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これは二人がまだ結婚して間もないころの話。
リディアは伯爵邸のベランダから月を見ていた。
「そうしていると月の妖精みたいだね」
リディアは声に振り向くと最愛の夫がそこにいた。
「エドガー……」
彼は後ろからリディアを抱きしめる。
「君が消えちゃうかと思ったよ」
「私は消えないわよ。……約束するわ」
「うん。そうだね。そのはずなんだけどね……。月に照らされた君が美しくて、この世のものじゃない気がしたんだよ。また失うのかと思った……」
エドガーの言葉に心がちくりと痛む。
彼は多くのものを失いすぎた。両親、地位や今までの暮らし、苦労を共にしてきた仲間。やっと手に入れたリディアまで失いたくないと思っているのだろう。
(私は何があってもあなたのそばにいるわ)
そう誓うように手を添えた。
プリンスはエドガーの中にいて彼を苦しめている。
いつか。いつか彼をプリンスから解放させてあげたい。それがリディアの願いだ。
「リディア。踊ろう」
エドガーが手を取る。
「ちょ、エドガー!」
リディアは慌てた。
それを意に介さずにエドガーは踊りだす。
踊りだすと楽しくなってきた。舞踏会のように儀礼的ではない、ただ楽しむだけのダンス。
「ふふっ」
リディアは微笑んだ。
「上手だ」
エドガーも微笑む。
月に照らされながら二人は軽やかに踊っていたのだった。


エドリディ。まだ色々起こる前の新婚時代。
甘々になれたでしょうか……?
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