いつか朝焼けに会えるまで

セレーネは自分の部屋に戻るとベッドに倒れ込んだ。
「ブルーはいいな……」
そう思わず呟いてしまい、はっと口を押える。
自分は今、何を言った?
ブルーのことを羨ましいだなんて思ってはいけないことだ。後継者を見つけた彼を妬ましい、羨ましいとは思ってはいけない。
だって彼はようやく休めるのだから。ミュウにすべてを捧げてきた彼が見たことがないくらい生き生きとしていたのだ。喜ばしいと思わなくてはいけない。
そうセレーネは自分に言い聞かせた。
しかし心のどこかで黒いものが落ちていくのを見ないふりをした。

それからブルーはなんども自分の後継者、ジョミー・マーキス・シンの様子を何度も見に行き、そのたびに嬉しさをハーレイやリオ、イオ、フィシスやセレーネに語った。
みんなブルーの行動に苦笑しつつもようやく自分の太陽を見つけた彼に微笑ましく思っているのかあんまり口を出さないでいた。
そのたびにセレーネの心のどこかで黒いものが落ちて行った。
だってセレーネには後継者がいない。
自分がいなくなったらミュウの守護者となるべき人材がいなくなるのだ。それが悲しくつらい。
「ブルーが羨ましいだなんて……」
セレーネは呟くと船外へとでて、アタラクシアへと向かった。
アタラクシアは夜だった。そこには多くの子供たちがSD体制の真実を知らずに暮らしており、今は眠っている。
「いつか現れるといいな。私の希望となりえる子が……」
セレーネは自分の願望を思わず呟いてしまう。
ブルーに嫉妬してしまう自分を抑えながら、ミュウを守るプロテクター・セレーネ。
彼女の夜をはらい、希望となる子に出会えるまであと4年の月日が必要となる。
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