いてから現れた。
女の子をナンパするのに万次郎ではなく堅を連れてきたのは、自分が選んだ子に文句をつけられるのが面倒だったためと、単純にエマが堅と二人きりになりたかったからだ。
──が、目の前の少女が堅の顔を見たとたん、ビクッと肩を震わせたのを見て、それが失敗だったことを悟 った。
* * *
〈続く〉
公園通りの坂を堅と上りながら、エマはあたりをきょろきょろと見回す。さっさと見つけて万次郎のもとへ戻らなくてはいけない。
けれどあまり妥協もできなかった。
エマには作戦がある。
この間の花垣武道の誘惑作戦は失敗したが、今度はけっこうイケるかも、と思っている。
そう、万次郎に彼女作戦だ。
つい最近、万次郎が気に入って友達にした花垣武道にはヒナタという彼女がいる。ここで万次郎にも彼女ができたとなれば、堅だってきっと『オレも……』と彼女を作る方向になるのではないか。
そうなれば、彼女候補は堅の一番近くにいる女子。つまりエマ本人だ。
そのためにも、万次郎の相手は、自分と同じタイプであってはならない。エマの友達や知り合いと言えば、自分と似たりよったりのギャルばかり。万次郎に用意したコを堅が好きになってしまったら、元も子もないのだから。
「ところでよ、エマってマイキーの好みのタイプとか知ってんのか? 女の話とか、オレ聞いたことねーんだけど」
堅がエマに声をかける。
「ううん。知らないよ」
堅の問いに軽く答えながらも、エマは雑踏から目を
そう。本気で何も知らない。テレビに映る芸能人も、漫画雑誌に載っているグラビアモデルにも、マイキーが何か反応をしたのを見たことがない。
「なんだそれ。そんないい加減でいいのかよ」
「大丈夫だって」
何が大丈夫なのかはエマにも分からないが、とりあえずそこそこ可愛いければいいだろう。
そんなやり取りをしているうちに、エマは一人の女の子に目を
「あ、あのコいいかも! ウチ行ってくるね。ドラケンもあとから来て!」
そう言ってエマは
* * *
「ねぇー、そこのコー、ウチらとご飯しないー?」
呼び止めたのは、黒髪のロングヘアーにフリルが少し入った白いワンピースという服装の、いわゆる
「……私……、ですか?」
少女は、遠目で見たよりもキレイな女の子だった。アイドルやってます、とでも言われたら、たぶん信じてしまうだろう。女の自分でも可愛いと思う。
(大丈夫。絶対ドラケンのタイプじゃない)
そう言い聞かせて、説得にかかる。なんとしてもこのコを連れて行こう。早く戻らなければ交差点に置き去りにしてきたマイキーがヤバい。他のコを探し直す時間はないのだ。
「エマぁ、ナシついたのかー?」
あとから来て、とエマが言ったとおり、堅は少し間を置いてから現れた。
女の子をナンパするのに万次郎ではなく堅を連れてきたのは、自分が選んだ子に文句をつけられるのが面倒だったためと、単純にエマが堅と二人きりになりたかったからだ。
──が、目の前の少女が堅の顔を見たとたん、ビクッと肩を震わせたのを見て、それが失敗だったことを
* * *
〈続く〉