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「ねえ。春って知っているかい?」
いつもの日課のごとくブルーの部屋を訪れると唐突にそんなことを聞かれた。
「なんです? 藪から棒に」
怪訝そうにジョミーが訊いた。
「ふふっ。老人の興味本位だよ。それで春は知っているかい?」
「地球(テラ)に住んでいたころにある季節の一種ですよね。地軸を一定の方向に傾けたまま太陽の周りを公転している影響で気温に変化が起きてできるのだとか……」
エラから学んだ知識を思い出しながら答える。
「正解。エラからよく学んでいるね。怒られながらもめげずに頑張っているね」
「どうせ僕は怒られてばかりですよ」
そう言われてぷうと膨れる。
何度集中力が足りないと言われただろうか。
「ふふっ。怒られてばかりだけどちゃんと成長していることは僕は分かっているからね」
そう言って頭をなでる。
「それでね、春なんだけど」
ジョミーははっとする。
春の話題をこの人はしていたのだったと。
「地球(テラ)のある国では季節をことのほか大事にしたようだよ。特に春は様々な花が咲いて綺麗だったようだ。ごらん」
ブルーが手を握ってくる。
そこには薄紅の綺麗な花が咲いていた。木に咲くその花はとてもきれいだった。
「その国の人たちはこの花を大事にしていたようだ。桜と呼んでいたようだ」
「桜……。綺麗ですね……」
「ああ。他にも春特有の花があって大事にしていたようだ。……いつかこの目で見てみたいものだ」
ブルーはそう言った。
「見れますよ」
「ジョミー」
「絶対に見れますって。僕がブルーを地球(テラ)に連れて行きますから」
ジョミーは励ますようブルーの手を握った。
「……ありがとう」
ブルーはほほ笑んだ。
「だから大丈夫です……」
ジョミーは自分に言い聞かせるようにそう言った。
二人とも分かっていた。ブルーの命はそこまで持たないことを。地球(テラ)は遠いことを。
だけどブルーの寿命の問題など見ないふりしてそんな約束をしたのだった。


SS第四弾。地球へ…の話です。長編とは別物の話。
ブルーとジョミーの間には寿命の問題は欠かせないなと思い、こんな暗い話に。ソルジャーとその後継者。二人はブルーの命の期限が迫っていたからこそ出会えた。そう思います。
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