頼ればよかったのに

アーミンが私を突き落とそうとした。
おそらく私を選んだのは怒らないからだろう。
それにしても馬鹿な人。
兄のクロウにしがみつきながら私は思った。
アーミンがエドガーさまに特別な想いを抱いていたのは周知の事実だった。
エドガーさまもアーミンを大切にしていた。
でも、エドガーさまの想いは恋心ではなかった。
だからこそアーミンはプリンスの呪縛から解き放たれた後、ただの主従に戻るのを恐れたのだろう。
馬鹿なアーミン。
その恐れをひとりで抱え込まなければよかったのに。
私にだけでも言ってくれればよかったのに。
誰かを頼ればよかったのに。
やっと引き上げられた私が見たのはアーミンが崖下に落ちていく瞬間だった。
「アーミン!」
キャロラインさまの悲痛な声が響く。
私はそのとき決めた。キャロラインさまを泣かせることはすまいと。
アーミンのように自分の主を泣かせるような真似は絶対にしない。
そう私は固く決意したのだった。
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