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「貴志君、買い物をお願いできないかしら?」
塔子にそんなことを言われたのはお鍋がおいしい季節のことだった。
「全く。なぜ私が出なければいけない」
ニャンコ先生がぶつくさ言いながら外に出る。
「塔子さんに頼まれたんだよ。それに最近先生太り気味なんだからちょっとは出ないと」
「何─! このプリティな私を捕まえて太っているだと!」
先生がプリプリと怒る。
太り気味なのは事実だと夏目は思う。このままだと抱っこしたときに腰がやられるのではないかと思ってしまう。
(そんなこと言ったらまた貧弱だなんだといわれるんだろうけど……)
内心でこっそりと思う夏目。
「それに良いものを買ってもいいって言ってくれたんだ。先生も一緒に食べないか?」
「いいものってなんだ?」
「内緒だよ。でもおいしいんだって」
「……変なものだったら承知しないぞ」
先生はそう言ってさっさと歩きだす。
「あ、こら。おい、待て! 先生!」
リードで先生をつないでいた夏目は急なペースについていけなくなり、慌てて追いかけていった。

先生を追いかけていったせいだろうか早めに目的地についた。
肉屋だ。塔子に肉を頼まれたのだ。
夏目は頼まれたものを買い、ついでにあるものを頼んだ。
コロッケだ。
塔子に買って食べるとおいしいわよと言われたので買ってみたのだ。
(茂さんは買い食いするといいかもと言っていたっけな……)
夏目はコロッケを買った後、思わずかじりついた。
「おいしい……」
思わず呟く。
「おい、夏目。私にも渡せ」
「はいはい」
二つ買ったうちのもう一つを渡す。
「どれどれ。うまい。うむ買ったかいはあった」
ニャンコ先生も満足そうだ。
買ったものをその場で食べるだなんて今までしたことがないし、買い物を頼まれるのもなかった。
だから頼まれごとをしてコロッケを食べるそんなひと時が幸せななつめだった。


お礼ss第三段。コロッケを食べる夏目が書きたくて書いたもの。揚げたては特に美味しいですよね!
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