拍手

「お母さま?」
幼いリディアは昼寝から目を覚まして母親を探した。
嫌な夢を見たからだ。
「あら。リディア。目を覚ましたのね」
母親の真綾が部屋に入ってくる。
「お母さまあ……」
リディアは真綾に抱き付いた。
「あらあら。甘えん坊さんね」
弟が出来てお姉さんらしくなったリディアはめったに甘えなくなったのに珍しいことだ。
「私、お母さまが死んじゃう夢を見たの……」
リディアは半べそだ。
「……お母さまは死なないわ」
内心の動揺を隠して真綾は言った。
「うん。そうだよね……」
リディアは呟いた。
「ええ。絶対に死なない。さあもう少しお休み」
真綾はそういうと眠りの神の力を借りてリディアを強制的に眠りにつかせた。
「やっぱりあの人との子だわ……。予知夢を見るなんて……」
部屋を出ると真綾は呟いた。
真綾には病魔が潜んでいた。これはいずれ彼女をむしばみ死に至らせるものだ。
「おばあさま……琴……もう少しだけ私に力を貸して……」
せめて息子と娘が自分を覚えていられるくらいまでは生きたい……。
真綾はそう願った。
(あなたはどんな大人になるんでしょうね?)
でもリディアが大人になるまでは生きられまい。
(あがなえない運命ならそれまでです。ですがあの子たちには何かを残したい……)
そう真綾は強く強く思ったのだった。




リディアカードの創造者、リディアの幼いころとその母の話。
真綾さんは自分が長くは生きられないことを察知していますが、もう少しだけ生きたいと願っています。作中での琴さんは真綾さんの妹で美空の直接の先祖です。
2/6ページ
スキ