夏目の従妹が主人公。原作設定。黒髪に翡翠の瞳の美少女です。
第四十三話 影茶碗と妖しいものの名
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『そうか。レイコはもうこの世におらぬのか』
「はい、ずいぶん前に」
「鏡は持っていてください」
それぞれ声をかける。
「じゃあ帰ります」
「お元気で」
手を振って帰ろうとする。
『──ふむ。世話になったなレイコの孫らよ。その道を下っていくと人里に出るよ』
道を教えてくれた。
『さらば。その道をまっすぐじゃぞ』
そう言って手を振ってくれた。
「ねえ、アオクチナシがレイコさんを妖と間違えたようにレイコさんもアオクチナシを人だと思ったのね……」
「ああ、そうだろうな……」
夏目はため息をついた。
このことでレイコが妖を嫌いになったりしなかっただろうか。
「分からないわ。でも妖であることを隠したりはしていなかったものね……」
「……そうだな」
夏目と美結花はしばらく黙り込んだ。
「あ、見て。美結花」
「おい、見ろ。夏目」
佐貝と先生が上を見上げる。
「え」
「わあ……!」
目に映ったのはきれいな花が咲いている木だった。
「この花、おばばの……」
「髪につけていた……」
呆然と見上げる。
「ああ、祓って貰ったって言っていたわね」
佐貝が頷く。
「人のくせにむちゃくちゃな女だ」
ニャンコ先生がそう言った。
「ああ。そうだったな。この樹をレイコさんが祓ってやったのは──」
夏目が言葉を噤んだ。
そのあとは言わなくてもわかっていた。
おばばが妖だと知った後、レイコは悪霊を祓ったのだ。
そういう不器用なやさしさしかレイコは示せなかったのだろう。
「「ただいま~」」
藤原家に帰宅すると塔子がしゃがんで何かをのぞき込んでいた。
「塔子さん、どうしました?」
「何かありましたか?」
「貴志君、美結花ちゃん。ほら見て。知らないお茶碗が落ちていて……。ほら、誰のかしら……」
そのお茶碗の色には見覚えがあった。影茶碗の色だった。
『気まぐれに身代わりとして災厄を──…』
佐貝の説明が頭に浮かぶ。
きっと夏目の左肩が無事だったのはこのおかげだったのだろう。
(貴志を守ってくれてありがとう……)
美結花は感謝の気持ちを茶碗に捧げる。
「──俺のです。俺のなんです。とても大事な──」
自分の身代わりになったと理解したのだろう。夏目はそっと茶碗を手のひらに乗せた。
きっとこういう出会いもある。誰に気づかれなくとも出会ってしまえば大切なものになっていくのだ──。
「はい、ずいぶん前に」
「鏡は持っていてください」
それぞれ声をかける。
「じゃあ帰ります」
「お元気で」
手を振って帰ろうとする。
『──ふむ。世話になったなレイコの孫らよ。その道を下っていくと人里に出るよ』
道を教えてくれた。
『さらば。その道をまっすぐじゃぞ』
そう言って手を振ってくれた。
「ねえ、アオクチナシがレイコさんを妖と間違えたようにレイコさんもアオクチナシを人だと思ったのね……」
「ああ、そうだろうな……」
夏目はため息をついた。
このことでレイコが妖を嫌いになったりしなかっただろうか。
「分からないわ。でも妖であることを隠したりはしていなかったものね……」
「……そうだな」
夏目と美結花はしばらく黙り込んだ。
「あ、見て。美結花」
「おい、見ろ。夏目」
佐貝と先生が上を見上げる。
「え」
「わあ……!」
目に映ったのはきれいな花が咲いている木だった。
「この花、おばばの……」
「髪につけていた……」
呆然と見上げる。
「ああ、祓って貰ったって言っていたわね」
佐貝が頷く。
「人のくせにむちゃくちゃな女だ」
ニャンコ先生がそう言った。
「ああ。そうだったな。この樹をレイコさんが祓ってやったのは──」
夏目が言葉を噤んだ。
そのあとは言わなくてもわかっていた。
おばばが妖だと知った後、レイコは悪霊を祓ったのだ。
そういう不器用なやさしさしかレイコは示せなかったのだろう。
「「ただいま~」」
藤原家に帰宅すると塔子がしゃがんで何かをのぞき込んでいた。
「塔子さん、どうしました?」
「何かありましたか?」
「貴志君、美結花ちゃん。ほら見て。知らないお茶碗が落ちていて……。ほら、誰のかしら……」
そのお茶碗の色には見覚えがあった。影茶碗の色だった。
『気まぐれに身代わりとして災厄を──…』
佐貝の説明が頭に浮かぶ。
きっと夏目の左肩が無事だったのはこのおかげだったのだろう。
(貴志を守ってくれてありがとう……)
美結花は感謝の気持ちを茶碗に捧げる。
「──俺のです。俺のなんです。とても大事な──」
自分の身代わりになったと理解したのだろう。夏目はそっと茶碗を手のひらに乗せた。
きっとこういう出会いもある。誰に気づかれなくとも出会ってしまえば大切なものになっていくのだ──。
