『先生！　夏目さんがまた嘘をついています！』
小さな女の子が手を上げて言った。
『嘘じゃない。だってそこに……』
幼いころの美結花は窓の外を差していった。
そこには彼女にしか見えない大きな顔の妖怪がいた。
『だって何も見えないじゃん』
『いつも嘘ばっかり言っているよね』
『親がいないから気を引きたいのよ……』
くすくすと子供たちが会話をする。
（嘘じゃないのに……。私は嘘をついていない。…どうしてわかってくれないの？）
美結花はそう思った。
「──嘘じゃない……。私は嘘をついていない……」
ぶつぶつと美結花は呟いた。
「……美結花！」
肩を揺さぶられて美結花は目を覚ました。
「あ、小枝……」
最初に目に入ったのは小枝だった。
「そうよ。大丈夫？　魘されていたけど……」
心配そうな顔でこっちを見てくる。
「だ、大丈夫……」
そう言った時だった。
「うわあああああ！」
悲鳴が聞こえた。
それで眠りから覚めてぼんやりとしていた美結花の頭は完全に覚醒した。
「なんだ、むかしの夢か……」
悲鳴を上げたのは夏目だった。
「夏目貴志、夏目美結花」
怒った顔で先生がこちらを見てくる。
「やば……」
顔が真っ青になった。
美結花は授業中にも関わらず寝てしまったのだった。