夏目の従妹が主人公。原作設定。黒髪に翡翠の瞳の美少女です。
第三十九話 視えない人の繋がり
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「…ごめんね。急に引っ張って」
「悲鳴が聞こえて反射的に……」
多軌と美結花が謝る。
五人は庭に出て円を作っていた。
「ああ、タキと美結花がいて助かったよ。ありがとう」
多軌はほっとした顔をした。
「危ないところだった……」
美結花もほっとした。
あの嫌な感じは着物の妖が近づいていたのだろう。間一髪で間に合ってよかった。
「ポ…ニャンコ先生はどうしたんだ? 一応夏目の用心棒じゃなかったのか?」
「そういえば……。佐貝もいなかったね。夏目さんの用心棒なんだろう?」
「じ、自称だからな……」
「いないのはいつものことだし……」
美結花は目をそらした。
『おいこら私にも礼を言え。小僧』
夏目の肩の妖が文句を言う。
「ああ。そうだったな。ありがとう」
「貴志を助けてくれたのね。ありがとう」
二人はお礼を言った。
その二人の笑顔に妖は思うところあるような顔をした。
「夏目君、美結花ちゃん。ひょっとしてまださっきの妖さんがそこに?」
「あ、ああ……」
「う、うん……」
急に訊かれて驚いたものの頷いた。
『おやおやほら見ろ。久しぶりにこの家から妙な妖気を感じると思えば蔵が開いとる』
『何だ。慎一郎が戻ってきてまた変なことでも始めたかと来てみれば』
声がした。
角のある妖と黒い塊の妖だった。
(妖──)
しかも多軌のおじいさんを知っている妖のようだった。
『阿呆。慎一郎はとっくに世を去ったではないか。人は易々と蘇ったりできぬらしいぞ』
『そうだった。つまらんのぅ……。む?』
黒い妖が何かに気づく。
『やや、しかし慎一郎がいるぞ』
多軌を指さす。
『違うぞ。あれは孫娘というやつだ』
夏目の肩に乗っている妖が訂正する。
『慎一郎の葬式の時いつまでもびーびーないていた奴だ』
『おおそうだった。つまらんのう』
黒い妖は慎一郎がいなくてがっかりしているようだった。
「…………」
美結花はそれを黙って聞いていた。
視えなくてもこんなにも妖達に多軌のおじいさんは親しみを持たれていたのだ。
「夏目君、美結花ちゃん。その妖さんってどんな妖なの?」
多軌は興味を持ったのか訊いてくる。
「タキのおじいさんのことを知っている妖でおじいさんのことを結構好きだったみたいだよ」
「そうそう。懐かしそうに話していた」
美結花は頷いた。
「え」
多軌は嬉しそうな顔をした。
『勝手なことを言うな。奴とは目さえ合わせたこともないのだぞ。下等な慎一郎など我々のおもちゃだったのだ』
「いてっいててっ」
「いたっいたたっ」
妖が夏目や美結花を叩いて抗議してくる。
「夏目!?」
「夏目さん!?」
田沼と速水が驚く声がする。
『おやその子供ら我々が視えるのか』
『ほお珍しい慎一郎とは大違い』
先ほどの妖達が夏目と美結花に気づく。
『ならば人の子らよ。目が合った縁に免じて一つ忠告してやろう』
おもむろに角の妖がそんなことを言った。
『用心するがいい。蔵の人形妖はカクラと言ってこの気配、もうほとんどの体を取り戻し家中が奴の気に覆われつつある。奴は胴 左手 右足 左足を取り戻した。残りは右手と頭』
その言葉にぞっとした。
頭を取り戻したら大変なことを理解したのだ。
『全てを取り戻したら素人のお前らがどうこうできる相手ではなくなるぞ』
「どうすればいいんだ?」
「どうすればいいの?」
ほとんど同時に訊いた。
『災いが訪れる前に逃げればいい。お前らがこの家に残る義理などなかろう?』
あっさりと角の妖は答えた。
「それはできない」
きっぱりと美結花は答えた。
「友人の家だ。このまま放っては帰れない。何か知っているなら教えてくれないか?」
夏目と美結花が妖とやり取りするのを田沼たちは黙って見守っていた。
視えないなりに大事なことを話していると悟ったのだ。
『──…友人の家だから何だというのだ。非力な人の子らがとどまったところでどうせ何もできぬぞ』
妖はそう言ったが、夏目と美結花が引かないのが分かって黙り込んだ。
『…………むにゃむにゃむにゃ』
もう片方の黒い妖が何か話そうとしている。
『見えた』
目をぱちりと開く。
『奥階段下の物置の中に右手の気配……』
「本当か? ありがとう!」
「教えてくれてありがとう!」
大きな声に妖達がびくりと体を震わせる。
「透。右手の場所が分かった」
「奥階段下の物置って分かるか? そこに連れて行ってくれ」
