夏目の従妹が主人公。原作設定。黒髪に翡翠の瞳の美少女です。
第五話 蛍の妖
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「あの妖の事。キヨって呼ぶことにしたから」
次の朝、歯を磨いていると夏目が言った。
「何でキヨ?」
どこから出てきたと思った。
「名前がないっていうからさ。なんとなく?」
「そう……」
もう突っ込まないことにした。
その日、夏目は眠そうだった。体育でもふらふらしていたし、授業中に寝ていた。
「大丈夫? 貴志」
「ちょっと、キヨが眩しくて……」
「眩しい?」
どういう意味だ。それは?
「暗闇で光るから地味に眩しくて……」
暗闇で光る。何かを彷彿とさせる。だけどそれが何なのか思い出せない。
学校から帰ると美結花はTシャツとデニムのスカートに着替えて沼に行くことにした。
「美結花は蛍が好きね~」
「だって見たことなくて……」
一度も蛍を見たことがないからどのようなものなのか見てみたかったのだ。
「そう。そんなあなたに言い伝えが一つ。斑も知っているわよね?」
「ああ」
二人は交互に伝説を教えてくれた。
昔、この森に住む山神の一人が人間の女と恋をして、夜中にこっそりと逢瀬を重ねていた。その時、深い闇の中この沼の蛍たちが夜道を照らしてやったという。山神はその礼に命短い蛍たちを妖の姿に変えてやった。蛍たちは喜んでその多くが沼を旅立って行ってしまった。
「今この地の蛍はその時、蛍としてこの沼に残ったものの子孫だと言われている」
「へえ」
「ほう」
「まあただの言い伝えだけどね」
(山神と人間の娘の恋はどうなったのだろうか。人の命は短い。死に別れて心を壊したりしなかったのだろうか。あの妖みたいに──)
かつて人と恋をして死に別れて心を壊した妖を見たことがある。人と妖。人と神。異なる種族同士の恋は上手くいってもいつか終わりが来ると突き付けられた出来事だった。あれから二年たった今でも心からの叫びが焼き付いている。
「──ああやっぱりまだ蛍はいないか……」
沼について夏目が言った。
「貴志。何かいる」
「ああ。美結花。何かいるな」
「何かいるな」
「何かいるわね」
四人は巨大な口の妖が池にいるのを見つけた。
「──おい。人もいるぞ。妖がいることも気づかずにのんきなことだ」
ニャンコ先生が言った。
「本当だな……。ん?」
大きな口の妖が男の人の方に向かった。
「あぶないっ!」
夏目が男の人を押し倒す。
「おわっ!」
男の人はびっくりした。
しかし妖は男の人を素通りしていく。
「あの妖は人を襲わないのよ」
佐貝がこっそりと教えてくれる。
「大丈夫かい?」
男の人が夏目に訊いてくる。
「…すみません。石につまずいて──……」
夏目ははっとした顔をした。
「はは。元気だね」
声を聞いて美結花も分かった。
(この男の人。昨日の人じゃないですか──!!)
キヨと友人だったという男だ。美結花は本当に妖がもう見えないのか知りたくて夏目の背中を突っつく。
「…あの、この沼…。何かいますか?」
突っつかれた夏目が訊く。
「? 蛍のほかに? さあ……鮒くらいかな。蛍もまだ出ないみたいだね。また出直すよ」
そう言ってにっこり笑う。
「──そうですね」
「また出直してきます」
二人はそう言った。
やがて男の人は去って行った。
キヨが茂みから姿を現す。男の人を見つめる彼女の手は震えていた。その手を二人は繋いであげた。その手から思いが伝わってくる。幸せになって欲しいと──。
それは一途で純粋な思い──。
次の朝、歯を磨いていると夏目が言った。
「何でキヨ?」
どこから出てきたと思った。
「名前がないっていうからさ。なんとなく?」
「そう……」
もう突っ込まないことにした。
その日、夏目は眠そうだった。体育でもふらふらしていたし、授業中に寝ていた。
「大丈夫? 貴志」
「ちょっと、キヨが眩しくて……」
「眩しい?」
どういう意味だ。それは?
「暗闇で光るから地味に眩しくて……」
暗闇で光る。何かを彷彿とさせる。だけどそれが何なのか思い出せない。
学校から帰ると美結花はTシャツとデニムのスカートに着替えて沼に行くことにした。
「美結花は蛍が好きね~」
「だって見たことなくて……」
一度も蛍を見たことがないからどのようなものなのか見てみたかったのだ。
「そう。そんなあなたに言い伝えが一つ。斑も知っているわよね?」
「ああ」
二人は交互に伝説を教えてくれた。
昔、この森に住む山神の一人が人間の女と恋をして、夜中にこっそりと逢瀬を重ねていた。その時、深い闇の中この沼の蛍たちが夜道を照らしてやったという。山神はその礼に命短い蛍たちを妖の姿に変えてやった。蛍たちは喜んでその多くが沼を旅立って行ってしまった。
「今この地の蛍はその時、蛍としてこの沼に残ったものの子孫だと言われている」
「へえ」
「ほう」
「まあただの言い伝えだけどね」
(山神と人間の娘の恋はどうなったのだろうか。人の命は短い。死に別れて心を壊したりしなかったのだろうか。あの妖みたいに──)
かつて人と恋をして死に別れて心を壊した妖を見たことがある。人と妖。人と神。異なる種族同士の恋は上手くいってもいつか終わりが来ると突き付けられた出来事だった。あれから二年たった今でも心からの叫びが焼き付いている。
「──ああやっぱりまだ蛍はいないか……」
沼について夏目が言った。
「貴志。何かいる」
「ああ。美結花。何かいるな」
「何かいるな」
「何かいるわね」
四人は巨大な口の妖が池にいるのを見つけた。
「──おい。人もいるぞ。妖がいることも気づかずにのんきなことだ」
ニャンコ先生が言った。
「本当だな……。ん?」
大きな口の妖が男の人の方に向かった。
「あぶないっ!」
夏目が男の人を押し倒す。
「おわっ!」
男の人はびっくりした。
しかし妖は男の人を素通りしていく。
「あの妖は人を襲わないのよ」
佐貝がこっそりと教えてくれる。
「大丈夫かい?」
男の人が夏目に訊いてくる。
「…すみません。石につまずいて──……」
夏目ははっとした顔をした。
「はは。元気だね」
声を聞いて美結花も分かった。
(この男の人。昨日の人じゃないですか──!!)
キヨと友人だったという男だ。美結花は本当に妖がもう見えないのか知りたくて夏目の背中を突っつく。
「…あの、この沼…。何かいますか?」
突っつかれた夏目が訊く。
「? 蛍のほかに? さあ……鮒くらいかな。蛍もまだ出ないみたいだね。また出直すよ」
そう言ってにっこり笑う。
「──そうですね」
「また出直してきます」
二人はそう言った。
やがて男の人は去って行った。
キヨが茂みから姿を現す。男の人を見つめる彼女の手は震えていた。その手を二人は繋いであげた。その手から思いが伝わってくる。幸せになって欲しいと──。
それは一途で純粋な思い──。