夏目と美結花が多軌に話しかける。
「! ええ」
多軌は物置へと案内する。
(右手を処分すれば復活することはないはず─…)
「悲鳴が聞こえて反射的に……」
多軌と美結花が謝る。
五人は庭に出て円を作っていた。
「ああ、タキと美結花がいて助かったよ。ありがとう」
多軌はほっとした顔をした。
「危ないところだった……」
美結花もほっとした。
あの嫌な感じは着物の妖が近づいていたのだろう。間一髪で間に合ってよかった。
「ポ…ニャンコ先生はどうしたんだ? 一応夏目の用心棒じゃなかったのか?」
「そういえば……。佐貝もいなかったね。夏目さんの用心棒なんだろう?」
「じ、自称だからな……」
「いないのはいつものことだし……」
美結花は目をそらした。
『おいこら私にも礼を言え。小僧』
夏目の肩の妖が文句を言う。
「ああ。そうだったな。ありがとう」
「貴志を助けてくれたのね。ありがとう」
二人はお礼を言った。
その二人の笑顔に妖は思うところあるような顔をした。
「夏目君、美結花ちゃん。ひょっとしてまださっきの妖さんがそこに?」
「あ、ああ……」
「う、うん……」
急に訊かれて驚いたものの頷いた。
『おやおやほら見ろ。久しぶりにこの家から妙な妖気を感じると思えば蔵が開いとる』
『何だ。慎一郎が戻ってきてまた変なことでも始めたかと来てみれば』
声がした。
角のある妖と黒い塊の妖だった。
(妖──)
しかも多軌のおじいさんを知っている妖のようだった。
『阿呆。慎一郎はとっくに世を去ったではないか。人は易々と蘇ったりできぬらしいぞ』
『そうだった。つまらんのぅ……。む?』
黒い妖が何かに気づく。
『やや、しかし慎一郎がいるぞ』
多軌を指さす。
『違うぞ。あれは孫娘というやつだ』
夏目の肩に乗っている妖が訂正する。
『慎一郎の葬式の時いつまでもびーびーないていた奴だ』
『おおそうだった。つまらんのう』
黒い妖は慎一郎がいなくてがっかりしているようだった。
「…………」
美結花はそれを黙って聞いていた。
視えなくてもこんなにも妖達に多軌のおじいさんは親しみを持たれていたのだ。
「夏目君、美結花ちゃん。その妖さんってどんな妖なの?」
多軌は興味を持ったのか訊いてくる。
「タキのおじいさんのことを知っている妖でおじいさんのことを結構好きだったみたいだよ」
「そうそう。懐かしそうに話していた」
美結花は頷いた。
「え」
多軌は嬉しそうな顔をした。
『勝手なことを言うな。奴とは目さえ合わせたこともないのだぞ。下等な慎一郎など我々のおもちゃだったのだ』
「いてっいててっ」
「いたっいたたっ」
妖が夏目や美結花を叩いて抗議してくる。
「夏目!?」
「夏目さん!?」
田沼と速水が驚く声がする。
『おやその子供ら我々が視えるのか』
『ほお珍しい慎一郎とは大違い』
先ほどの妖達が夏目と美結花に気づく。
『ならば人の子らよ。目が合った縁に免じて一つ忠告してやろう』
おもむろに角の妖がそんなことを言った。
『用心するがいい。蔵の人形妖はカクラと言ってこの気配、もうほとんどの体を取り戻し家中が奴の気に覆われつつある。奴は胴 左手 右足 左足を取り戻した。残りは右手と頭』
その言葉にぞっとした。
頭を取り戻したら大変なことを理解したのだ。
『全てを取り戻したら素人のお前らがどうこうできる相手ではなくなるぞ』
「どうすればいいんだ?」
「どうすればいいの?」
ほとんど同時に訊いた。
『災いが訪れる前に逃げればいい。お前らがこの家に残る義理などなかろう?』
あっさりと角の妖は答えた。
「それはできない」
きっぱりと美結花は答えた。
「友人の家だ。このまま放っては帰れない。何か知っているなら教えてくれないか?」
夏目と美結花が妖とやり取りするのを田沼たちは黙って見守っていた。
視えないなりに大事なことを話していると悟ったのだ。
『──…友人の家だから何だというのだ。非力な人の子らがとどまったところでどうせ何もできぬぞ』
妖はそう言ったが、夏目と美結花が引かないのが分かって黙り込んだ。
『…………むにゃむにゃむにゃ』
もう片方の黒い妖が何か話そうとしている。
『見えた』
目をぱちりと開く。
『奥階段下の物置の中に右手の気配……』
「本当か? ありがとう!」
「教えてくれてありがとう!」
大きな声に妖達がびくりと体を震わせる。
「透。右手の場所が分かった」
「奥階段下の物置って分かるか? そこに連れて行ってくれ」
夏目と美結花が多軌に話しかける。
「! ええ」
多軌は物置へと案内する。
(右手を処分すれば復活することはないはず─…)
